【レポート】「劇場」をとことん考える!世界劇場会議国際フォーラム 2024 in長久手 レポート(前編)
2日目は、会場が変わり風のホールで行われました。
人・まち・劇場の深い関係
2日目の第一部 午前中のテーマは「長続きするハードとソフト ー事例を通して考える」です。
長久手市文化の家の籾山勝人氏と山本宗由氏の進行により、三つの施設についての実例を紹介いただきました。
一つ目の施設は「
北上市文化交流センター さくらホール」。一般財団法人北上市文化創造の理事長でありシアターワークショップの代表取締役としても知られる、伊東正示氏の発表です。

オープン当初から「いかに市民の力で盛り上げていくか」を考え、さまざまな取り組みを行っています。市民による第九の歌唱、子どもの舞台体験、また企業とコラボレーションなど、敷居が高いと敬遠されがちなホールという場所への敷居を低くすることで、0歳から100歳までが集える劇場を目指しているそうです。最も印象的だったのは、オリジナルで作ったという盆踊り。子どもから高齢者までが一同に集まり踊る姿は、見ていてとてもワクワクしました。劇場のコンサルから運営まで幅広く手がけるシアターワークショップの代表取締役でもある伊東氏ならではの、工夫や取り組みを垣間見ることができました。

二つ目の施設は、人口37万の中核市に立つ「
穂の国とよはし芸術劇場PLAT」。副館長であり芸術文化プロデューサーの矢作勝義氏によるお話です。
高校生と創る演劇、市民と創る演劇を毎年開催している穂の国とよはし芸術劇場PLAT。そのような経験をすることにより、他者の話を聞く力・自分で問いをうむ力・自分の言葉で考え抜く力・他者と協力して行動する力などの「人づくり」にもつなげているとのこと。実際に参加した高校生の「演劇を通じて、人を信じて良いんだと思えるようになった」という言葉が心に残りました。舞台人や役者になることだけが目的ではなく、演劇を通してさまざまなことを学ぶ。ホールや舞台には、そのような効果があるのだということを感じることができました。
三つ目の施設は、2023年9月にグランドオープンを迎えた新しい劇場「
岡山芸術創造劇場ハレノワ」です。初代劇場長を務めた草加叔也氏は、空間創造研究所の取締役としても知られ、さまざまな劇場づくりに関わってきました。

岡山芸術創造劇場ハレノワは、大中小の三つのホールのほか、ダンスやピアノの発表会ができるアートサロンや練習室が数多く設けられています。市民活動で利用しやすい練習室の数は、なんと11室も用意されているそう。プロ公演の鑑賞から自分たちのさまざまな活動まで、幅広い用途で足を運ぶ劇場。コンセプトである「魅せる」「集う」「つくる」の連環で、舞台作品創造がまちづくりにつながることがよく分かりました。
「他の劇場の良いところを参考にしている」という、多くの劇場づくりに携わってきた草加氏ならではの考え方が、とても良いと感じました。
施設の規模や地域の特性などに合わせて多彩な取り組みをしているそれぞれの劇場。場所も規模も目的も異なる劇場は、どれ一つとして同じではない唯一無二の空間なんだと、改めて感じました。
劇場の未来について考える
午後からは、日本大学名誉教授の本杉省三氏を交えたディスカッション。テーマは「これからの劇場はどうなるか?」です。

ディスカッションに先立ち、本杉氏による今まで視察研究してきた数々の劇場についての発表が行われました。本杉氏の学生時代にまで遡った、国内外の多彩な劇場についてのお話は、聞き応えたっぷり。劇場のハードはソフトに深く関係してくること、時代の流れとともに劇場の在り方が変わってきていることを、実例のお話をとおして実感することができました。
その後は、本杉氏の話をベースに白熱した議論が交わされました。
「運営で最も大切なのは、事業だ」
「劇場があるのではなく、劇場になっていくんだ」
「つくる人と使う人が一緒になってつくりあげていくもの」
「機能だけでもデザインだけでもいけない」
「人がいて、優れたハードがあって、そこでつくだされるソフトがある」
「コミュニティと芸術文化は両立するのだろうか」
「アクションプランは、5年毎の見直しが大切」
「あらゆるところが劇場になる、あらゆるところを劇場にする」
「劇場は変化、成長していくもの。50年経って初めて評価されるもの」
いつまで経っても、議論が尽きることはありません。
統計によると、日本での舞台芸術鑑賞者は人口の約5%だそうです。劇場という場所自体の敷居が高い、と感じている人もまだまだいるのかもしれません。一方で、コンサートやライブの人気が高まってきているいま、「生で観る」ことの価値を感じている人も増えてきているのではないでしょうか。
劇場という空間、そして芸術鑑賞という行為が人々の日常にもっと溶け込み、私たちの住むまちと私たちの日々と人生に、いま以上の彩りを与えてくれるだろうと感じられた2日間でした。
取材日:2024年2月29日
取材:広報企画部 M.A
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