5小学校・2中学校を再編し、小中一貫校として新たなスタートに立った義務教育学校「想青学園」

2024.05.16
インタビュー
【インタビュー】子ども自身が考え、かかわり、地域に根差していく新しい学修のはじまり(想青学園 教頭先生のインタビュー)

福山市役所やJR福山駅がある市中心部から南方に約14km、瀬戸内海の穏やかな風景を抱く土地に、2022年4月、福山市立「想青学園」が開校しました。二つの島を含む海沿いの5小学校・2中学校、全7学校を再編し、コミュニティ・スクール(※1)を導入した小中一貫9年生の義務教育学校(※2)です。
地域の思いがたくさん詰め込まれた「想青学園」の新校舎にはコトブキシーティングの電動収納式ステージが導入されました。
今回は、福山市教育委員会事務局 管理部長の藤井紀子氏、管理部施設課 課長 藤野原啓宏氏、管理部 学校再編推進室 調整員の竹井聖貴氏に、学校再編の背景や、ステージ導入の経緯についてお話を伺いました。
※1 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)とは、文部科学省が2017年4月に施行した、学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる「地域とともにある学校」への転換を図るための有効な仕組み。
※2 義務教育学校とは、学校教育制度の多様化と弾力化を推進するため、小学校から中学校までの義務教育を一貫して行うことを趣旨とし、2016年から制度化された新たな学校。



福山市教育委員会事務局
管理部長 藤井 紀子 氏(写真中央)
管理部施設課 課長 藤野原 啓宏 氏(写真左)
管理部 学校再編推進室 調整員 竹井 聖貴 氏(写真右)

人をつないでいく場所が「想青学園」


――「想青学園」新設の背景についてお聞かせください。

藤野原
福山市では近年少子化が進み、1クラスは何人、1学年は何クラスがよいかといった適正規模の教育環境について課題がありました。各地域に深く根ざした7校を、一つの小中一貫校に再編するにあたって、地元からの声は必ずしも賛成ばかりではありませんでした。福山市にはもう一つ義務教育学校があり、想青学園は2校目となりますが、全国でも、これだけ広いエリアと七つもの学校を再編するのはあまり例がない事です。再編する学校のうち、2校は瀬戸内海の離島にあります。それぞれに歴史のある小・中学校を一つの学校にすることは、地域への説明と理解を得ることがとても重要となりました。

――開校にあたってどのような学校づくりを進めてこられたのでしょうか。

藤井
自分たちの地域に学校が無くなって寂しくなる方々にも、新しい学校を自分たちの新たなる学校と思っていただき、できて良かったと思ってもらえる素晴らしい施設を作ることが大きな目標でした。そこで新しい学校には「コミュニティ・スクール」を導入することを決め、開校前から地域と学校がつながる仕組みを作ってきました。「かかわる、つながる」というスローガンを掲げ、地域みんなが手をつないで、子どもたちのために活動し、成長を支える学校作りを目指し、幾度となく会合を重ねてきたのです。
新しい学校で子どもたちにどのような学びをさせていきたいかに主題を置き、自分たちの地域を見つめ直し、話し合い、教育内容に落とし込んでいく…この熟議が今日に実り、児童・生徒は「SOSEI学」(ふるさと学習)という想青学園独自の教科を通じて地域と関わりを持ち、学びを深めています。たいへん嬉しいことですね。

――学校名の由来や、校章のデザインについてお聞かせください。

藤井
学園の名前は、今回再編した5小学校・2中学校の子どもたちや地域住民の公募から決まりました。想青学園の「青」には、学校がある地域の海、川、山、そして若さという意味が込められています。若々しく、さわやかな名前ですよね。校章はこの地域の地図をイメージさせるデザインになっていて、七つの学校が輪の中でつながっています。これは再編校の生徒によるデザインなんです。

地域に解放し、地域に根ざしていく学校施設

――新校舎はたいへん開放的なつくりですね。

藤井
はい、教育の内容はもちろんですが、目に見える施設の魅力というのも重要だと思いますので、新校舎にはたくさんの思いを詰め込みました。地域の子どもたちが交流する「ふれあいルーム」や、子どもたちの興味を喚起する複数のメディアスペースをつくりました。子どもたちが意欲的に学んでいる姿に、地域の皆さまからも良い反響をいただいています。
藤野原
コミュニティ・スクール導入を念頭に置き、異学年交流や地域交流がしやすい場所になるよう計画を進めてきました。
回廊式の廊下の外郭にクラスルームを置き、中央には階段と多目的ルームを配置しました。学習内容や成長が異なる9学年の児童・生徒が使用するので、音楽室、理科室、図工室、外国語教室など、専科の教室は複数あります。例えば、理科室は、座学と実験で別けて3室あり、音楽室も授業用と合唱・合奏用が2室あるといった造りです。
図書室も9学年で使用しますが、カーペットが敷かれた読書スペースを配置したところ、後期生が前期生に読み聞かせをするなど自然と異学年交流が図れる空間になりました。
また、地域の方が積極的に学校に入ってこられる教室が複数あり、専門家の方などに授業に関わっていただいています。特にIT学習にも力を入れ、子どもたちが高機能パソコンや3Dプリンターなどを使い、技術的な内容を学んでいます。


校内の様子

――体育館が校舎の2階に位置するのは珍しいですね。

竹井
はい、体育館が2階にあるのは、近くに川が流れているという立地条件にあります。体育館は地域の避難場所にもなっているのでこの配置にしました。非常時の避難通路として外階段が設けられ、屋外には非常用のガスタンクが設けてあります。先日の防災訓練では実際の災害に備えて、非常用ガスを使い豚汁を作る炊き出し訓練も行いました。

――新体育館に収納式ステージを導入した経緯をお聞かせください。

藤野原
義務教育学校では、小学校・中学校のクラス数に応じた面積を算出して体育館の規模を決めます。
想青学園は元々、千年(ちとせ)中学校があった土地に建設しました。校舎外の既存体育館を後期生が、校舎内の新体育館は前期生が使用しています。
当初、既存体育館には備え付けのステージや幕があるので、式典や集会などはここで行い、前期生が使用する新体育館にステージは不要という考えもありました。
しかし、校舎の中に設ける新体育館は全校生がアクセスし易く、多様な使い方が想定されるため、普段は体育館を広く使用でき、必要な時だけ出せる収納式ステージを導入しました。計画当初から小さな規模の音楽会や発表会を想定していましたので、収納式のステージがあることを聞いた時はぴったりだと思いました。


――ステージの使用例などをお聞かせください。

藤野原
いちばんに思い浮かぶのは想青学園の記念すべき「落成式」です。
当初、式典などは既存体育館を使用する予定でしたが、子どもたちが完成したばかりの新しい校舎で楽しく過ごしている様子を見て、初めての卒業式は校内にある新体育館で行ってほしいと思いました。ステージ上に演台を置いて祝花を設えると、サイド幕が無くても立派なステージになりました。シンプルでとても良かったですね。
新体育館に収納式ステージを入れたことは大成功でした。今後の使用では、集会、発表会、音楽会など使用機会が増えてくると思います。


卒業式の設え

地域の思いを子どもたちの成長につなげる

――今後の福山市の学校づくりの未来をどのように考えられていますか。

藤井
社会も教育環境もどんどん変わっていくなか、学校は、その変化をとらえながら施設の機能も向上させていかなければなりません。
これからも、子どもたちが仲良く伸び伸びと元気に学び合う学校づくり、先生や地域の温かい愛情の中で育っていく環境づくりを進めていきたいと思っています。

――保護者の方々や、地域住民、教育委員会が一丸となってつくり上げた学校には、本当にたくさんの思いが詰め込まれているのですね。コミュニティ・スクールを導入した義務教育学校の今後の発展や、地域に根ざす子どもたちの成長が楽しみです。本日はありがとうございました。

「想青学園」のインタビューを終えて

想青学園への訪問に続き、福山市役所内にある教育委員会を訪ねました。「想青学園」はたいへん素晴らしい学校でしたと私の感想を述べると、教育委員会のみなさまが清々しい表情をされたのが印象的でした。学校再編の背景には、はかりしれない試行錯誤や問題解決があったことを伺い、驚きとともに、先ほど見た子どもたちの朗らかな姿を思い出していました。自分たちの育った土地に誇りを持つ彼らの成長が楽しみです。

取材日:2023年12月

【インタビュー】子ども自身が考え、かかわり、地域に根差していく新しい学修のはじまり(想青学園 教頭先生のインタビュー)

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