古今東西の音楽や舞台公演に対応する、国内最大級の舞台間口の大劇場
2019年9月、高崎駅の東口に、高崎芸術劇場が開館しました。
2027席の大劇場は、幅広い演出に対応できる舞台機構を備えた、高機能な多目的ホールです。音響反射板使用時には、コンサート専用ホールと同様の音楽空間を作り出し、クラシック音楽の生音を客席の隅々まで響かせます。国内最大級の舞台間口の広さを持ち、様々な大型の演奏会や舞台公演が可能です。
一体感を創り上げた2層の赤い客席
客席は、弧を描くようにイスを配置した、緩やかに広がる扇形です。2000席を超える席数を2層の客席に収めた背景には、「高齢化社会における劇場」の追求がありました。2階席までに留めることによって、階段の上り下りを少なくし、誰もが安心して来場できる客席を目指したのです。1階席と2階席というシンプルな構成が、大空間の客席と舞台との一体感を醸成します。
客席構成に並んで劇場空間の一体感に大きく貢献するのは、座席の赤い張地です。劇場における赤は、非日常さを掻き立て、高揚感を高めます。この意図をくみ取り、デザインを具現化したのは、
株式会社FABRIKOのテキスタイルデザイナー。赤系をベースに、数色の緯糸(ヨコイト)を織り込みました。遠景は無地のように見えますが、近づくとモール糸やアクセントの色糸が浮き上がり、色の深みや、シンプルな縞模様が豊かな表情に見えるデザインで、文化芸術の多様性を表しています。内装や赤味のあるイス木部とも調和し、ホール全体を重厚に美しくまとめます。
曲線で仕上げたこだわりのイス
イスのデザインには、楽器を思わせるような曲線を多く用いました。ホールの壁のデザインにも同調した、一体感のあるデザインです。背のクッションを縁取った背板は、隣の席に手を伸ばすかのように緩やかにカーブしており、席と席の繋がりを感じさせます。
肘掛は、中央部分を高くした山型のデザインです。腕を置く位置が肘掛の左右に自然と分かれ、隣の観客と重なり合うことがないよう、何度も試作を重ねて創り上げました。腕の置きやすさにもこだわり、指先側はすっきりと、肘側はしっかりと角度をつけています。肘掛の下に設けられたアキは、座の上げ下げに応じて見え隠れする遊び心を感じさせるデザイン。昨今のホールではスリムな形状の座も人気ですが、文化芸術と対する時の重厚感をイメージして、座の端から端まで厚みのあるクッションのたっぷりとした形を採用しました。座裏の木部に掘り込んだラインは張地の縞とリンクし、曲線の多い客席の中で、意匠のアクセントとして際立ちます。
ヒトの座り姿勢の背骨のカーブに沿う三次元形状の背のクッションと、体圧を分散させる波形スプリングを搭載した座により、座り心地も快適です。
施設概要
高崎芸術劇場は、1961年に建設された群馬音楽センターの歴史と精神を継承・進化させ、新しい高崎の都市文化を創造・発信する劇場として、2019年9月に開館しました。JR高崎駅東口に位置し、抜群のアクセスを誇ります。大劇場・スタジオシアター・音楽ホールのほか、9つのスタジオ群が設けられ、「音楽のある街」高崎における多様なジャンルの音楽や舞台芸術を「鑑賞・創造・発信」する場として、大きな期待が寄せられています。