宛平劇院
小劇場

2022.02.08
劇場・コンサートホール

施設説明

モダンな外観と機能性を重視した作り

宛平劇院は中国上海市の中心部に1988年に建てられ、当時映画館として街を賑わせる存在でした。そんな劇院は施設の老朽化に伴い、リニューアルに5年の月日をかけ、2021年6月に再度オープンを果たしました。
ゆっくりと広がる扇子を模した外観がモダンな外観は、都会の喧騒に包まれながらも静かな時間の流れを感じさせます。内部に足を踏み入れると、開放感のあるしなやかな曲面を描く大きくエレガント螺旋階段が来場者を出迎えます。

延床面積は、地上15,853平方メートルと地下13,428平方メートルを合わせた合計29,281平方メートル。1988年に建てられた当時の土地の面積を変えずに、延床面積を3倍ほどに広げました。地上部には、大規模な戯曲やオペラなどを上演できる996席の大劇場、そして地下には262席の小劇場を有しています。また、リハーサルホール、多目的ホール、芸術展示会場、警備室、駐車場、備品室などの機能も備えています。

美しさと座り心地のみならず、静けさにまで配慮した舞台のための座席

262席を有する小劇場は、舞台に向かって真っすぐに並んだ直線的な客席配置。前後の席で半席ずらすことで、見やすさを確保する千鳥配置となっています。前の席で視線が遮られることがなく、迫力ある舞台を楽しめる配置として、1段あたりの段差が高くなっていることも特徴です。
客席の最前列は、演目に合わせてイスを出し入れできるキャスター付きの移動席となっていて、限られた空間で臨場感を楽しむことができる一方、演目によっては舞台を幅広く使うこともできる工夫がなされています。採用されたイスは、最前列以降は全てハイバックタイプでスペーシアの座。ゆったりとした座り心地と、両手がふさがっていてもすっと立ち上がれるバリアフリー仕様は、どんな観客にも演目を楽しんでもらえる配慮が感じられます。また観客が立ち上がる際に、座面がゆっくり戻る座自動緩起立機構を採用しているため、離席時も振動や音が気になりません。
舞台から見ると、イスの背もたれの先が窄まっているデザインは、まるで観客がそこにいるかのように、一つ一つの存在感を際立たせています。クラシックな作りの大劇場に対し、小劇場の幾何学模様をした壁面が、イスの鮮明な黄色い張地とコントラストをなし、近未来的な雰囲気を感じさせます。

写真提供者:上海同済大学建築設計研究院
写真撮影者:馬元

施設概要

中国経済の心臓部、上海市の中心に交差する中山南二路と宛平南路でひときわ目を引く宛平劇院。中国の伝統芸能、戯曲のシンボルである扇形を取り入れたデザインが、伝統の中にも目新しさを感じさせます。元々1988年に竣工した宛平劇院は、今回のリニューアル改修のため、5年近くの休業期間を経て、2021年6月に上海の新たな伝統芸能のシンボルとして再開を果たしました。

居室データ

施主
上海市宛平劇院
設計
同済大学建築設計研究院(集団)有限公司
オープン
2021年6月
席数
262