宛平劇院
大劇場

2022.02.03
劇場・コンサートホール

施設説明

世界中から最高水準の設備を集めた宛平劇院の大劇場

約2400万人の人口を有し、東洋のパリとも呼ばれた中国上海。現在もそのエネルギーは衰えることなく、アジア経済の中心地としての存在感を放っています。そんな伝統とテクノロジーが交差する街で、この度2021年6月に、中国の伝統的な舞台芸術である戯曲のための劇場、宛平劇院が、世界の最新のテクノロジーを携え、扇をモチーフに、真新しい姿でお目見えしました。
見どころである伝統芸能、戯曲のために作られた大劇場には、世界中の最新設備が採用されています。開口間口16メートル、地上10メートル、そして地下20メートルの舞台空間には、電子制御で作動する舞台装置が65セット配置され、25個に及ぶ正方形の昇降装置は整然と並べられた碁盤のよう。またネットワークを介して作動する照明と音声機器が配備された舞台は、古典的な演目と新しい技術を組み合わせた見せ方や、クリエイティビティが高い脚本にも対応できるよう、多様な設備が特徴的です。

どの席に座っても最高の舞台を体験できる工夫が随所に

劇場のシンボルである扇形は、建物の外観のみならず、至る所に取り入れられています。大劇場の舞台に向かって緩やかな扇形の円弧を描く客席は、どの席からも真っすぐ鑑賞することができる配置となっています。また前の座席が気にならないように、1階席と2階席ともに、後方にいくにしたがって段差が大きくなるすり鉢状の客席が特徴的です。異なる高さの段差を取り入れた設計は、列ごとに舞台までの視線が細かく考慮され、またイスの背もたれは通り抜けや足元に配慮した、高さ1000mmのハイバックタイプを採用しました。

美しさと座り心地のみならず、静けさにまで配慮した舞台のための座席

世界の様々な最新技術を集めた劇場が、座席として選んだのは、コトブキシーティングのイス。一人分間口寸法は560㎜のゆったりとした設計で、3次元局面の背もたれは、端までクッションを伸ばしたデザイン。座る人の上体をしっかりサポートしながら、ゆったりと腰かけられる作りとなっています。
深く腰掛けられる座は、肘当てや前の座席の背もたれに手を添えて体を起こさなければならないことが多い中、スペーシアの特徴は、手を使わずに立ち上がれるバリアフリー仕様。横から見るとイスの座の膝裏に当たる部分が薄い作りで、両手がふさがっていても、楽に立ち上がることができます。また座部がゆっくり戻る座自動緩起立機構が搭載されているため、立ち上がる際に、イスが跳ね返って音が響く心配がありません。
またデザイン面では、脚部と肘当てが一体となった側面に「扇形」をくり抜いたワンポイントを取り入れ、重厚感の中に軽やかさをプラス。列番プレートも扇の形に統一されている点に粋な計らいが感じられます。

写真提供者:上海同済大学建築設計研究院
写真撮影者:馬元

施設概要

中国経済の心臓部、上海市の中心に交差する中山南二路と宛平南路でひときわ目を引く宛平劇院。中国の伝統芸能、戯曲のシンボルである扇形を取り入れたデザインが、伝統の中にも目新しさを感じさせます。元々1988年に竣工した宛平劇院は、今回のリニューアル改修のため、5年近くの休業期間を経て、2021年6月に上海の新たな伝統芸能のシンボルとして再開を果たしました。

居室データ

施主
上海市宛平劇院
設計
同済大学建築設計研究院(集団)有限公司
オープン
2021年6月
席数
996