固定式の講義用の机イスは、教室で使われる学校家具の定番。どれも同じに見えがちな机とイスも、それぞれ異なる機能性があります。授業内容・席数・空間に応じた適切な製品を導入すれば、学びの場は進化します。大学の教務部や施設管理部からの製品選定時のQ&Aと共に講義用机イスの特長について特集します。
1. 比べて分かる固定式の机イスの機能性 イスの動き方は3パターン
後ろ通り抜け式:スムーズな授業運びのキーポイント! 着席までの移動を早め、独立脚で集中力もアップ
イスと机が完全に分離したこのタイプは、机とイスの背もたれが一体となった他の製品とは異なり、着席するためにイスの後ろを通り抜けます。この構造によって、着席までの動作をスムーズに行うことができます。
例えば、着席者がいる端の席を通り抜けて中央の席に座りたい場合、着席者がイスに座ったまま、イスごと体を前方机側に寄せるだけで、イスの後ろに通行スペースをつくることができます。遅れて席に着く学生のために、着席している学生が立ち上がる必要がなく、両者の無駄な動きとストレスを軽減します。
また、1席ずつ独立した脚によってイスが支えられているため、筆記時の振動伝達が最小限に抑えられ、後ろや隣の席からの影響を受けにくい仕様です。
座スイングアップ式:起立・着席を素早く行う! 警察学校にも人気があるスピーディーな機能性
イスの座が緩やかに人の動きに追従する、「スイングアップ機構」を搭載した製品です。離席・着席の動作に合わせて、人の臀部〜腿裏に追従するように座が動くため、イスの座を手で動かすことなく座れます。軽い力でスムーズな離着席が実現でき、荷物を抱えたままでも楽に座ることができます。
スイングアップ式のため、座る時のみならず起立時も素早い動作が可能です。警察学校など、迅速かつ正確な起立・着席の動作が求められる教育施設でも人気があります。背・座ともに広くゆったりとしたサイズ感も特長です。ガッシリとした体格の良い学生が多い体育大学でも活躍します。腰掛ける位置によって微妙に座を傾けることができ、他の製品に比べて姿勢の自由度が高くなります。
座跳ね上げ式:誰もが知る学校家具のスタンダード! ユニバーサルデザインの真骨頂
大学の教室の机とイスと言えば、まず頭に浮かぶのはこのデザインかもしれません。後ろ通り抜け式や座スイングアップ式とは違い、一目見て誰もが使い方をイメージできる、スタンダードなデザインです。
このデザインの歴史は、1955年に遡ります。同年に竣工した法政大学の55年館の大教室の講義用机イスとして、当時としては大量だった3,000席の製作を行ったことが始まりです。学生用の机とイスと言えば鋳物製がその時代の主流でしたが、日本で初めての大量生産に応えるため、鋼板プレスを採用。脚部のデザインは法政大学の建築設計を担当した大江宏氏に依頼して、完成しました。
デザインは「教育」の意である「Education」の「E」がモチーフです。側面から見ると、机の幕板と棚、床に平行に伸びた脚部が「E」を模していました。この製品のコンセプトは、改良を重ねながら現在まで脈々と受け継がれています。
2. 木製と樹脂製、どちらを選べばいいの?
※写真の棚はオプション品です
コトブキシーティングの講義用の机イスは、座と背もたれが木製(成形合板)のタイプと、樹脂製(合成樹脂成形品)のタイプをご用意しています。それぞれの特徴を踏まえながら、居室の内装デザインや創りたい空間イメージに合わせてお選びいただくのがオススメです。
温もりあるナチュラルな質感が印象的な、木製の講義用机イスの特徴
- 優しく温かみのある装い
- 自然素材によるナチュラルな質感
- 触感は合成樹脂に比べてやや固め
近代風でコストパフォーマンスも高い、樹脂製の講義用机イスの特徴
- 近代的なイメージ、モノトーンで仕上げることも可能
- 木に比べて成形時の自由度が高いため、触感が柔らかい
- 木製よりもやや安価
木製×樹脂製 それぞれのいいとこ取りができる、オススメの机イスはコレ!
コトブキシーティング株式会社 営業企画部 30代女性
私のオススメは、SD-777シリーズです。背もたれと座が分かれたツーピース構造のため、背もたれは木製、座は樹脂製と素材が分かれているんです。
後ろ通り抜け式の講義用机イスは、座スイングアップ式や座跳ね上げ式と違い、誰も着席していない時は、正面の教壇側から座が見えません。木製の背もたれだけ見えるので、木のイスが並ぶ優しいイメージを空間に印象づけます。一方で、座は樹脂製なので、座った時の当たりが柔らかです。
また、ツーピース構造は、従来のワンピース構造より背の高さが10mmアップして、座もホールド感が高まりました! 素材だけでなく設計面からもオススメしたい製品です。
SD-777-01(背:成形合板 座:合成樹脂成形品)
左図:ワンピース構造 右図:ツーピース構造
3. 背もたれや座面にパッドは必須? 座り心地以外に何が違う?
それぞれの製品は、パッドなし・座パッド付・背座パッド付の3タイプから選ぶことができます。
イスの背もたれや座にパッドが付いていない席と付いた席、座り心地の快適度に言及するのであれば、やはり後者の席の方がクッション性があり快適だと言えます。
また、パッドに用いる高耐久性立体メッシュは、三次元ニット製法により、中間に空気層ができるため、通気性にも優れており、長時間座っても蒸れることがなく快適です。
パッドが付いたイス、付いていないイス。それぞれのメリットを営業スタッフに直撃!
コトブキシーティング株式会社 教育施設営業部 20代男性
自分が学生だった頃、パッド付きの席で授業の時は「ラッキー!」って気分になりました。クッション性もあり、視覚的にも座り心地が良さそうに見えます。メッシュ素材のパッドは通気性も良いし、色の組み合わせでデザインのバリエーションを広げたり変化をつけたりしたい時にオススメです。
パッドなしの席は、清掃しやすい点が大きな魅力です。飲み物をこぼすなど汚してしまった時でもサッと拭き取ることができ、変色や臭いが残る心配も少ないです。汚れた席は学生も避けがちになりますが、清潔さを保てばいつでも気持ちよく座ることができます。パッドがない分、木製の場合はナチュラルな装いに、樹脂製の場合はモノトーン調などスタイリッシュな仕上げにできます。
4. カラーサンプルの組み合わせはどのように決める? 人気や流行はある?
コトブキシーティングの営業スタッフに、全国の国公立大学から私立大学まで、各教室・講義室の近年のトレンドをヒアリングしました。人気の高い色の組み合わせをご紹介します。
ホワイト×ブラックのシンプルな組み合わせ! モノトーン調はスタイリッシュで近代的な雰囲気に
真っ白な壁やガラス張りの大きな窓が特徴的な近代的な教室には、シンプルな机とイスが人気。明るい白い天板の机に寄り添うだダークトーンのイスが、スタイリッシュで洗練された空間に仕上げます。※写真のイスは、木の素材部をポリウレタン塗装したカスタマイズ製品です。
ブルーのパッドとクールグレーの天板で清潔感ある講義室を演出! 学生らしい、はつらつとした空間
イスの背もたれの合成樹脂にホワイトグレーを、机の天板にクールグレーを採用。パッドの明るいブルーが際立ち、空間全体のアクセントになります。学びの場にふさわしい、さわやかな雰囲気です。白が居室の面積の大部分を占めるため、席数の多い大教室でも圧迫感がありません。
ビビットなワインレッドを使ってポップでお洒落な教室の完成! 女子大にもぴったり
木とも樹脂とも相性が良い赤系は、教室を明るく華やかな印象に仕上げます。ワインレッドとブラックを組み合わせれば、落ち着いた、深みのある教室空間に。ワインレッドまたはレッドとホワイトの組み合わせは、女子大でも人気の高い2色です。座スイングアップ式は、空席時にパッドが付いた座面側が表を向くため、誰もいない教室でも色が鮮やかに際立ちます。
5.机やイスのグレードをアップ!
Classroom(教室・講義室)からLecture Theatre(レクチャ―シアター)へ
国際交流や文化交流の拠点として、大学の特色を打ち出す特注デザインにも対応
大学は学生の学び舎であると同時に、学園祭、セミナー、シンポジウム、国際会議など、地域や世界に開かれた場でもあります。音響、照明、スクリーン、テレビモニターなどの最新設備が備わった教室には、それに相応しいグレードの机やイスが求められるケースも多く発生しています。
「セミナーなど、学外の来客にも適したグレードの高い机とイスが欲しい」
「この大学だけの特別なデザインの机やイスを作りたい」
「スクールカラーをベースに、色彩的なデザインを施したい」
コトブキシーティングでは、このような大学の要望に応じて、デザインやカラーの特注にも対応しています。講堂のイスに限りなく近い「レクチャーシーティング」を導入すれば、空間のグレードアップも図れます。
レクチャーシーティング STS-920シリーズ・STS-950シリーズ
後ろの席からでも講師が近い! 臨場感を味わえる、魅せられる講義空間「レクチャーシアター」

これからの教室・講義室に求められること、それは、快適に過ごすための机・イスの整備だけに留まらない、講師と受講者の双方向型の環境づくりです。
いま、海外の大学教室がテレビ番組で大きく取り上げられたことがきっかけとなり、日本でもトレンドになりつつある講義室の形態は、講師が立つ演台を急勾配に配置された座席が取り囲んだ濃密な空間です。講師との距離も受講者同士の距離も近く感じることができます。
このような演出が取り入れられた空間は、「レクチャーシアター」と呼ばれ、これまでの教室や講義室にはない、新たなコミュニケーションを促進します。「学ぶこと」を主目的に据えた教室や講義室とは違い、「学ぶこと」、そして劇場・ホールで芸術作品を楽しむ時のような気持ちの高まりを目指して、空間全体を劇場・ホールのように「魅せること」を追求。机やイスにも、「魅せること」をコンセプトにした設計が求められます。
講師と受講者の双方が生きた学びを共有できる、レクチャーシアターのためのレクチャーシーティング。インテリアにマッチするデザインから、さまざまな配置条件に対応する仕様まで、ショールームでご見学いただけます。「レクチャーシアター」づくりは、コトブキシーティングにご相談ください。
新築からリニューアルまで 教室・講義室の固定式の机とイス
教室・講義室の机やイスの選定課題は、新たな校舎が竣工する時だけではなく、校舎のリニューアル時や、教室内で製品だけ入れ替える時など、様々なタイミングで発生します。机とイスが、教室のイメージを大きく左右すると言っても過言ではありません。また、配置位置、列と列の距離など、快適な空間づくりのために確認すべきポイントが多岐に渡ります。
迷った時は、まず実物を見て、触って、座って、体験してみてはいかがでしょうか?
コトブキシーティングのショールーム で、お待ちしています!