学生ファーストの視点で作り上げた
多様な学びと安らぎを提供する校舎[前編]

2023.10.17
インタビュー
2011年に福岡市に開学した純真学園大学は、看護学科、放射線技術科学科、検査科学科、医療工学科の4学科からなる看護・医療系大学です。2019年に新設した「Medical Learning Center(メディカルラーニングセンター)」には、実践的な講義を受けられる多様な実習室やシミュレーションルームを設け、充実した学習・実習環境を整えています。
「森の表情」をコンセプトにしたメディカルラーニングセンターの外観は、林立する大樹をイメージした縦のラインを強調したデザインで、1階の広々とした空間には、木漏れ日が降り注ぐ森を感じさせるカフェ・レストランやレストスペースを設けました。木製家具とグリーンで演出されたオープンスペースには異なる雰囲気の様々な席が配置され、食事、勉強、談話、くつろぎの場所として常に学生で賑わっています。
今回はプロジェクトに関わった方々に、チームで作り上げたメディカルラーニングセンターの様々なエピソードについて語っていただきました。


学校法人純真学園 理事長
純真学園大学 学長
福田 庸之助 氏


清水建設株式会社
九州支店 設計部 設計長
登坂 壮人 氏


コトブキシーティング株式会社
九州支店
多喜田 清佳

最新の実践的な学びを可能にするメディカルラーニングセンター

――メディカルラーニングセンターはどのような目的で建設されたのでしょうか。

福田
純真学園大学は、看護・医療系の大学としては福岡県では後発です。学校は施設産業と言われるように施設がとても重要であり、他と差別化するためにも時代に合わせた最新の施設をつくりたいと思いました。
看護学科の校舎となるメディカルラーニングセンターは、室内に柱のない大型の看護学実習室を目玉に考えていました。学生と教員の間に柱があるとお互いに見にくく、集中もしにくいからです。本館に一部室内に柱が建っている部屋があるのですが、空間が分断されている感じがしますし、模様替えや配置換えの際も柱があると使い勝手が悪いのです。そのため今回は、自由度の高い構造にして欲しいということを一番にお伝えし、実現していただきました。
実は清水建設さんを選ばせていただいた理由の一つに、柱を使わずに梁で支える独自の工法をお持ちだったことがあります。
登坂
柱は鉄筋コンクリート造とし、梁は鉄骨造+端部鉄筋コンクリート根巻きとしたシミズHy-ECOS構法とすることで、大スパン空間を実現しています。
福田
また、本校はホームルーム制を敷いており、講義室を4室確保することも優先事項だったので、5階建てのうち3階から5階までは実習室と講義室で構成することが決まりました。では1階と2階をどうしようかという話になり、1階に歴史館、2階にホールをつくることになったのです。

――それが2階の大講義室「さくらホール」ですね。

福田
はい。ホールの大きさは、一学年が全員集まると約300人、それにプラスアルファで400人収容を目安にしました。モニターの見やすさを考えて階段教室も検討しましたが、天井高の問題がありました。

登坂
すべて階段状の席にするには床から天井までの高さが足りませんでした。ただし奥行きが30mあるため、全部をフラットにしてしまうと後ろの座席が見にくくなることから、前方の24mまでをフラットにして、後ろの6mは階段状にして傾斜をつけることで視認性を確保しました。
多喜田
ステージは可動式でしたので、前方の講義机も可動式にし、フレキシブルに使えるようにご提案しました。そうすることで、講義以外の使い方も可能になります。
また、最初に図面を拝見したときは5人掛けを基準としたレイアウトになっていましたが、5人掛けは通り抜けに不便な面があると考え、3人掛けで提案させていただきました。3人掛けは真ん中1席を空けて2人座れるので、コロナ禍でも使いやすかったのではないでしょうか。
福田
確かに3人掛けは使い勝手が良かったです。さくらホールは普通の講義はもちろん、講演会や教職員向けのFD・SD研修にも使っています。色々な意味で400席というのは使いやすい規模なので、使用頻度も高いです。
それからこのホールには、挑戦的な試みとして床吹出し空調を採用しました。イニシャルコストは高くなりますが、省エネでランニングコストを抑えることができます。空気が床全面からゆっくり吹き出し、丁度良く室温が保たれるので非常に良かったと思っています。



【トピックス】学生ファーストの視点で作り上げた 多様な学びと安らぎを提供する校舎[後編]
取材日:2023年5月

関連リンク

純真学園大学 WEBサイト

講義机イス 可動式机イス

一覧へ戻る