利用目的を明確にした体育館の建設で
授業や部活動のさらなる充実を図る

2022.01.18
インタビュー
※2023年5月より、ディバイダーは愛称「SIKIRUTO(シキルト)」に変更しております。
 ここでは、記事公開時の呼称をそのまま使用しております。

中村学園女子中学校・中村学園女子高等学校は、学園祖中村ハルの教育理念の下、人間教育や食育に定評のある学校として知られてきました。また、いくつもの部活動が全国大会で優秀な成績を収める、県内有数のスポーツ強豪校でもあります。
さらに平成27年度には文科省の事業である「SGH(スーパーグローバルハイスクール)」の指定を受け、令和2年度にはその後継事業である、「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)拠点校」に認定され、グローバルリーダーとしてこれからの社会で活躍する人材の育成に取り組んでいます。
創立50周年を迎えた2010年には新校舎を建設し、食育に力を注ぐ同校のシンボルともいえる個性的な円形の調理示範室、心の教育を行う場として大切にされている講堂など、同校の教育理念を実践する充実した施設を整備しました。2020年からは体育館の改築工事も始まり、2021年7月にサブアリーナが完成、2023年5月にはメインアリーナが完成予定です。サブアリーナには大型電動間仕切「ディバイダー」が導入されているほか、授業や部活動の際に使いやすい様々な配慮がなされています。今回のインタビューでは、体育科教諭で新体操部の顧問でもある荒木 真麻氏に、サブアリーナの特徴やディバイダーの利用状況などについてお話を伺いました。
 


中村学園女子中学校・中村学園女子高等学校
体育科
新体操部監督
荒木 真麻 氏

ダンスの授業や新体操での使いやすさに配慮

――2021年7月にサブアリーナと部室棟が完成し、現在は2023年5月の完成予定でメインアリーナや武道場を建設中とお聞きしています。体育施設の中でサブアリーナはどのような位置づけになるのでしょうか。

本校の体育は一年を通じてダンスの授業があり、バーレッスンや創作ダンスを行うことが特徴になっています。そのため以前からメインの体育館とは別に、鏡張りでバーが設置された第二体育場があり、私が顧問をしている新体操部は主にそこで活動していました。サブアリーナは第二体育場と同じ用途になるので、メインアリーナが完成すれば日中はダンスの授業、部活動では新体操部などがメインで使うことになります。
今は球技でも使っているのでバスケットゴールがあり、危険を避けるためにバーを付けていませんが、ゆくゆくはバスケットゴールを外し、全面鏡張りでバーを設置する予定です。

――サブアリーナ建築の際に配慮された点についてお聞かせください。

サブアリーナを建てるにあたっては、こちらの要望をかなり取り入れていただきました。
新体操は演技の際に手具を高く投げるのですが、今までの第二体育場は天井が低かったので力いっぱいは投げられませんでした。わかりやすく言うと、試合では手具を投げた後に前転を4回転、5回転しなければならないのですが、1回転しかできないぐらいの高さですね(笑)。メインの体育館でも練習はしていましたが、他の部活動との調整もあり、練習時間が十分取れているとはいえない状況でした。
そのため今回は、天井の高さにはこだわりました。サブアリーナの天井は10.5mほどあり、面積も以前の倍近い広さがあります。天井の構造についても、管や照明などが出っ張っていると手具が引っかかったりぶつかったりするので、なるべく何もない状態にしてくださいとお願いしました。前の体育館では手具がいくつも消えてしまいましたし、照明もダメにしていましたから。
床についても、できるだけ柔らかくしていただくように頼みました。裸足でとんだりはねたりしても体に負担が少ないように、衝撃を和らげるクッション材が入った床になっています。あとはダンスの授業も新体操も音楽を流すことが多いので、防音にも配慮していただきましたね。

――先生のご要望が色々と反映されているのですね。ディバイダーについても意見を出されたのでしょうか。

特にソリッド部分の高さについては、かなり細かく打ち合わせをさせていただきました。視界を遮る高さは必要だけれど、高すぎると風通しが悪くなり圧迫感もあります。バスケット部は背が高い生徒が多いので、彼女たちが間仕切りの側に立った時にもぎりぎり反対側が見えない高さで、少し手前からはメッシュ越しに奥の方が見える高さというところで、設計者の方に色々考えていただきました。私としては、要望通りのベストの高さにしていただいたと思っています。
色については私が決めたのではありませんが、落ち着いた印象の色を選んでいただいて良かったです。新体操は練習風景を動画で撮影することが多いのですが、バックが真っ白だと汚れも目立ちやすいですし、キラキラした衣装を着ていると反射するのか、思ったほどきれいに撮影できないことがあります。このディバイダーの色は、撮影したときにもとても馴染みますね。

――メインアリーナが完成するまでは、どのような使い方となりますか。

今は場所が足りないので、近くにある中村学園グループの大学施設なども使いながら皆で融通しあっています。サブアリーナはまだ夏休みの部活動でしか使っていませんが、授業が始まったら曜日と時間ごとに分けて使うことになります。バレーボールとバスケットは仕切ると使いにくいので全面を使用し、新体操となぎなた、新体操とバトンなどの組み合わせの時は仕切って使うことになる予定です。間仕切りがあることで、同時に2つの部活動が練習できるのはありがたいですね。

ディバイダーで視界が遮られることの効果

――ディバイダーを導入したことで変わったことがあれば教えてください。

一番の違いは、ディバイダーがあると手具が飛んでいかないことですね。これは本当にありがたいです。特に剣道は面をかぶっていて視野が狭いため、手具が隣へ飛んで行ってしまうと非常に危ないので。
以前の間仕切りは防球ネットで上も空いていたので、上から飛んでいってしまうことがありました。網を手具が通り抜けたり、引っかかったりすることもよくあり、高い場所に引っかかるとそれを取るために手具を当てて落とすのも大変でした。
また前の間仕切りは手動だったので、手で引っ張ったり、2階のギャラリーに上がって行う作業もあったりと準備が大変でした。それが今ではボタン一個で操作できるので、すごく楽になったと思います。電動間仕切りの操作は生徒がしていますが、展開時には下にいてはいけないとか、物を置いておいたらいけないとか、この一カ月ですっかり使い方にも慣れたようです。
授業で使うのはこれからですが、使うとしたら創作ダンスのときに1クラスを2つのグループに分けて、練習は仕切って見えないようにして、発表のときにお互いに初めて見るというのも楽しいかなと。そういうことを考えるとワクワクしますね。


――生徒さんにも何か変化はありましたか。

自分の練習に集中できている気がします。以前他の部活動と一緒に体育館を使っているときは、頑張っている友達同士で気になるのか、集中力が途切れたときに他の部の練習をボーッと見てしまうことがありました。その点では見えなくなったことは大きいと思います。
また新体操部は練習で音楽をかけることが多いので、音についても以前は結構大変でした。バスケット部なども結構大きな声で指示を出すので、音楽が聞こえにくくなるとつい音量を上げてしまいます。そうなるとお互いにもう少し音量を下げてほしい、声を静かにしてほしいとなってしまうことがありました。でも今は、隣をあまり気にせずに練習ができている気がします。音自体は聞こえないわけではないですけれど、前よりは全然気にならなくなりました。たぶん、これも視覚的な影響が大きいのだと思います。
一方で、ディバイダーで、ある程度自分たちの練習環境が保たれている状況であれば、隣の音が聞こえたり、気配を感じたりすることが良い面もあります。
例えば先日剣道部と一緒に練習したときのことです。本校の剣道部は全国高校総体(インターハイ)で何度も優勝している部で、日本一の部が隣で練習をしているというのは気分的に違ったようです。見えないけれど気迫や緊張感は十分伝わります。彼女たちが頑張っているのを感じると自分たちも頑張らなくてはと思うようで、黙々と練習していました。今は他の部活動がどのような雰囲気で日々練習をしているのかを知ることも、生徒たちには良い影響があるのではと感じています。


中村学園の伝統として受け継いでいくもの

――サブアリーナが完成したことについて、先生はどのように感じていらっしゃいますか。

立派な施設を準備していただいて、改めて良い指導をしていかなければいけないと強く感じています。
本校の学園祖である中村ハル先生の言葉に「形は心の現れである」という言葉があり、建学の精神の一つである「教育実践の基底」にも「『形は心の現れである』を信条とし、その実践に努める。」と掲げられています。私たちは日頃の立ち姿や所作はすべて心とつながっており、制服を着ている姿も、部活動を頑張る一生懸命な姿も生徒の心の現れと考えています。ですから制服姿が乱れた生徒がいれば、何かあったのではないかと気づき声をかけます。
バーレッスンはこうした本校ならではの教育の一つです。バーの前に立つことで自分の一番きれいな姿を知り、美しい姿勢を身につけてほしいという願いから行っています。創作ダンスも生徒たちの心を形で現す貴重な時間です。例えば受験前の3年生は心のモヤモヤしたものが動きにも出てくるので、その意味でもダンスでいかに内面的なものを引き出せるかを考えながら授業を行っています。
私は本校の卒業生でもあります。施設が変わり新しい環境になっても、本校が大切にしてきた「形は心の現れである」という授業をしっかり受け継いでいくことが今の私の課題だと思っています。

――新体操部の活動についてはいかがでしょうか。

部活動についても、これだけの環境を準備していただけたのは、これまで頑張ってこられた先輩方のおかげだと思っています。本校の卒業生にはオリンピックに出場した秋山エリカ先生がいらっしゃるのですが、指導に来てくださったときにサブアリーナを見てすごく感動していらっしゃいました。こうした先輩方の伝統を私たちも引き継いでいきたいです。

――練習環境が良くなることで、入部希望者も増えそうですね。

今の時点で「来年入りたいです」と意思表示をしてくれている子もいます。良い環境があると、もっと強くなりたいという意識の高い生徒が集まってくるので指導もしやすいですね。
本校の部活動では新体操用のマットで練習していますが、実はいつも本番通りの練習環境があるというのはとても恵まれたことです。地域のクラブは一般的に市民体育館など近郊の体育館を使っているため、普段はマットがない床で練習をしています。当然試合の時にはマットがあるため、練習と試合で条件が違うという不利な状況で演技をすることになるのです。
そのため、今はコロナ禍で休んでいますが、土日などにクラブチームのジュニアの子供たちに本校に来てもらい、一緒に練習をする機会を設けていました。私も子供たちの指導をしますし、クラブの先生方に本校の生徒を違う視点で見ていただくことが良い効果につながっていたと思います。
もう一つの効果は、小学生のときから本校に練習に来て、本校の生徒たちの演技を見て憧れてくれる子供たちが育つことです。これは私の一方的な想いではありますが、そうした地元の子供たちを大事に、全国大会に出られるような選手に育てていければと思っています。

――地域の新体操を志す子供たちにとってもサブアリーナは貴重な施設となりそうですね。新体操部のこれからのご活躍を期待しています。本日はありがとうございました。

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取材日:2021年8月

ディバイダー

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