開智所沢小学校では、同学年の「クラス」のほか、1〜5年生混成の「ホーム」が設けられており、朝の会や昼食、行事などを異なる学年がともに過ごすことで、豊かな人間関係が育まれています。その小学1年生から5年生までが過ごす1階フロアの中心にあるのが、図書室です。ドアもなく自由に出入りできるこの場所で、子どもたちはそれぞれ落ち着いた時間を過ごしています。
2025年夏、子どもたちのさらに充実した学びをサポートすべく、図書室に階段状の「なかよしクッションベンチ」(42席)が導入されました。
今回は、図書室で過ごす子どもたちの様子や学び、移動観覧席導入の効果について、図書室の運営をご担当されている前田徹教諭にお話を伺いました。

開智所沢小学校
国語 2年生 教諭
前田 徹 氏
開校2年、みんなでつくる図書室
――この図書室について教えてください。

私が本校に着任した際に、国語科の責任者という立場から図書室を担当することになりました。最初は、蔵書数が現在の3分の1ほどでした。これまでに約2,000冊を購入し、保護者の方からも1,800冊を超える寄贈があったので、ようやく本棚が埋まってきました。今は、図書委員の子どもから提出される希望書を注文しています。今のところ、希望があって置かなかった本はないですね。本校の教頭も図書室にたくさんの本を寄付してくれていますよ。
――本の寄贈を通じて大人も学校づくりに参加しているのですね。
例えば、新しい本にカバーをつける作業では、この2年、月に1度の割合で4~5名の保護者が手伝ってくださっています。また、バーコードで読み取って貸し借りを管理できるシステムも構築していただき、保護者のサポートは図書館運営に欠かせないものになっています。ただ、100冊単位で寄贈図書が届くと、その時は大変ですね。なるべく寄贈を受けてから3、4日ぐらいで図書室に並べるようにしています。まずはそれぞれの本にコードを付け、子どもたちがその番号を本に貼って、本の情報一覧を作成します。図書委員の児童と、教員が協働し、さらに、保護者の方のサポートがあって初めて運営が可能になります。
――図書室には何かルールなどがありますか?
完全には決まっていないのですが、本が横に積んだままになっていれば図書委員に整理を頼むこともあります。休み時間に片付けても昼休みにはまた散らかっている時もあります。ただ、どんどん本が増えているので、まだきちんと置き場が決まってないことも理由です。今は蔵書を充実させることで読む環境づくりを優先し、片付けには多少目をつぶっているところですね。
居心地のよさを高める新しいベンチ
――なかよしクッションベンチの導入はいかがですか?
以前は本が少なく寂しい空間だったため、どうにか居心地がよい図書室にしたいという想いがありました。なかよしクッションベンチのことを知り、児童が落ち着いて本を読める場所に活用できるのではと考えました。今では、子どもたちは日々この場所でくつろいでおり、ベンチを置いたことが居心地のよさを生み出したとその効果を感じています。机で読むのを好む子どももいるので、場所を選べるという点でも、以前とは全然違います。
――設置されたときの反響はいかがでしたか?
大喜びでした! 夏休みに設置したため、サプライズもあって、最初から大人気でした。子どもたちはみんな上の席から座りますね。現在も、休み時間や雨の日は特に利用が多いです。
――クッションは落ち着いた色ですね。
色彩感覚が豊かな教員が中心となって選び、その候補の色を職員室に貼り、他の教員にも意見を聞きました。もっと鮮やかな案もありましたが、居心地を重視し最終的に落ち着いた色になりました。
――ベンチは収納も可能です。

ベンチを収納すると広い空間ができるので、今後は図書室で2、3クラスが集まる使い方を検討しています。教室は30人ほどしか入れないため、クラス合同で集まる際は2階の大きなホールを使っていましたが、ホールは中高生も使用するため、空いていないこともあるので、図書室が使えれば便利です。実は、子どもたちはベンチが動かせることを知らないので、驚く姿が楽しみです。
情報発信と交流の拠点としての図書室
――新しい図書室はどんな存在ですか?

読書だけではなく、情報発信の中心になりつつあります。例えば、今年は音楽の発表会を休み時間に行いました。合唱ではベンチの段をひな壇にしていました。今後も、6年生による読み聞かせ会など新しい取り組みを考えています。ちょうど学校の真ん中に位置するため、イベント開催には最適です。
さらに図書室は自由に出入りができることから、子どもたちにとって第三の居場所となっています。普段、子どもたちは他の教室に出入りすることは少ないですが、図書室はいつでも出入りができ、違うクラスの友達と集まったり、知らない子と触れ合ったりできます。校庭や体育館に加えて図書室が選択肢のひとつになっているのです。子どもたちは、一人で図書室に来る日もあれば、友達と外で遊ぶ日もあり、過ごし方を自分で選択しています。下級生と遊んであげる時もあれば、同じ学年で遊ぶ場合もあり、一人で過ごしたければここで本を読むことができます。
――授業で図書室を使うことはありますか?
週に一度担当している1年生のクラスでは、読書の時間として本に親しむ機会を設けています。また、私が系列校で勤務していた時、5年生と道徳で習った話をもとに、紙芝居を作って発表し合ったことがありますが、そのような対話型の学びの場にも使えると思います。新しい学校ですので、子どもたちのアイデアは、積極的に採用して取り入れていきたい。教員の間でも、掲示物をもっと貼り出していこうとか、イベントを開催しようといったアイデアがどんどん出てきています。また、放課後のアフタースクールの時間には、民間の学童保育による活用も検討しています。
問いをもち、考え抜く力を育てるカリキュラムが充実
――小学校の特長である「ホーム」の効果とは?
ホームでは上級生が下級生の面倒を見ています。異なる年齢が触れ合うことで、先輩後輩や、きょうだいのような関係が生まれ、思いやりが育まれています。下級生にとっては、上級生から刺激を受け、憧れもあるようです。一方で、異なる学年がともに過ごす中で、理不尽を感じる場面もあるようですが、それも勉強です。いろいろな面を感じるからこそ面白いのだと思います。中学校の部活のような上下関係ではないので学年差を意識していない子も多いですね。
――ホームのメンバーは毎年変わりますか?
毎年、クラスもホームも変わります。しかもクラスは4クラスですが、ホームは20あるので、同じメンバーが一緒になることは少なく、さらにクラスとホームは担任が異なるので、より多くの人間関係が生まれます。例えば、クラスは授業や宿題が厳しくても、ホームは上級生もいて落ち着いて居心地のよい場所、など気持ちを切り替えることができます。
――授業では、探究学習やフィールドワークに力を入れています。

本校では国際バカロレア(IB)プログラムの候補校として認定を目指しており、例えば4年生ではものづくりがテーマです。まずは疑問をもってわからないことを調べた後で、フィールドワークに向かいます。昨年は諏訪湖に行って土器について学び、実際に粘土で土鈴の製作をしました。また、企業見学では、地域の産業の現在を知るとともに、時代のなかでどのように変化してきたかを学びました。校外学習は旅行でなく勉強です。普段から市役所の方にお話を伺ったり、近隣企業に見学に行ったりすることも多いのですが、どの場所でも、開智の子どもたちからたくさん質問が出ることを褒めていただいています。これからはさらに知識の土台を作っていこうと思っています。5、6年生は、年に一度、「プレエキシビジョン」という探究学習の発表会を実施しています。夏休みの個人探究に関しては、1年生の時からみんなの前で発表する機会を設けています。私たち教員は、答えを教えるのではなく、わからなかったらこんな風に調べてごらんとアドバイスしていますが、子どもたちの方が詳しくなることもよくありますよ。
――情報発信の場として、図書室のこれから。
なかよしクッションベンチが設置されたことで、この図書室は子どもたちの落ち着く場になり、「居心地のよい空間」という当初のコンセプトが叶いました。これからは、校長とも相談しながら、小学校のど真ん中における、情報の中心地づくりに取り組んでいきます。本校には様々な探究の授業と発表の機会がありますし、そのほか、掲示物やポスター展示、イベント案内など様々な場面でこの部屋を活用していきたいと考えています。
――取材中の休み時間にも多くの子どもたちが本を読みに集まって、とても賑やかな図書室でした。これからどのように図書室が使われていくのか、とても楽しみです。本日は貴重なお話をありがとうございました
取材日:2026年2月