健康ランドにカプセルベッドを導入し
仮眠施設利用者の新たなニーズを創出

2026.02.16
インタビュー
長野県塩尻市の塩尻ICから約1分という好立地に位置する「信州健康ランド」は、日帰り入浴施設と宿泊施設を併設した複合施設です。運営を行う株式会社クア・アンド・ホテルは、ほかにも同様の施設として「石和健康ランド」(山梨県笛吹市)、「駿河健康ランド」(静岡県静岡市)を展開しています。
信州健康ランドは20種類以上の大浴場や露天風呂、塩サウナ・高温サウナなどを備え、ホテルの客室は洋室・和室・別邸「竹里庵」の全246室を提供しています。2025年4月には空き室となっていた10階の1部屋を改装し、仮眠室利用者をターゲットにした男性専用カプセルホテル(12床)をオープンしました。今回は新たな宿泊機能としてカプセルホテルを開設した目的やその効果について、支配人代理の川上直矢氏にお話を伺いました。
 

株式会社クア・アンド・ホテル
信州健康ランド 支配人代理
川上  直矢 氏

利用者ニーズに応える新たな宿泊形態

――カプセルホテル開設の経緯について教えてください。

一番の理由は、お客様のニーズに応えるためです。これまで信州健康ランドの宿泊は、ホテルの客室に泊まるか、仮眠室に泊まるかのどちらかでした。しかし仮眠室は安価だけれども、オープン型で人目や音が気になってゆっくり休めないといったお声が一定数ありました。もちろんホテルに宿泊していただければ解消することですが、仮眠が目的の方にとっては予算的に合わないということで、価格的にも設備的にもホテルと仮眠室の中間といえるカプセルホテルを開設しました。
信州健康ランドの男性仮眠室は100床以上あり、その稼働率から考えて一定数は利用があるだろうという見込みもありました。

――お客様からのご要望だったのですね。

はい。それからスペースができたことも大きな理由です。この場所は、元々前オーナーの私室だったのですが、引き払うことになって空きスペースになりました。オーナーが使っていた部屋で最上階の眺望も良いスペースだったので、豪華なデラックスルームにするという案もありました。グループの駿河健康ランドはそちらに舵を切り、オーナーの私室だった部屋を最上階特別客室「オーナールーム」として販売しています。しかし今回はお話したような経緯があったとともに、カプセルホテルはグループでは初の試みとなるので実験的な意味もありました。
実際にオープンしてみると予想以上に実績が出ており、我々も本当にホッとしているところです。(写真:カプセルホテルの入口。元はオーナーの私室だった)

――仮眠室利用者はどのような方が多いのでしょうか。

ビジネス客は会社から出張経費が出るため、ホテルでしっかり休憩したいという方が多いです。一方で仮眠室の利用客はレジャー関係の方が多く、翌日早朝から予定があってゆっくりお部屋を使う時間のない方、少し仮眠していきたいという方が中心です。上高地や乗鞍などへ行く際に前泊される登山客も多いですね。
また仮眠室の利用客はファミリーやカップルが少ないため、客層としてもカプセルホテルにマッチすると思っていました。

――カプセルホテルの利用状況を教えてください。

当初は一定の利用を見込んでスタートしましたが、オープン後は想定を上回るペースで利用が広がり、現在も安定した稼働を維持しています。また、ホテルのシングル利用のお客様が安価なカプセルホテルに流れてしまうのではないかという懸念もありましたが、結果として既存の宿泊需要を損なうことなく、新たなニーズを取り込む形で推移しています。予想通りに、ターゲットとしていた仮眠室の利用客がカプセルホテルにグレードアップしてくれたという認識です。年齢的に若者から40歳代、50歳代ぐらいまでの方が中心ですね。

――地元の方もいらっしゃるのでしょうか。

地元の方の場合は、車で30分から1時間ぐらいの範囲が中心です。明日の朝松本で用事があるから泊まっていくという方や、飲酒後に帰るのが面倒になって泊まった方もいらっしゃいます。オープンしたばかりの頃は、信州健康ランドのコアなファンの方々も新しくできた施設を試しに使ってみようと来てくださっていました。初日に利用者の方々にご挨拶にいったのですが、顔見知りのお客様ばかりでしたね(笑)。
最初の1、2週間こそ、当日や電話予約の案件が多かったのですが、インターネットに出してからはインターネットからの予約が多く入るようになり、今は約半数がインターネットからの予約の方です。

ワンランク上の睡眠環境を提供するカプセルベッド

――仮眠室のワンランク上の宿泊にカプセルベッドという発想はすぐに浮かんだのでしょうか。

正直なところ私をはじめ現場の人間は、カプセルホテルにはほとんど馴染みがありませんでした。でも本社から、都会では結構多いし意外と快適だと言われて色々調査をした結果、カプセルベッドは半個室空間で音や光を気にせずゆっくり休めることが分かり、目的に合っているとの判断で動き出しました。ですので、カプセルベッドが入ったときに真っ先にここで寝て確かめたのは私です(笑)。実際にお客様からも、ワンランク上の睡眠が取れるようになったというお声をいただいています。

――実際にカプセルベッド「GS-CUBE」を使ってみて、お気づきの点があれば教えてください。

私はまず年齢を選ばないシックなデザインがすごく気に入っています。ありふれた表現で恐縮ですが、格好いいですよね。室内の縦ラインのライトもお洒落ですよね。直接照らしていないので中に入ったときに眩しくなく、リラックスしやすいと感じた要素の一つです。またベッドの出入り口のナンバープレートですが、当初はお客様が自分のベッドを間違えないか不安がありましたが、今のところ大きなトラブルは起きていません。確認のしやすさ、視認性も確保されており、十分役割を果たしているようです。オープンして約半年経ちましたが、目立った傷などもついておらず、見た目にもきれいな状態を維持していますよ。
それから、換気面についても非常に工夫されていると感じました。開設当初から現在に至るまで、室内環境が安定しており、快適な状態が維持されています。

――ベッドメイキングなどの運用面はいかがでしょうか。

ホテル同様、ベッドメイキングは社内のスタッフが行っています。ただ当然、ホテルの客室とはやり方が違うので、時間がどのくらいかかるか、どのようなやり方が良いかといったことを検証するためにまず私がやってみました。その後も、スタッフと色々話し合いながら試行錯誤しました。例えば足元に掛け布団が畳んで置いてあると、お客様が手前から入るのに邪魔になるのではないかと。そこでスタッフと議論した結果、布団を縦に二つ折りにして入れる現在の形になりました。
カプセルベッドの中は意外と広いので、慣れれば掃除もやりやすいです。私が入っても中で普通に向きも変えられるスペースがあるので、メンテナンスのしやすさはアピールできるのではないでしょうか。

――リニューアル工事の期間はどのぐらいかかりましたか。

改修工事は全部で2カ月ぐらいですが、カプセルベッドの工事自体は一週間もかかっていません。他の施設の運営にも支障はなく、簡単に導入できたことは大きいですね。

――今後、グループの他店舗に入る可能性もありますでしょうか。

はい。ただし現状では各店舗は全館すべてが活用されているので、問題は場所ですね。私たちのように空きスペースができた場合には十分可能性はあると思います。

複合施設との相乗効果で利用率をアップ

――現場の方々がかなり積極的に営業されているようですね。

フロントスタッフは本当に頑張ってくれています。仮眠室は事前予約や特別な手続きが不要で、そのまま気軽に利用できる点が特徴です。 そのうえで、状況に応じてフロントスタッフが仮眠室利用のご予定があるかを確認し、より静かな環境でしっかり休みたいお客様に対しては、選択肢の一つとしてカプセルホテルをご案内しています。そのために、カプセルホテル用のトークスクリプトを用意し、自然な形での声がけを行っています。
またフロントでの案内だけではなく、仮眠室の近くでカプセルホテルを紹介する写真や動画をデジタルサイネージで流したり、館内放送によるPRもしたりしているので、入館後に切り替えてくださるお客様もいらっしゃいますね。仮眠室利用の料金に差額をプラスしていただければいつでもカプセルホテルに変更できますので。

――なるほど。それはPR効果があると思います。

ホテルのシングルが好調な日は、何もしなくてもカプセルホテルも一杯になります。そのためシングルにまだ空きがあるような日に関してはスタッフが状況を判断し、私が黙っていても営業してくれています。

――カプセルホテル以外にも様々な施設をオープンしていますが、その相乗効果もありますか。

2024年10月に伝統的な日本家屋を一棟貸し切りで宿泊できる別邸「竹里庵(ちくりあん)」、2025年11月には駿河健康ランドで先行導入して評価が高かった24時間利用可能なコワーキングルームを新設しています。
中でも2025年9月にリニューアルオープンした男性浴室内の「シンケンSAUNA」は、特に効果があったと思います。同施設は弊社グループでは初の「セルフロウリュ式」を導入し、4種類のサウナを揃えるなど設備を充実させたことで、以前よりサウナ好きの方が多く集まるようになりました。
サウナ好きの方とカプセルホテルは親和性が高いようで、「ととのった後は泊まっていく」というサウナと宿泊をセットで堪能されている方が一定数いらっしゃいます。またこうした方は、リピーターになっていただけることも多いです。

――そうした様々な戦略は日頃のマーケティングから生まれているのでしょうね。

本社が分析したデータと、現場でお客様からいただく生の声、そして日々館内を回る中で感じ取っていることを総合的に踏まえながら、次の施策を検討しています。

――今日のお話からも積極的に現場に出て、スタッフともコミュニケーションを取っていることが分かります。

そうですね。私自身がしっかり現場に出て、実際にお客さんとして宿泊し、サウナやお風呂も利用することで、なるべくお客様の感覚に近づけておくということは、常に意識しています。

――カプセルホテルについても今後の予定はありますか。

カプセルホテルは、信州健康ランドの2025年度の一番の成功事例と言ってもいいかもしれません。平日は多少空きがありますが、土曜日や大型連休は満床で100%稼働しています。ですので、今の倍ぐらいの床数でもいけるのではという感覚はありますが、そうなると稼働率は少し落ちることも予想されます。もう一つ考えられるのは、女性専用のカプセルホテルの導入です。ただ女性の仮眠室利用は男性ほど多くはないので、どの程度のニーズがあるかはまだ不透明です。
今後については、利用状況やお客様の声を踏まえながら、運用の工夫や床数の調整も含めて検討していきたいと考えています。また、男性向けの強化が良いのか、女性専用の展開が適しているのかについても、慎重に見極めていく予定です。

――カプセルホテルの可能性を広げる次の戦略が楽しみです。本日はありがとうございました。

取材日:2025年12月

カプセルベッドホテル

一覧へ戻る