社員インタビュー
“Always with a Pioneer Spirit” vol.1
アクティブラーニングデスク SD-610FF シリーズ(フルフラッター機構)

2026.01.09
インタビュー


コトブキシーティングのアクティブラーニングデスク SD-610FFシリーズが、「天板を跳ね上げずに移動と設置ができるテーブル」として、2025年3月、「第50回(令和6年度)発明大賞」において「発明功労賞」を受賞しました。
発明大賞とは、公益財団法人日本発明振興協会が日刊工業新聞社との共催による「独創性に富む発明によって優秀な技術・製品を生み出した中堅・中小企業の方々及び個人への表彰」で、その功績を広く一般に紹介し、発明の推進を図っています。そのなかでも発明功労賞は、優れた発明考案により、わが国の産業発展と国民生活の向上に業績をあげた企業及び個人またはグループに対して贈られる賞です。
当製品の開発者である、コトブキシーティング株式会社 開発部 部長 大野康氏に、製品開発までの背景や今後の展望など、インタビューを行いました。
 


コトブキシーティング株式会社 開発部
部長
大野 康 氏

アクティブラーニング型授業に向けて開発されたSD-610シリーズ

――発明功労賞を受賞したSD-610FFシリーズは、SD-610シリーズをアップデートした製品ですね。従来品の概要を説明してください。

SD-610シリーズは、アクティブラーニング型の授業を取り入れた学校に向けて、14年ほど前に開発した教育家具です。生徒さんや学生さんたちが、グループワークやディスカッションに能動的に取り組めるよう、安全かつ簡単な操作で動かせる設計を心掛けました。移動用のキャスターは、通常時は脚カバーに内蔵されて露出せずにシンプルな形状となるため、足を引っかけてつまずくといった危険を防ぎます。テーブルの天板を跳ね上げると、脚カバーが上がってキャスターが出現し、簡単に動かせる仕組みでした。


※従来品のSD-610シリーズは、天板を跳ね上げることで脚カバーからキャスターが出現し動かせる仕組み

利便性と安全性をより高めたSD-610FFシリーズの開発

――後継品となるSD-610FFシリーズを開発した経緯について聞かせてください。

昨今のアクティブラーニング型授業の需要増加に伴う他社製品との競合から、従来品にもっと機能を持たせられないかという社内からの意見がありました。
また、開発部でも「天板を跳ね上げずに移動できるテーブル」に改良する構想を検討していました。先に特許を申請するために、これらのことを社長に説明すると「ぜひ試してみなさい」と背中を押されました。
試作品が完成し、実際に使ってみると思いのほか良い動きの仕上がりです。早速工場から本社オフィスに持ち込むと「すぐに製品化しよう!」という流れになりました。

――従来品と比較して、具体的にはどのように進化しましたか。

従来品は、テーブルの左右どちらかのレバーを握ることで、天板が跳ね上がってキャスターが出現する仕組みでした。移動させる時にはどうしても天板を跳ね上げる必要があるので、置いてある教材を一時的に避難させる手間が授業を中断させるといったデメリットがありました。後継品では、「天板を跳ね上げる」収納レバーに加え、「天板を跳ね上げずに机を移動させる」リフトアップレバーを新たに設けています。このレバーはテーブル手前側に配置し片手で操作できるようになり、左右に連結する場合も邪魔になりません。複数のテーブルのレイアウトや移動がたいへん便利になり、天板を水平のまま簡単に移動させられるようになりました。天板を跳ね上げると、複数台を140mm間隔で水平にスタッキングでき、コンパクトな収納が可能です。目的に合わせて机を移動させるアクティブラーニング型の授業に、柔軟に対応できるテーブルとして進化しました。



※後継品は天板下に専用レバーを装備。リフトアップレバーを握るとキャスターが出現し、天板を跳ね上げることなく移動が可能



※水平スタッキングにより、コンパクトに収納

――量産品になるまでには、どのような試行錯誤がありましたか。

従来品の機能を維持しながら天板を跳ね上げずに移動を可能とするためには、「第二カム」と呼ばれる別の機構が必要になりました。この「第二カム」は天板とは連動しない独立した機構で、形状の決定に至るまで何度か試作を繰り返しました。また、片手で操作するレバーには、剛性を上げることと軽量化の両方が必要だったので、実現に向けて工夫や耐久テストを重ね、製品化まで約1年を要しました。

――耐震実験を行って製品の安全性も確認したそうですね。

大地震が起こったとき、一般的なキャスター付きのテーブルは固定が不十分なため、家具が勝手に動きだし、危険な凶器にもなりうるといった実験映像を見たことがあります。
この製品は教育現場で使用されることが前提にありますので、地震に対する安全性には特にこだわりました。リフトアップレバーから手をはなすと自動的にキャスターが固定され、ロックのかけ忘れを防ぎ安全を確保できます。テーブル本体とキャスターが分離した機構は、脚を床にしっかり固定します。
専門のシミュレーターで行った耐震実験では、過去に起きた大きな地震の揺れにも十分対応できることが検証できました。耐震実験の様子は動画でご覧いただけます。

発明大賞受賞までの背景

――「発明大賞」にはどのような動機で応募しましたか。

我々の製品は公共家具がメインとなります。不特定多数の使用に応える耐久性や機能性を備えた製品は、劇場、スタジアムやアリーナ、学校、映画館、駅のベンチまで、数多くの納入事例をつくってきました。
しかし、B to Bの市場がメインとなる公共家具は、購入者と利用者が異なるため、利用者にはコトブキシーティング製であることが認知されない場合があります。
そこで、「受賞」という形式で、製品やコトブキシーティングのことを広く知っていただきたいと思ったのが応募の動機でした。今回の受賞は、弊社製品の価値に対する具体的な実証となり、大きな手応えとなりました。
そしてこの反響が、やりがいをもった仕事をめざす新卒学生や就職希望者にも伝わり、コトブキシーティングが永く愛用される製品を生み出す企業であると注目が集まれば光栄に思います。

――受賞の理由にはどのような背景が考えられますか。また、受賞時の様子なども聞かせてください。

良いアイデアが生まれても具現化されないと意味がありません。実際に製品化され事業として成り立っていることも評価していただけたように思います。SD-610FFシリーズは、販売開始から10年ほど経過していますが、従来品もあわせて年間5,000台前後の販売実績があることも、今回の受賞につながりました。今年4月に行われた受賞体験式では、25名の受賞者の中のから8人が講師に選ばれ、私もその一人に選出されました。参加した方々に、製品使用時の映像と併せて受賞作品の機能性を説明させていただく機会を持ちました。

開発の仕事について

――今回の開発で嬉しかったことはどんなことですか。

納入された学校の現場や、納入後の写真を見て、改良を重ねた製品の利便性や安全性が反映されていることにやりがいを感じます。本製品を使用している大学生と、公共家具をテーマにワークショップを行う機会がありました。利用者の生の声から新たな課題が生まれてくることもありますので、開発意欲に拍車がかかります。 開発はこれで終わりということがない作業なので、この度の製品実用化もたいへん嬉しく思っています。



※現在では多くの教育現場でSD-610FFシリーズが活用されています。

――製品を開発するにあたり、心がけていることはありますか。

永く利用される製品としてメンテナンス性を重視し、製品ごとの修理ノウハウを生かし、ベストな対応を心掛けています。 公共家具は購入者と利用者が異なることに加え、不特定多数の方が使用します。そのため、あらゆる場合を想定した耐久性のあるつくりにしなければなりません。荷重や衝撃などの負荷をかける自社ならではの「いじわるテスト」を行ない、製品の強度を確認しています。

――今後の展望などを聞かせてください。

さまざまなアイデアを具現化し、これからも機能的に価値のある、世の役に立つ製品を作りだしていきたいです。そして、これらの価値ある仕事の新たな担い手の採用、市場のさらなる拡大、協力会社の発掘活動などに繋げていきたいと思っています。ありがとうございました。


編集後記

大野氏は新卒から入社し、複数の部署を経験し現職に至ります。
本インタビューは、現場で永く愛される家具づくりの背景と、同氏の会社への愛情も感じさせられる取材となりました。
「発明大賞」の受賞を励みに、コトブキシーティングは今後も社会に貢献できる製品づくりを行って参ります。

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