体育館とホールの多目的な活用で
医療従事者の心身の健康と専門性向上に寄与

2024.05.28
インタビュー
北海道の北東部に位置するオホーツク圏(第三次医療圏)は、広大な面積を有し、人口における医師数が全道平均を大きく下回る地域です。その中で北見赤十字病院は、唯一の救命救急センターをもち、地方センター病院、周産期母子医療センター、がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院、地域災害医療センター病院などの様々な高度機能を担う中核的な病院に位置づけられています。2012年より同病院は、施設の老朽化・狭隘化した病院の機能刷新に向けた大規模施設整備を開始。隣接地にあった北見市役所庁舎の移転に伴い、その跡地にまずは本館を移転新築しました。本館には、地域からの要望に応えて開設したオホーツクPETセンターや緩和ケア病棟、ヘリポートを備えています。本館のオープン後に既存の建物を改修・増築した北館を開設し、創立80周年を迎えた2016年3月にグランドオープンとなりました。同時にオホーツク圏域唯一の心臓血管外科を有する北海道立北見病院も隣地に移転・接続し、救急・急性期医療の充実化を図っています。
今回の大規模施設整備では旧施設になかった機能として、多目的ホール「ミント」が北館横に増築されました。154席の移動観覧席を備え、講演会や研修会などで使用されると同時に、体育館としての機能も担っています。様々な用途で活用されている同ホールの役割について、運営に携わっている総務課課長の澁谷尚紀氏と総務係長 兼 事業課係長の髙松伸行氏にお話を伺いました。


北見赤十字病院
総務課課長
澁谷 尚紀 氏


北見赤十字病院
総務課総務係長 兼 事業課係長
髙松 伸行 氏

市街地の拠点施設として市役所跡地に建設


――本館は北見市役所庁舎の跡地に建設されたと伺いました。

澁谷
はい。老朽化した施設の大規模整備を行うにあたって、北見市と協議を重ねた結果、やはり北見赤十字病院は市民の皆さんが通いやすい場所にあるべきだということから、市役所跡地に本館を移転新築しました。また当院は地域災害医療センター病院に指定されており、災害時には傷病者の受け入れも含めて災害医療拠点病院としての機能が求められています。そのため災害時に一体的に対応できるように、市民の一時避難場所になっている目の前の小公園も一緒に再整備されました。
髙松
現在の新北館がある場所が、以前の北見赤十字病院が建っていた場所で、その隣に市役所庁舎がありました。旧南館を改修したのが新北館で、それ以外の旧西館・旧東館・旧北館は解体し、跡地を駐車場などに整備しています。多目的ホール「ミント」は、新北館に横付けする形で増築しました。
澁谷
その後、北海道立北見病院が当院の敷地内に移転改築しました。それぞれ別の建物ではありますが、ともに手術室のある3階の連絡通路でつながっています。道立北見病院は当院にはない心臓血管外科があり、二つの病院が連携を強め、機能を補完しながら診療を行うことで、オホーツク圏域の救急・急性期医療をある程度完結できる体勢を整えました。また2018年からは日本赤十字社が道立北見病院の指定管理者となり、当院との一体的な運営を行っています。
ちなみ道立北見病院の建っている場所は、もともとは北見赤十字看護専門学校あった場所です。同学校は北見市内に日本赤十字北海道看護大学が開学したことで、閉校になりましたので。

――新棟は中心市街地活性化の拠点施設に位置づけられており、設計コンセプトが「まちと繋がる“都市のランドマーク”となる病院」「公園に隣接する“パークホスピタル”」とお聞きしました。

髙松
そうですね。公園に面している正面玄関横の吹き抜けのアトリウムは、地域に開かれた共用スペースに位置づけられています。カフェやレストランもありますので、市民の方のいこいの場のとしての役目もあるかもしれませんね。コロナ禍前は、土日も病院の正面玄関は空けていました。院内のカフェで販売しているパンはかなり人気があって、パンだけ買いに来る人も結構いたと思います(笑)。

体育館としての利用が盛んな多目的ホール「ミント」


――今回の新築・改修で、ホールを作ることは最初から決まっていたのでしょうか。

澁谷
以前の施設の時も体育館はありました。ただ今回は、体育館としての利用だけではなく、他の目的でも使える施設にしようということで、移動観覧席を備えた多目的ホールとなりました。この形式であれば、職員の福利厚生施設としてスポーツができますし、移動観覧席を使えば講演会や教育研修にも対応できます。
当院は職員のクラブ活動で様々なスポーツを行っていますので、普段は体育館としての利用が多く、移動観覧席は講演会や研修会のときにだけ出しています。院内にはいくつか会議室がありますが、講演会となるとできる場所は限られます。ここのほかに50~60名程度入れる大会議室がありますので、大会議室に入りきらない場合はこちらでというように、実施する内容の規模に応じて場所を選んでいます。ただコロナ禍は、やはり広いスペースの方が良いということで、ミントを選ぶことも多かったです。

――職員の方々の移動観覧席への反応はいかがですか。

澁谷
職員でも移動観覧席の出し入れを見たことがない人はたくさんいるので、長年働いている人も初めて見ると驚きますね。前の病院では、講演会などの時は全部イスを並べなければいけなかったので、移動観覧席が設置されて本当に楽になりました。
ミントの「こけら落とし」の際に、一般の方もお呼びして吹奏楽の演奏会を行ったのですが、音楽会をやることもできるのだという驚きがありました。以前であれば、会議室で入りきらないような大規模な講演会は市民会館や他の広い会場を借りるという発想でしたので。自施設で様々なイベントができるのは非常に便利ですし、金銭的にもメリットが大きいですね。

――これまで移動観覧席を設置した病院のホールが、体育館として利用されている例を知りませんでした。スポーツで体育館を使う頻度は多いのですか。

髙松
体育館を使用する職員のクラブ活動には、フットサル、バレーボール、バトミントンがあり、毎日ではありませんが練習や試合で使っています。それ以外にも、外来の精神科デイケアのリハビリでも利用しています。こちらも週に3、4回の利用ですが、ボールを使うなど色々な運動を行っていますね。
平日は主に、午前は精神科デイケア、午後や夕方は研修、19時を過ぎたらクラブ活動の練習という状況で、頻度高く利用されています。
澁谷
赤十字病院は、赤十字病院スポーツ大会として全国大会も開催されるぐらいスポーツが盛んです。ですので、必ず体育館があるかどうかはわかりませんが、どこの病院でもクラブ活動でスポーツを行っていると思います。ちなみに私は野球部です(笑)。野球の場合は、市内の高校のグラウンドをお借りして練習していて、ミントを使うのは冬場の練習の時ですかね。
実は2023年には、ミントで赤十字病院スポーツ大会北海道ブロックの開会式を行っています。日本赤十字社北海道支部には10の病院があり、その病院の野球、バレーボール、フットサルの選手と関係者がここに集まりました。スポーツ大会はコロナ禍でしばらく中断していたので、数年ぶりに復活した大会となりました。

――スポーツは職員の方々にも良い効果がありそうですね。

髙松
体を動かすことで、気分転換やリフレッシュになっていると思います。
澁谷
それと、クラブに所属すると院内の様々な職種の人と知り合えるので、結果的に仕事がやりやすくなったり、友達が増えたりと、他にも色々良い効果がありますね。
そのため新入職員の入職式直後のオリエンテーションでは、クラブ活動の紹介をする時間を設けています。ただ新人は、まずは仕事を覚えるのに一生懸命で、最初からクラブ活動にも参加できるような余裕のある人は多くありませんので、慣れてきて少し落ち着いた頃に入ってもらえるような環境を作っています。

オホーツク圏域の救急・災害医療を支える要として

――ホールとしてはどのように利用されていますか。

髙松
ホールとして利用する際、154席の移動観覧席の前にイスを並べれば、200名以上入ることができます。当院主催では、がんや認知症などをテーマにした市民公開講座、医療用ウィッグと乳がん術後の下着・ケア用品の相談会、赤十字安全講習などを定期的に行っています。11月には子供向け手術体験セミナー「ブラック・ジャック セミナー」も開催しました。これらのイベントは、基本的に企画は所轄の部署が担当し、必要な場合は総務課がサポートする形です。
また講演会でいえば、外科、脳外科、緩和ケアなど、様々な北海道支部の学術大会が行われています。
澁谷
それ以外には、専門医資格の講習会でも利用しています。専門医資格の取得には共通講習の受講が必要になるのですが、どの科の専門医も共通している「医療安全」「医療倫理」「感染対策」の講習会を実施しています。どこの施設でも関係する講習会や研修会のときは、連携医療機関にも声を掛けているので多くの方が集まりますね。
これまでは東京や札幌など、わざわざ遠くまで行かなければ受講できなかった講習を、北見市で受講でき、単位を取ることができます。こうした資格に絡む講習もできるようになったことは大きなメリットで、皆さんに喜んでいただいているようです。

――そうした講習会はどこの病院でもできるのでしょうか。

澁谷
どこの病院でもできるといえばできますが、場所の問題に加えて講習をできる講師がいるかも大きいですね。オホーツク圏域でいえば、他でこうした規模の大きい講習会をやっているのは聞いたことがないです。
当院は臨床研修指定病院でもあり、医療人の育成や教育に関する役割は非常に重要だと考えています。そのため講習会の開催以外にも、研修医、看護学生、コ・メディカル、事務職に至るまで、幅広く全職種で見学や実習を受け入れています。
また当院では、救急救命士の教育研修も行っています。2016年には医療機関と消防機関が連携し、救急隊員の実習を行う救急ワークステーションを院内に開所しました。救急ワークステーションの救急隊は、病院が拠点のため医師・看護師が救急車に同乗するドクターカーの運用もできます。以前はドクターカーに乗る研修は、札幌などまで行かないと受けられなかったのですが、当院では実際に医師と看護師が同行してドクターカーの研修を行っているので、非常に喜ばれています。
髙松
また、先ほどお話ししたように当院は北海道災害拠点病院となっていまして、多目的ホール「ミント」は軽症患者さんを受け入れるエリアになっています。軽症なので、ある程度たくさんの患者さんが来ることが想定されるため、ミントの広いスペースが有効ですね。

――北見市、オホーツク圏域の地域医療において、本当に様々な役割を担っていらっしゃるのですね。

澁谷
当院は日本赤十字社が創立した病院ではありますが、創立時には北見市のご支援がありました。また今回の大規模施設整備では、北見市だけではなくオホーツク圏域の多くの市町村からもご支援いただきました。公立病院ではありませんが、“公的”医療機関としての役割を担っているといえます。
その意味で医療連携だけではなく、介護・福祉施設、保健所も含めた行政など、地域の他組織との連携も重要になると考えています。コロナ禍でもその重要性を感じたことがあり、すでに一部ではアプローチも開始しています。今後は地域における当院の役割を改めて認識し、様々な組織との緊密な連携を図っていかなければと思っています。

――北見赤十字病院が北見市だけではなく、オホーツク圏域で非常に重要な存在であり、また地域から期待されていることがよくわかりました。本日はありがとうございました。


取材日:2024年1月

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