スポーツ振興から防災拠点まで、町産材のヒノキやスギでつくりあげた体育館
2024年4月1日、熊本県上益城郡に、山都町総合体育館パスレルが誕生しました。老朽化した旧中央体育館に代わって、地域住民の健康づくりや、スポーツを通して幅広い世代と町内外利用者の架け橋となることを目的とした、新たなスポーツ交流拠点です。2016年に発生した熊本地震の教訓を生かし、大規模災害の際には避難施設及びその救援物資の集積場として活用できるよう、防災拠点としての役割も見込まれています。
施設の設計時から進められてきたのは、熊本県木造設計アドバイザー普及事業を活用した、建物の木造または木質化です。メインアリーナと武道場兼多目的室の印象的な屋根架構には、町産材のヒノキがふんだんに使われました。メインアリーナの観覧席にもヒノキやスギが用いられ、山都町らしさが随所から感じられる体育館に仕上がっています。
展開・収納が可能な移動観覧席は、フレキシブルに活用でき視界も良好
メインアリーナ1階の観覧席は、コトブキシーティングの
移動観覧席です。4ブロックからなる移動観覧席は、普段は壁面にすっきりと並ぶように収納されており、専用レバーを使用して段を引き出すことで、ひな段状の客席を手動で展開することができます。両サイドに手摺とカーテンを設置すれば、完了です。電気を動力としないため、非常時も含めいつでも最小限の手間で短時間での設営が可能。スポーツの大会やイベントの際に客席を展開し、日々の練習場所や避難所として利用する際には壁面にすっきりと収めるなど、フレキシブルに使える点が大きなメリットです。7列がひな段状に展開されるため、前に座る人の頭に視界が妨げられることなく、快適に過ごすことができます。
席数は、地域のイベントで使いやすい規模で計画されました。観客席は長手方向片面に並んでおり、1階の移動観覧席は343席、2階の固定席は202席の計545席。座る人が間隔を自由に調整できるベンチタイプです。家族でコンパクトに寄り添って座ったり、隣と距離を開けたり、催しや混雑状況に合わせて柔軟な対応が可能です。移動観覧席のベンチは町産材のヒノキで製作されており、木目や節がよく見える装いから、木の温もりと美しさを感じることができます。
施設概要
山都町総合体育館パスレルは、町内の既存体育館の老朽化を背景に建設された、新たな地域スポーツの拠点です。防災機能も備えており、災害時には、避難施設及びその救援物資の集積場としての役割も果たします。メインアリーナ、武道場兼多目的室、トレーニング室、会議室、ボルダリングウォールなどが並び、メインアリーナの2階にはランニングロードも設置されるなど、幅広い年齢層の町民がスポーツを楽しむことができます。施設内には町産材のヒノキやスギがふんだんに使用されており、第30回熊本県木材利用優良施設コンクールにおいて、熊本県森林組合連合会賞を受賞しました。オープニングイベントには大人から子どもまで多くの町民が集まり、元プロ選手によるバレーボール教室や講演会、スポーツ・カルチャー体験会、トレーニング室体験会が賑やかに行われました。