美祢市の新たなシンボルとなる庁舎
現在の美祢市が誕生したのは、2008年。当時の美祢市、美祢郡美東町、秋芳町の1市2町が合併し発足しました。以来、老朽化していた庁舎の整備計画が進められ、2023年11月に新しい本庁舎での業務がスタートしました。
地上3階建ての本庁舎は、市民サービスの充実とコンパクト化を両立させ、施設のセキュリティ対策やデジタル化への対応、バリアフリーやユニバーサルデザインにも配慮された建物です。
「市のシンボルになるような、市民に愛される庁舎」という設計コンセプトのもと、建物全体に美祢市特有の材料が取り入れられました。美祢市産の材木である美秋材
※は、ロビーの天井と屋外庇下のルーバーのほか、ベンチやカウンターなどの造作家具や建具の一部にも使用されています。本庁舎3階に位置する議場の家具にも、美秋材のヒノキが採用されました。
多目的利用やバリアフリーに配慮したフラットな議場
本庁舎の議場は「議会と市民がつながる一体感のある庁舎」を基本方針のもと、開かれた議会を目指してつくられました。
多目的な利用ができるように段差の無いフラット形式な床とし、議場家具は議長席や傍聴席を含め、すべて可動式を採用。必要に応じて動かせる家具にしたことで、議会以外の式典やイベントに対応できる空間となっています。
議員席と執行部席の机は折りたたみ式です。天板下のロックを外すと、側板、天板の順に折りたたむことができます。たたんだ時の奥行は、使用時の半分以下。限られたスペースにも収納できる、コンパクトな設計です。脚部にはキャスターが付いており、1人でも簡単に動かすことができます。手前のキャスターはストッパー付きのため、使用時は安定感がありぐらつきません。
議会用イスは、座り心地と利便性を兼ね備えた
AC-3700シリーズです。背と座のウレタンフォームクッションをブラックのビニールレザーで張り包んだシックなデザイン。肘掛けには優しい手ざわりの天然木の美秋材を使用し、温かみを添えました。議長席、議員席、執行部席のイスすべてにキャスターが付いており、手軽に移動することができます。
対面演壇で議員が一般質問を行う発言席の机も可動式です。これらの議場家具には、随所に美秋材が使用されています。美祢市産ヒノキの美しい木目が、同じく美秋材を取り入れた空間にしっくりとなじんでいます。
出し入れができる傍聴席と記者席を導入
こちらの議場の大きな特徴は、傍聴席として
移動観覧席が導入されたことです。移動観覧席は収納と展開ができる階段状の客席で、フレキシブルな空間活用を可能にする製品です。電動式と手動式がありますが、コストをはじめとしたさまざまな面を考慮し、手動のタイプが選ばれました。
観覧席は、本体を収納する「全収納モード」、前2列のみ展開する「中間段モード」、すべての席を展開する「全展開モード」の3段階を設定することができます。議会開催時には「中間段モード」にし、傍聴席と記者席として利用します。一方、「全収納モード」で観覧席本体を壁面に収納し議場家具をすべて収納すれば、広々としたフラットな空間が出現します。
こちらの議場では議会以外にも、功労者表彰などの式典、戦没者追悼式、子ども議会、中学生の立志式といったイベントが定期的に行われています。コンサートを開催した際には、議場家具の代わりにスタッキングチェアを並べ、観覧席を「全展開モード」に設定。約130席のホールとして使用しました。
市民から新しい議場を利用したいという声も増えており、多目的に使える開かれた議場として活用が期待されます。
※美秋材 … 山口県美祢市及び美東町・秋芳町、その周辺地域で育てられたスギやヒノキなどの木材。
施設概要
山口県美祢市では、老朽化や耐震性などの問題から60年以上経過していた本庁舎を建て替え、2023年11月から新庁舎の運用を開始しました。地上3階建ての新庁舎は、自然豊かな美祢市のジオカラーである赤・白・黒色を基調としたデザインで、美祢市産の木材である美秋材が多く使われています。市民が多く利用する窓口部門を低階層に集約し、改修した3階建ての別館と渡り廊下で繋ぎ、本館に設置したエレベータで段差なく行き来するなど、誰もが利用しやすい庁舎を実現しました。また、地震や水害にも備えた防災拠点としての機能も強化。庁舎からは、すぐそばを流れる厚狭川沿いの桜並木が一望できます。
インタビュー

開かれた議会と空間の有効活用を目指し
議場に移動観覧席を導入