かつしかシンフォニーヒルズで開館以来の大規模なリニューアルを実施
2021年10月、東京都葛飾区のかつしかシンフォニーヒルズが、リニューアルオープンしました。1992年の開館以来の大規模改修を経て、長年の利用にわたる経年劣化が、装いも新しく生まれ変わっています。
ホールの特定天井改修時に行う客席のイスの取り外しに合わせて、座席の修繕を実施。開館時に納められたイスが、現在はコトブキシーティンググループの一員となったフランスの
キネット・ギャレイ製であったことから、コトブキシーティングがリニューアルを担当しました。
開館時から大切に使われて来た、フランスで生まれたイス
アイリスホールは、総席数298席とモーツァルトホールに比べて小ぶりながらも、シューボックス型のオープンステージ形式により、舞台と客席に一体感を生み出します。ピアノや室内楽に最適なホールですが、床可変機構も備わっており、座席を格納して床を舞台として利用したり舞台を床面まで下げて客席スペースに変えたりすることによって、多彩な催しに対応します。
同ホールのイスは、腰から背中にかけて緩やかに広がっていく背もたれや、座裏に施されたドットのデザインが特徴的です。背もたれの立体的なクッションと、奥行のある座面により、すっぽりと包まれるような座り心地です。座の下中央部に設置した1本の脚はすっきりとした佇まいで、足元のスペースにもゆとりを生み出します。
補修や修繕を行うことで、永く使い続けられるリニューアルに
リニューアルは、可能な限り既存の部品をリユースする方針で進みました。天然木がふんだんに使われた背もたれや座裏、肘枠は、木部の傷を補修。丁寧に研磨して再塗装することによって、新たな装いへと生まれ変わりました。
クッションを包んでいたモーツァルトホールと色違いのファブリックは、経年劣化が激しかったことから、コトブキシーティングのグループ会社である
FABRIKOがデザインした特注張地へと更新。デザインのテーマ、は葛飾区に流れる江戸川、中川、荒川などの川、区の花である花しょうぶ、そして音楽。これまでは落ち着いたグレー系の張地でしたが、鮮やかな花しょうぶ(アイリス)の色を連想させる青みを帯びたグレー色へとホール空間を華やかに印象づけています。中のウレタンも補充し、座り心地も快適に蘇りました。他にも、機構部品や足下灯、ナンバープレートを新しいものへと交換しました。
施設概要
1992年オープンのかつしかシンフォニーヒルズは、1,318席のモーツァルトホールと298席のアイリスホールを中心に、ギャラリー・カフェテリアなどの機能を持つ本館と、会議室・視聴覚室などを備えた別館から成る、複合文化施設です。本館前にあるモーツァルト記念像は、オーストリア共和国の許可を葛飾区が世界で唯一受けたことを示す、ウィーン市王宮庭園に建つ実物大の複製であり、施設のシンボルとなっています。長年利用されてきた二つのホールは2021年10月、天井や座席、照明などの改修を経て、リニューアルオープンを果たしました。