京都市立芸術大学の新たなホールが誕生
2023年秋、京都市立芸術大学がJR京都駅の東部エリアにキャンパスを移転しました。新たに建設された「堀場信吉記念ホール」は、13年間にわたり同大学音楽学部の前身である京都市立音楽短期大学の学長を務めた堀場信吉氏が京都市の音楽教育へ大きく貢献したことを称え、名付けられました。
ホールの形は、音響性能に優れたシューボックス型です。音響反射板を設置したエンドステージ形式のほか、舞台幕を設置したプロセニアム形式にも転換することができます。席数は以前のホールから300席増えた800席。入学式や卒業式などの式典のほか、学内リサイタル、修士演奏、オーケストラ協演の夕べ、大学院オペラ、卒業演奏会など様々な催しに利用しやすいキャパシティです。
客席から舞台までが一続きになった一体感のある客席、見やすいサイトラインも確保
ホールは、1層目から2層目までがワンスロープで繋がっています。2層目の客席後方にはホワイエと呼ばれるゆとりのある空間があり、ここには3層目と行き来できる階段も備わっています。客席全体がドアで仕切られることなく一続きになった、特徴的な構造です。全てが繋がっていることから、歩行時の音や振動に配慮し、客席内の通路部分はカーペットで仕上げられました。
客席は、着席時に前席の人の頭部で視線を遮られにくいサイトラインを確保した、1列目から後方にいくにしたがって段差が大きくなるすり鉢状の形式です。中央ブロックには千鳥配置も採用しました。
1層目の最前列から4列は、必要に応じて動かせる移動席とワゴン席です。床は迫りとなっており、上昇させると舞台が拡張し、下降させるとオーケストラピットとして使うことができます。
車椅子スペースは、2層目のバルコニー席と通路で繋がる左右の高い位置に設定され、見やすさは抜群です。2・3層目のバルコニー席には、1席ずつ独立したイスが腰壁にぴったり沿うように設置されており、舞台との距離を最大限に縮めています。通常は左右両側にある肘当ても、通路側のみとしました。
意匠性と機能性を兼ね備えたオリジナルのイス
イスは、堀場信吉ホールのためのオリジナルデザイン。美しさと機能性を兼ね備えた、直線を基調としたシンプルかつモダンな装いです。
着席姿勢をサポートする背もたれは、人の背骨に沿う縦のS字カーブと、背中を抱くような横のわずかなカーブによる、三次元曲面の成形合板です。背もたれの下部には、空調の吹き出し口から出る空気をコントロールするための金物を設置しました。クッションは、正面から背板が見えないよう際に揃えた大きさで、それを包み込むたっぷりと使われた張地が、イス全体に柔らかなイメージを与えています。
座には、体圧を適度に分散させることで長時間の着座でも快適性が持続する、コトブキシーティングオリジナルの波形スプリングを内蔵しました。離席すると自動で緩やかに跳ね上がる座緩起立機構が備わっており、ホール内の静寂を保ち、空席時には広い通路スペースを生み出します。隣席との仕切りにもなる肘当てと、通路に面したイスに設置した木製の脚パネルは積層が美しく見えるクリア塗装仕上げです。
木そのものの色や木目を生かしたナチュラルな風合いの木部と、客席全体にランダムに配置された織り方の異なる2色のグレーの張地は、繊細な木パネルのホール壁面と相まって、心が静まるような幻想的な空間を創り上げています。
演奏をワンランク高めるオーケストラチェア
ステージには、
オーケストラチェアFC-701Nが120脚用意されました。プロからアマチュアまで幅広い演奏家に親しまれる、演奏のしやすさを追求したコトブキシーティングのロングセラー製品です。安定した演奏を支える適度な重さ、演奏時の身体の動きを邪魔しないフラットな座面、演奏家を引き立てるブラックカラーなど、通常のスタッキングチェアとは一線を画したオーケストラチェアは、未来のアーティストたちの演奏をサポートします。
施設概要
明治13年創設の日本初の公立の絵画専門学校「京都府画学校」を起源とする京都市立芸術大学は、創立143年目を迎える2023年、JR京都駅の東部エリアに全面移転しました。新キャンパスのコンセプトは「TERRACE(テラス)」。心も身体も開放感があり、日常とは少し違った視点から物事を見渡すことのできるテラスのような空間です。京都市の中心部でありながら自然の息吹も感じられる新キャンパスには、三つの地区に10棟の校舎が建ち、教育研究に必要な各種設備や機能に加え、音楽ホールやギャラリー、芸術資料館など芸術大学に相応しい設備が整えられました。