クラシックから歌舞伎やポップスまで幅広い演目に対応する2,000席超の大ホール
秋田県民会館と秋田市文化会館の老朽化による閉館を受け、2022年6月、「あきた芸術劇場ミルハス」が開館しました。県と市が連携し共同整備を行い、整備費などのコスト削減や機能集約による施設の高機能化を実現。解体された旧秋田県民会館の客席のイスは秋田県児童会館子ども劇場に移設されており、県と市が各施設の歴史を大切に受け継ぐ姿勢が伺えます。
大ホールは、クラシック、歌舞伎、オペラ、ミュージカル、ロック、Jポップの公演など幅広い演目に対応できる音響と舞台設備を備えています。ホール中央の天井には、組子をモチーフに仕切られた白く大きな照明兼音響反射板が浮雲のように漂っており、秋田杉で製作された内壁の木レンガの凸凹と合わさって、豊かな響きを創り上げます。客席数は、約1,800席を有した旧秋田県民会館の後継にふさわしい2,007席です。
秋田らしさをデザインで体現した特別なホールイス
2層から成る客席に並ぶのは、コトブキシーティングの
劇場・ホールイス 「Cadenza カデンツァ」TS-71シリーズをベースにカスタマイズを施した、あきた芸術劇場ミルハスのための特別なイスです。秋田の伝統工芸の技法を彷彿とさせる滑らかなカーブが特徴のホール内装に合わせて、背板や肘当てを丸みのあるデザインにトリミングしました。また着席者の背中にフィットするようS字を描いた背もたれが、客席全体を柔らかい印象に仕上げています。座には型崩れしない高密度のモールドウレタンのクッションと波形スプリングを内蔵しており、体圧を分散することによって長時間の鑑賞でも疲れにくく快適な座り心地です。
張地は、コトブキシーティングのグループ会社である
株式会社FABRIKOがデザインを具現化し、製作を行った特注品。秋田竿燈まつりの提灯をモチーフに、秋田の伝統文化や自然のイメージを重ねて織り上げました。木部はダークトーンに塗装することによって、張地の美しさを際立たせています。張地の詳細については、
こちらをご覧ください。
ホールの至る所で感じられる、誰にでも優しいバリアフリー仕様
1階1~4列目と5~6列目下手側の一部のイスは、オペラやミュージカル公演の際にオーケストラピットを設営したり、演出に合わせて花道を設置したりできるよう、取り外しが可能な移動席です。客席は4列目以降が階段状になっており、10列目と11列目の間には大きな横通路があります。車イススペースは、この横通路からスムーズに出入りができる10列目の下手側に常設で2席設置されました。このスペースで足りない時には客席後方などの移動席を動かし、最大36席を確保できます。
9列目と客席後方の移動席1列分は、通路側の席の肘掛が跳ね上がるバリアフリー仕様です。車イス利用者が客席のイスに座る際に、肘掛を跳ね上げ、車イスの座面から客席イスの座面へとスライドして移乗ができます。背丈の低い子供向けにはチャイルドクッションが常備され、客席後方には乳幼児連れの家族が気軽に舞台を楽しめる多目的室にソファタイプの
親子鑑賞席が設けられるなど、来館者の誰にでも優しいつくりです。親子鑑賞席にも客席と同じ特注の張地を用い、ホール全体の印象の統一を図っています。
中央ブロックには千鳥配置が採用され、前に座る人の頭で舞台が隠れないようサイトラインを確保。離れた位置からでも席を探しやすいよう、背板の裏側には列番号を大きく記し、意匠の観点から掘り込み式にした座席のナンバープレートには点字も表示しています。
客席後方には、公演時にPA卓を設営できる背倒れ席が並びます。全国の劇場で導入されているオーケストラチェアも、演奏者用イスとして採用されました。観客に留まらず上演するカンパニーやスタッフにも優しいイスが揃っています。
施設概要
あきた芸術劇場ミルハスは、長年に渡って秋田の文化の発信拠点を担ってきた秋田県民会館と秋田市文化会館の老朽化を受け、2022年6月に誕生しました。県と市が連携し共同整備を行い、整備費などのコスト削減や機能集約による施設の高機能化を実現した、全国的にも珍しい文化芸術施設です。外観は敷地である久保田城址の歴史と隣にある千秋公園の豊かな自然にも調和しており、大ホールと中ホールのほか、二つの小ホールと練習室、研修室、創作室を備えています。館内の随所には秋田杉が随所に用いられ、曲げわっぱや組子細工など伝統工芸品・伝統技術の意匠で秋田らしさを表現しています。