イーストピアみやこ(宮古市本庁舎)
宮古市議場

2019.07.04
議場

施設説明

本州最東端の市に誕生した「イーストピアみやこ」

世界三大漁業の一つである三陸沖や、緑豊かな自然環境を持つ岩手県宮古市。東北地方の各地に大きな爪痕を残した東日本大震災は、この町にも大きな被害をもたらしました。宮古湾近くに流れる閉伊川の河口側にあった市役所も被災。庁舎の2階部分にまで津波が押し寄せ、建物の一部は機能を失いましたが、いち早く敷地内にプレハブを建てて業務を続けてきました。その後、被災した庁舎の老朽化(耐震性能不足)を考慮し、建て替えが決定。場所は、東日本大地震の津波で被害を受けなかった市内中心部、宮古駅のすぐそばです。

新たな庁舎は、本州最東端のまちという立地に由来するeast(東)に、親しく呼びやすい名称を組み合わせて「イーストピアみやこ」と名付けられました。庁舎機能だけでなく、市民交流センターと保健センターを融合した、複合施設です。庁舎が設けられたのは、イーストピアみやこの中央部。庁舎と市民交流センターを仕切る壁の上半分はガラスになっており、庁舎職員と市民が常にお互いを感じられるオープンなつくりです。

見やすく使いやすい議場空間

議場は市本庁舎の5階にあります。各所から自然光が入り、厳かな中にも柔らかさを感じられる新たな議場は、主に三つのポイントにこだわってつくられました。

一つ目は、各席の配置です。従来の議場では、片側に議員席と傍聴席が、その向かい側に行政幹部席が設けられており、傍聴席に座る市民からは議員の表情を見ることができませんでした。そこで今回は、両サイドに行政幹部席と議員席を向かい合って並べた「対面型」を採用しました。議長席は、それぞれが見やすい議場正面の壁側に設置。傍聴席はその議長と向かい合うよう、またいずれの席もよく見渡せるよう、一段高い位置に設置しました。

二つ目は、この傍聴席エリアの高さです。議場と傍聴席のフロアレベルの差が大きかった従来の議場では、傍聴席に座っていても遠くから眺めているように感じられました。その差を程よく縮めることで、議会に参加しているような傍聴席エリアをつくりだしました。

三つ目は、議場机を置き式にしたことです。議場家具は床に固定することが多いですが、今回はあえて固定をせず、フロアに置くだけに留めました。これは、いざという時には家具を動かして、議場空間を他の用途に利用するためのアイディアです。より動かしやすくするため、家具にキャスターをつけるかどうかと検討を重ねましたが、動かす頻度と意匠を考慮し、置き式としました。

議員も行政幹部職員も傍聴する市民も、心地良く座れる席づくり

コトブキシーティングでは、議場イスと傍聴席を納入しました。

張地を多く使った議場イスは、議場の柔らかな雰囲気に馴染みます。背にも座にも、たっぷりのウレタンフォームクッションを用いました。長時間の議会でも快適に座れるよう、適度に硬さのあるウレタンフォームに仕上げてあり、しっかりと身体を支えます。肘当てには、議場机に合わせた天然木をあしらいました。真っ直ぐで平らな肘当てのラインが柔らかなイス全体の印象を引き締め、議場にふさわしい品格を与えています。グレーの張地は、宮古湾の海をイメージしたブルーのカーペットを鮮やかに引き立てます。

53席ある傍聴席は、固定式のイスです。人の背骨のS字カーブに沿うようなラインに加えて、身体を包むように僅かに抱きをつくった三次元局面の背板は、着席者の身体にしっかりとフィットします。座は、堅牢な鋼板プレス性の座枠に、改良を重ねた波形スプリングと、型崩れしない高密度のモールドウレタン成形品のクッション材を使用。長時間におよぶ議会の傍聴でも快適に過ごせます。木部と張地のカラーは、議場イスに合わせてコーディネートしました。350ミリメートル設けた床の各段の段差は、後ろの席に座っても前に座った人の頭部で視線が遮られる心配が少ない寸法です。車イス席や報道関係者席も設け、市民の誰もが気軽に傍聴できる環境を整えました。

この新たな議場から、宮古市の明るい未来が創られていくことが期待されています。

居室データ

所在地
027-8501 岩手県宮古市宮町1-1-30 地図
施主
宮古市
設計
株式会社久米設計
オープン
2018年10月
席数
106
※うち、傍聴席53席
関連リンク
  • イーストピアみやこ webサイト