2018年10月にオープンした、地域防災拠点施設「イーストピアみやこ」
東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県宮古市。被災した市役所は復旧し、また業務を続けていましたが、震災から7年半経った2018年10月1日、待ちに待った庁舎機能を含んだ新施設が開館しました。
新たな庁舎は、市民交流センターと保健センターとの複合施設です。市民に親しみを持ってもらえる施設になるよう願って付けられた愛称は、「イーストピアみやこ」。本州最東端のまちという立地に由来するeast(東)に、親しく呼びやすい名称を組み合わせています。宮古駅前から直通の自由通路(クロスデッキ)を設け、利便性も抜群。震災の経験を基に、災害発生時には災害対応拠点として、そして被災者支援の拠点として機能するよう、各種設備を備えました。
市民交流センター2階の多目的ホール
イーストピアみやこは、6階建て。市民交流センターは、その1~2階に位置しています。市民の交流や活動を応援するスペースに加えて、東日本大震災の教訓と復興の歩みを展示した防災プラザや、市民が自由に集えるようにテーブルやイスを用意したオープンスペースの交流プラザ、そして講演会や発表会に利用できる多目的ホールを備えています。
多目的ホールはクロスデッキにも近い、2階フロアにあります。通路に面した壁の一部は大きなガラス張りのため、多目的ホールの外からもホールの様子がよく見え、センター全体へ賑わいを生み出しています。
市民交流センターのホールは、一般市民が利用しやすい最大180席のキャパシティです。客席は、さまざまなイベントや市民活動に多目的に使用したいという当初からの目的を果たすため、任意で客席を展開・収納できる移動観覧席が採用されました。ステージも必要に応じて収納ができるため、多様な用途でのホール活用が期待されています。
操作のしやすさを一番に考え選び抜いた、フルオートタイプの移動観覧席
移動観覧席の展開・収納操作は、リモコンを使うフルオートタイプと、専用の操作レバーを扱うマニュアルタイプが存在します。イーストピアみやこでは、いくつかの他の施設の視察を経て、誰にでも簡単に操作ができるフルオートタイプの移動観覧席を導入することに決まりました。フルオートタイプでも、客席サイドの手摺など一部のパーツは人力での設営が必要な場合がありますが、操作を極力簡単にするために検討を重ねた結果選ばれたのは、手動の作業がほとんど不要なシンプルな移動観覧席。収納した時に壁面と一体に見えるように取り付ける前幕板はなし、手摺も電動で折りたたまれます。手動の操作は、フロアから1段目に上がるための回転式ステップの出し入れのみとなり、力仕事が得意でないスタッフでも、数分で144席の客席を設営できるようになりました。
白木のフローリングとモノトーンの内装に合わせ、移動観覧席の各段の床カーペットやイスも黒色に揃えました。黒は、イベントの暗転時には存在感を感じさせず暗闇に溶け込み、講演者や演者のいるステージを引き立ててくれる効果もあります。1段あたり250ミリメートルの段差は、前に座る人の頭部でステージが見えないという心配がなく、最後列からでも良好な視界を確保できる高さです。どの席に座っても快適な鑑賞環境を実現しました。
移動観覧席に搭載した144席のイスは、スタンダードタイプ。着席時は広い背座で着席者の身体をしっかりと支え、離席時はコンパクトになるため、通路を広く確保できます。張地には、三次元ニット製法により中間に空気層を持つ高耐久性立体メッシュを採用。通気性が良く、年間を通して快適な座り心地を保ちます。
オープン以来、講演会・シンポジウム・映画鑑賞会・日本舞踊の練習や発表会・地元の若者によるイベントに加えて、各種式典や集会など、幅広い用途で毎日のように多くの人が集っています。