次世代教育を見据えた新キャンパスで
グローバルリーダーを育てる「最優の進学校」を目指す

2023.06.20
インタビュー
進学校として難関大学にも実績を残してきた高槻中学校・高槻高等学校は、2010年の創立70周年を機に様々な学校改革に着手しました。文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)及びスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定校となったほか、男女共学化も実現し、それに伴うハード面の整備を行いました。それが創立80周年の2020年3月に全館が完成した新キャンパスです。
新キャンパスの設計コンセプトは「グローバルリーダーの育成 ~志を育む空間~」。高槻中学校・高槻高等学校の学びの軸となる「グローバル教育」と「先端サイエンス教育」を推進する校舎として、本館に「グローバル教育」、南館に「サイエンス教育」に関する施設を集約し、その二つをつなぐ中央に同校を象徴する施設である図書館やコナコピアホールを配しています。コナコピアホールは最新の音響・映像設備などを備えた約300席の講堂で、生徒の探究学習の成果を披露する発表の場として重要な役割を担っています。
今回のインタビューでは、高槻中学校・高槻高等学校教頭の平沢真人氏と事務部課長の佐塚琢司氏のお二人に、新キャンパスの整備目的やコナコピアホールの活用状況などについてお話を伺いました。


学校法人 大阪医科薬科大学
高槻中学校・高槻高等学校
教頭
平沢 真人 氏


学校法人 大阪医科薬科大学
高槻中学校・高槻高等学校
事務部課長
佐塚 琢司 氏

特色ある教育を実現するために新キャンパスを整備

――新キャンパスを整備するに至った経緯についてお聞かせください。

佐塚
一つは学習指導要領が変わって探究活動が軸になり、それにふさわしい施設・設備が求められるようになったことです。本校では探究活動として課題研究に10年ぐらい前から積極的に取り組んできましたが、個人やグループで色々と調べて研究して、発表するという活動が中心になるため、それに適した施設を必要としていました。
もう一つは、2017年中学入学生から男女共学になったことです。本校は1940年に創立して以来長らく男子校だったのですが、男女共同参画社会という時代の流れに加えて、地域の要請等もあり共学になりました。2023年3月に初めて女子生徒が卒業しました。
また、法人合併も契機になっています。2014年に同じ高槻市内の学校法人大阪医科大学と法人合併し、その2年後にはさらに学校法人大阪薬科大学との法人合併も行い、現在は学校法人大阪医科薬科大学となりました。実は今回1期工事で建てた南棟は、以前大阪医科大学の校舎があった場所なのです。大学の施設が本部キャンパスに集約されたために使われていなかったので、取り壊して中高の施設として建て直しました。法人全体としては、土地の有効活用にもつながっています。
こうした要素がすべて重なったことで、今回の新キャンパス整備が実現しました。

――新キャンパスには特徴のある施設がたくさんありますね。

佐塚
本校の探究型の学習は、「調べる・研究する・発表する」が基本となるため、各段階に応じて利用できる施設を整備しています。例えば調べるための図書館は、中学・高校の図書館としては関西最大規模を誇り、蔵書は約6万7000冊に及びます。研究であれば、理科の場合は実験がメインということで、南館1階に理科教室7室が並ぶサイエンスストリートを整備しました。廊下壁面は全面ホワイトボードで、ポスターを貼って発表できるようなスペースになっています。
そして、最後の発表の場となるのがコナコピアホールです。発表する人と聴く人の距離をなるべく縮めたいという思いがあり、円形にしました。ステージを囲むように階段状の席が配置されていることで後ろの席でも見やすく、ホール全体の一体感も高まっています。
実はこの考え方は普通教室でも同じです。一般的には正方形か、やや縦長の教室が多いと思いますが、新校舎では教壇から後ろの席までがなるべく近くなるように横長の教室になっています。

生徒にとって重要な発表の場となるコナコピアホール

――高槻中学校・高槻高等学校では、発表することをとても重視されているようですが。

平沢
探究活動はどれだけ発表の場を提供できるか、ということが非常に重要になります。教室で40人ぐらいの前で発表することは普通にありますが、大学生や社会人になればもっと大勢の前で発表することがあるはずです。コナコピアホールは、そんなときにも堂々と発表できるように生徒が経験を積む場になっています。
コナコピアホールという名前は校長がつけました。収穫と平和の象徴である「豊穣(ほうじょう)の角」を意味し、このホールが生徒たちの学びの成果で満たされて欲しいという思いで名付けられています。

――生徒さんの発表はどのようなときに行われるのでしょうか。

佐塚
大きなものとしては、毎年2月に全校規模の課題研究発表会があります。高1と高2の生徒によるポスター発表とスライド発表があり、コナコピアホールはもちろん、体育館、グローバルセミナールームA、多目的アリーナなど、使える会場はフルに使います。これらの発表は中学生も見ることができるので、将来、自分がどのような研究をしたいか考える機会にもなっています。
平沢
本校は中学3年生からコース制になります。そのコース選びのためにも、先輩たちが各コースで1年間取り組んできた課題研究の成果を聞いてもらっています。ポスタープレゼンテーションではポスターの前で後輩たちに説明をし、コナコピアホールでは代表者が舞台上で大きなスクリーンを使って発表します。こうした緊張感のある経験をしているため、本校の生徒たちは校外での発表も立派にやっていますし、賞もたくさんとっています。
もちろん、中には発表が苦手という生徒もいます。けれども友達がやっているのを見ているだけ、聞いているだけでいいのです。いつか自分がやらなければならなくなったときに、きっとその経験が役に立つと思います。

――コナコピアホールでは、外部の方を招いたセミナーなども開催されていますね。

平沢
教育の現場は変化し、今は「探究活動」が中心になっています。それも「究」は「求める」ではなく研究の「究」ですよね。本校が探究活動を行っていく上で特に意識したのは、最新の研究や本物に触れることです。そこで高大連携プログラムにより、同一法人の大阪医科薬科大学をはじめ色々な大学や研究機関の方々にご協力いただき、専門家によるセミナーや研修を数多く開催しています。本校の大きな特徴と言えます。

――300席という規模はどのような理由で決められたのでしょうか。

平沢
1学年が約270人で、270人プラス教員も入れるようにということで約300席にしました。やはり学年集会など、1学年で集まる行事で使うことが多いからです。その際、コナコピアホールはイスを並べずに済むのがありがたいですね。今回入れていただいたイスは座り心地が良いので、長時間でも生徒が落ちついて話を聴いていられます。またイスには筆記台が付いているので、メモをとるほかにタブレットを使った授業でも対応できます。
それと、前方4列を移動式のイスにしたことで用途が広がりました。座席の方に向けてイスを置けば対面式の使い方もできますし、片付ければ空間ができます。先日の軽音楽部のコンサートでは、ステージと前の空間を使って生徒が演奏をしていました。

――コナコピアホール以外にも大勢で集まれる場所がありますが、使い分けはどうされていますか。

佐塚
多目的アリーナのイスは移動観覧席なので、観覧席を出せば集会もできますし、収納すれば平土間になります。壁に鏡が設置してあるので、ダンスの授業やクラブ活動の練習でよく使っており、今のところ集会より運動で使うことの方が多いです。グローバルセミナールームAはやはり1学年約300人が入る規模です。大学の大教室のようなイスと机があり、教材を広げてノートを取ることができるので、しっかり勉強するようなときに使っています。コナコピアホールのイスも筆記台がありますが、プリントを広げたりするには狭いので、発表や講演を聴くのがメインになりますね。
複数ある理由としては、本校は6学年あり、一カ所だと取り合いになってしまうからです。生徒や保護者を集めて行う学年行事は時期がかぶることが多く、またホームルームは金曜日6限目、保護者集会は土曜日午後と決まっているため、単純に言えば6週間に1回しか使えないことになります。新キャンパスの検討をする際に、教員から学年で集まれる場所が一つしかないので増やして欲しいという声があり、それに応えた形です。

写真 上:多目的アリーナ/下:グローバルセミナールームA

志を育む学習環境が実りある探究的な学びを支える

――新しい校舎になり、入学希望者が増えましたか。

平沢
はい。本校はこの5年間、関西でも非常に志願者が多くなっていますが、その理由の一つが校舎だと思います。私も新校舎になって、学習環境はすごく大事だなということを実感しています。例えば、本校では図書館で走ったりする生徒はいません。環境に応じて生徒たちの行動も変わってくるのです。
校長がよく言っていますが、今はもう日本の中で偏差値を競い合っている時代ではありません。自分の持っている能力を生かし世界中の人たちと切磋琢磨する時代であり、その中でも通用する生徒を育てるのがこの学校の目標です。その意味で生徒には、大学にも研究者として行ってほしい。そして大学での論文作成や発表にもすぐに対応できるように、ここで探究的な学習をしっかり身に付けてほしいと思っています。

――とはいえ探究活動の授業に加えて、大学受験にも対応しなければいけませんよね。

平沢
そうですね。これは本校が6年一貫教育だからできることだと思います。中1、中2で中学の学習はほぼ終わり、中3から高校の学習に入るカリキュラムになっていて、高3では受験の演習中心になっていますから。
ただ、探究活動を軸にした学習を行ってきた結果、最近では国公立大学をはじめ推薦入試による合格者が増える傾向にあります。推薦入試で合格する生徒は、中学・高校時代にどんな学びをしてきたかということを、きちんと自分で語れる生徒です。自分は今までこんなテーマで勉強してきて、だから大学でこんな学びをしたい。そしてその成果を社会、世界にこう還元していきたいと人に伝えられる生徒なのです。そういう意味で、受験勉強以外のプラスでやってきた学習が役立っています。

――確かに大学もそういう学生が欲しいと思います。探究活動の成果がしっかり出てきているのですね。

佐塚
私立学校としての特色を前面に出した教育が、少しずつ結果となって現われています。最近では大阪府内のSSH指定校および理数教育に力を入れる学校が参加する「大阪府生徒研究発表会」で2年連続最優秀賞を受賞しました。ほかにも様々な発表会で入賞しています。また、大阪医科薬科大学の教授との共同研究で、国際学会で賞をいただいた生徒がいたのですが、その生徒は京都大学に特色入試で合格しました。
本校のポリシーの一つに、「幅広い知識と高い学力、課題解決力を身に付け」とありますが、このキャンパスはまさにそれを具体化するためのものです。本物に触れて色々なことにチャレンジしてみたいという生徒には、最適な学校であり施設だと思っています。
平沢
本校が目指す「最優の進学校」は、生徒だけではなく私たちに与えられた使命でもあります。最優であれば、学力的なレベルをあげるのは当然のことで、それプラス何を学ぶかです。そして「プラスの教育」をしようと思うなら、教室以外の「プラスの施設」がどうしても必要になります。
その意味で施設は整いましたので、これからは生徒たちに刺激を与え、自ら学びたいと思わせるような環境を整えていくことも大事です。その結果、持続可能な平和な社会のために自分たちが学んだことを生かしたいと思うような、志の高い次世代のグローバルリーダーが育っていって欲しいと思っています。

――6年間の探究的な学びを経て成長した生徒さんたちが、今後様々な分野で活躍されることを期待しています。本日はありがとうございました。

取材日:2023年3月

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