新たな学びやコミュニケーションが期待される
多目的な利用が可能な視聴覚室

2022.10.06
インタビュー
東京都立府中東高等学校は、2021年度に創立50周年を迎えた全日制普通科の高等学校です。1学年8クラス、全校生徒900人を越える大規模校で、これまで16,000人を超える生徒が卒業しました。ICT機器を活用した授業やアクティブラーニングの授業に積極的に取り組むとともに、「部活動充実校」を標榜し、学問と部活動の相乗効果で人間形成を図る「文武不岐」を目指しています。
2020年には待望の新校舎が完成、都立高校でも屈指の広さを誇るキャンパスに充実した学習環境が整えられました。新校舎は、体育館をはじめすべての教室に空調設備が整っており、明るく清潔感のある教室で快適に学ぶことができます。また教室以外の施設も充実しており、その一つが移動観覧席を備えた視聴覚室です。同校の移動観覧席は本体を壁面内の専用スペースに収納可能で、収納時は広い空間を多目的に利用できる点が特徴です。またフルオートタイプのため、本体の収納・展開、イスの起立はすべて電動で操作できます。
このインタビューでは副校長の鷲ノ上亮一氏に、視聴覚室の活用状況や効果などについてお話を伺いました。
 

東京都立府中東高等学校
副校長
鷲ノ上 亮一 氏

1学年で集まりやすい多目的室の必要性


――新校舎の視聴覚室には弊社の移動観覧席を導入していただきました。新しい視聴覚室はいかがでしょうか。

学校の視聴覚室は、天井の高さは普通教室と同じで、やや広い長細い形が一般的だと思います。床が平坦な大学の大講義室をイメージしていただければ良いでしょうか。視聴覚室は、映像教材を使用した授業はもちろん、イベントなどにも使いますが、やはり天井が低く段差がない席だと後ろの生徒が見にくいということはあると思います。
本校の視聴覚室は吹き抜けの空間で天井が高く、席が階段状になっているので、後ろの生徒も見やすいです。またイスを収納すれば広いスペースとなり、形も正方形に近いので、色々な用途があると思います。イメージとしては、体育館というよりは武道場のような使い方ですね。

――長方形と正方形では使い勝手が違うのですか。

例えば学年集会をやるときには、イスを収納して床に座らせていることが多いです。本校は1学年が8クラスなのですが、その時に正方形だと8クラスが横に並ぶことができます。正方形というか、全てのクラスが並ぶことのできる横幅の広さが非常に大事なポイントになります。

――他の学校でも、1学年がまとまって入れる空間が大事という話はお聞きしたことがあります。

大事ですね。全校で集まるなら体育館で良いのですが、学年毎に集まることがしばしばありますから。体育館以外にも1学年で集まれる場所があれば、同じ時間帯に同じ行事を同時に展開できるので、大きなメリットになると思います。
講堂があれば、1学年分300名ぐらい入れると思いますが、講堂はそれ以外の利用はできません。でも本校の視聴覚室は、移動観覧席を引き出せば講堂になるし、収納すれば広いスペースになるので多目的室としても使える点が特徴だと思います。
都立高校はいま、順次建て替えが進んでいます。本校は全部取り壊して新築したのですが、骨組みは残して中だけ改修する学校もあります。もしかすると、改修だと柱が邪魔になって横長の教室にすることは難しいのかもしれませんが、新築の場合には本校のような視聴覚室はおすすめですね。

――具体的にはどのような時に1学年で集まるのでしょうか。

学年集会や「総合的な探究の時間」などですね。例えば「総合的な探究の時間」では、修学旅行に関する動画を見たり、講演会を聞いたりしています。そのほか生徒の発表も行います。
今は生徒の表現力、コミュニケーション力を高めるという意味で、発表させることが重要な教育の一つになっています。最初はクラス単位で発表させて、その中でも良い発表は全体で共有するために学年単位で発表させたりしています。視聴覚室の演台の上でマイクを使って発表するというのは、生徒にとっても良い経験になると思います。

授業、部活動、イベントとフル稼働の視聴覚室

――鷲ノ上先生は、最初に移動観覧席を見たときにどのような印象をもたれましたか。

感動ですよね。最初に私が使ったのは保護者の方が参加するPTA総会でしたが、保護者の方も感動していらっしゃいました。準備にも携わっていたので、自動でイスが出てくるところを「すごいな」と思いながら見ていました(笑)。
私はそのとき初めてイスを出したのですけれど、液晶ナビ付のリモートスイッチが操作手順を音声で案内してくれるので、初めてでもスムーズにできました。本校では使う人が自分で出し入れするのですが、やり方さえわかっていれば誰でも安全に操作できると思います。

 

――視聴覚室は、主にどのようなことに使われているのか教えてください。

一つは広い教室として授業で使っています。授業の時は移動観覧席を収納して、机とイスを並べています。机間指導といって、授業中に教師が席と席の間をぬいながら指導することがあるのですが、広い教室だと車イスを利用している先生も通りやすいというメリットがあります。またパソコンを使って画面で教材を見せる授業も増えたので、スクリーンが大きい視聴覚室だと効果的ですよね。
放課後は部活動で利用しています。視聴覚室には鏡が設置されていて自分の動きが確認できるので、ダンス部やボクシング部が使っています。また防音性が高いので、吹奏楽部や軽音楽部も使っています。吹奏楽部は普段は音楽室で活動しているのですが、集まって演奏したいときは視聴覚室を使っているようです。
頻度としては、授業は毎日、部活も毎日あるので、つまりほぼ毎日使っていることになりますね(笑)。


 
 

――多目的室としてフルに活用されているのですね。移動観覧席を使うのはどのような時でしょうか。

移動観覧席については、出すのは簡単なのですけれど、1学年320名を全員座らせるためには席が足りません。移動観覧席は132席なので足りない分はパイプイスを並べる必要があり、その手間が発生します。そのため学年集会のような時は、移動観覧席は収納して床に座らせて行うことが多いです。移動観覧席は、落ちついて講演を聞かせたり、映像を見せたりという時に利用していますね。
これまでは「総合的な探究の時間」や講演会、映画鑑賞会などで使いました。映画鑑賞会のときは階段状のイスがとても有効でした。転落防止のための柵が付いていて、通路の階段はLEDライトで照らされているので、暗い中でも安心して階段を上り下りでき、安全にも配慮されています。
先日は3年生の大学入学共通テストの説明会でも使いました。移動観覧席を使うのはやはりイベントの時が多く、現在は月に1回程度ですかね。

――私たちもその時会場を拝見したのですが、入ってきた生徒さんが「ライブ会場みたい!」と言っていました(笑)。

学校説明会など、保護者の方が参加するイベントは移動観覧席を使うことが多いかもしれませんね。1年生の保護者会の時は、初めて視聴覚室を使ってオンライン配信も行いました。通常は皆さん会場にいらっしゃるのですが、その時は感染予防対策のためにオンライン配信も併用し、自宅で映像を見ていただく方と、会場でスクリーンを見ていただく方とに分散させたのです。その日はちょうどPTAの活動もあったので、その活動に参加される方だけ学校に来ていただきました。 ちなみに移動観覧席には、机が付いているタイプもあるのですよね。

――肘掛けにメモ台が付いているタイプと、背にテーブルが付いているタイプがあります。

私が研修に行ったときに会場になっていたホールには、イスにメモ台が付いていました。膝の上でメモを取るのはちょっとやりにくいですよね。やはり授業をやるときは机があった方が使いやすいので、書けるスペースがあればさらに用途が広がるのではないでしょうか。


新たな学びに求められる学習環境への対応

――今回の改修にあたっては、バリアフリーに対応したり、移動観覧席を入れたりと、色々新しいものを取り入れていらっしゃいますね。

そうですね。廊下と教室は窓ガラスで仕切られていて、廊下から教室の中を見ることができます。小学校などでは廊下の壁を取り払っている例もあると思いますが、高校でここまでガラス張りなのは珍しいと思います。非常にオープンな感じで、お互いの授業を見学するとか、研究授業をやるとか、教師が授業力を向上させるための取り組みもやりやすいと思います。
それから本校の特徴として、教室や廊下にロッカーがありません。下駄箱とロッカーを兼ねた1人用の大きなロッカーが、生徒昇降口に設置されています。全校生徒の約900人分が設置されているので、昇降口がかなり広いです。たぶん普通の学校の2倍ぐらいはあるのではないでしょうか。そのお陰で廊下や教室が広く、非常に開放的ですね。
そのほかにも屋上は緑化されていて、ソーラーパネルが設置されています。また天井や壁などには多摩産材をふんだんに使っているので、生徒たちもリラックスして過ごせるのではないかと思います。

――新しい校舎の評判はいかがでしょうか。

入学希望者が増え、受験の倍率が上がりました(笑)。校舎が新築されたというのは大きな宣伝になりますね。生徒になぜ本校を選んだのかのアンケートをとっても、校舎が新しいというのは大きな理由の一つになっています。もちろん保護者の方にも評判が良いですね。
2022年4月に入学した1年生から、新しい学習指導要領に則ったカリキュラムになり、教科が新しくなったり、観点別学習状況の評価が導入されたりと、学習の仕方が変わってきています。新カリキュラムで勉強する1年生は東京都の施策で補助があり、全員一人1台タブレット端末を購入しています。また去年はコロナ禍で、オンライン授業などもスタートしました。今も濃厚接触者になって欠席している生徒などに対して、授業を配信してくれている先生もいます。以前なら欠席すると友達のノートを写していたと思いますが、今は同時に自宅でも授業を受けることができるわけです。
こうしたタイミングで様々な設備を備えた新校舎ができたので、新しい教育ニーズにもうまく合致したのではないでしょうか。校舎に続いて、グラウンドや体育施設の改修がこれから始まりますので、今後ますます施設は充実していくと思います。

 

――移動観覧席を始め、新しい施設を今後どのような形で活用していきたいとお考えですか。

授業でも部活動でもこれから色々と使ってみて、私も含めて皆で利用の仕方を発見していきたいですね。こういうことができるのだと先生方が分かっていけば、活用の幅がもっと広がっていくのではないでしょうか。
また学校内だけではなく、都民の方にも還元できるような使い方もあると思います。例えば都立高校が都民を対象に行う都立学校公開講座というのがあるのですが、視聴覚室なら最適ですよね。これだけ素晴らしい施設なので、是非色々な人に見てもらって、知ってもらって、有効活用できれば良いですよね。これからはもっと利用できる機会が増えると思うので、私も楽しみにしています。

――是非、視聴覚室や移動観覧席を様々な場面でご活用いただければと思います。本日はありがとうございました。

関連リンク

東京都立府中東高等学校 Webサイト

取材日:2022年7月

動画

移動観覧席サイト RCSページ

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