東京都では看護師不足が大きな社会問題となっています。厚生労働省がまとめた都道府県別・人口10万人当たりの看護職員就業者数(2023年)によると、東京都は約1,100人で全国平均1,437人と比較して特に少なくなっているほか、都内では看護師不足による病棟閉鎖の事例も発生しました。看護師の定着や確保のためには、勤務環境の改善は欠かせない要素となっています。一方、初期研修終了後、直ちに美容医療領域に進む「直美」の医師が増加している問題があります。背景には、過酷な労務環境を避け待遇を求める傾向が強いことが一因に挙げられています。
東京女子医科大学病院(東京都新宿区)の東病棟1階に位置する救命救急センターでは、看護師控室とモニター室(研修医用の休憩室)にそれぞれカプセルベッドが導入されました。既存のスペースを有効活用して個室に近く静かでプライバシーのある空間を確保し、横になってしっかりと休憩できる場を提供しています。
まず、カプセルベッドを使用されている救命ICU看護師の西川千秋(にしかわ・ちあき)氏にお話を伺いました。

東京女子医科大学病院
救命ICU看護師
西川 千秋 氏
命に関わる重篤な患者を24時間体制で受け入れ
――東京女子医科大学病院についてご紹介ください。

東京女子医科大学病院(1,128床)は、東京都から指定を受けた三次救急医療機関で、命に関わる重篤な患者を24時間体制で受け入れています。また、理念として掲げる「至誠と愛」に従い、安心・安全な医療の提供にスタッフ一丸となって取り組んでいると同時に、高度な医療を提供する大学病院として人材教育にも力を入れています。
――西川様が所属する救急救命センターについて教えてください。
救命救急センターは、全診療科を対象に、各種内科疾患、外科疾患のうち、特に緊急手術や集中治療を要する病態を扱います。二次医療圏は区西部(新宿区、中野区、杉並区)ですが、東京消防庁や近県の救急隊からの搬送受け入れのみならず、高度な医療が必要と判断される症例の各種医療機関からの紹介も随時受け付けています。一方、地域柄、繁華街に近い病院でもあるので、中毒など特殊な疾患の患者さんの受け入れも行っています。
――初診の方が多いのでしょうか。
実は、東京女子医科大学病院でないと治療ができないような患者さんを受け入れることも多いです。今は普通に生活されているけれど、過去に何か病気をお持ちで通院歴があり、突然また具合が悪くなってしまった時には、過去の状況を理解している東京女子医科大学病院に搬送されてくる方がいらっしゃいます。
――救命救急センターのICU(集中治療室)で働く看護師に必要なことは何でしょうか。
ICUは、予測不可能な容体の急変が日常茶飯事で、臨機応変に対応することが非常に求められる職場です。看護師37人がおりますが、精神的な強さが非常に求められます。それと同時に、ご家族対応(家族看護)をとても重視していますので、1回で即座に状況を判断し、ご家族の心のケアに対応できる対人スキルも求められます。
モニター機器の音や光を遮り、プライバシーを確保することで看護の活力につながる
看護師控室に導入されたカプセルベッド
――今回、救命救急センターの看護師控室にカプセルベッドが導入されました。使用状況についてお聞かせください。
看護師控室のカプセルベッドを使用するのは、夜勤の看護師がメインです。救命救急センターの看護師は2交代制で働いており、夜勤は一人当たり月平均6~7回ぐらいで毎週あります。看護師の夜勤者数は1日6~8人で、前半、中盤、後半と分けて順番に休憩をとっています。1回につき2~3人が休憩するのですが、最初に会話をしながらそろって食事をとり、カプセルベッドを1、2時間使用させていただき休憩している状況です。
――導入前の休憩状況について教えていただけますか。

看護師控室は、ICUの中にあり、モニター機器の音がすぐそばで聞こえる環境です。導入前は、長椅子やソファーベッドを使って休憩している状況でしたので、モニター機器の音が気になり、おちおち休めない状況でした。体だけ横になっていると言えば分かりやすいかもしれません。また、長椅子は女性の看護師が横になれるほどの長さしかありませんし、寝返りを打つことができませんでした。加えて、他の看護師に気を使いながら横になっていましたので、プライバシーがあるとは言えませんでした。
(写真:ソファーベッド)
――カプセルベッド導入後、どのように改善しましたか。

カプセルベッドでは、しっかりとしたマットレスを用意いただきましたので、寝返りも十分打つことができるようになりました。また、プライベート空間が確保されたことが一番大きな改善だと思います。室内にコンセントが用意されていて、スマートフォンを充電しながら、自分だけの空間でスマホを見ることもできます。モニター機器の音が聞こえなくなり、静かに休むことができるようになりましたし、他に利用した看護師も同意見でした。おかげさまで、プライバシーのある場所でしっかりと休憩がとれますので、残りの時間もまた頑張ろうという気持ちで業務に臨むことができていると思います。この点が、導入前との大きな違いです。
(写真:カプセルベッド内部)
――夜勤以外で使用することはありますか。
日勤時の休憩は1時間ですが、食事をとって少し体を休めたい場合に使用することがありますし、夜勤明けに研修が予定されている場合、研修までの時間、体を休めるために使用することもあります。
――実際に利用されていかがでしたか。

思った以上に空間が静かで驚きました。カプセルベッドの上段を利用すると、下にいる人に気遣って寝返りしなければいけないと考えてしまいますが、下にいる人も空間が静かで、上にいる人が何をしているか分からないと聞いて、安心しました。また、マットレスの硬さがちょうどよく、とても寝心地がいいと感じています。カーテンを閉めると遮光されて暗くできますので、光が入ってくることなく休めるという声がある一方、閉鎖空間が少々苦手な人の場合、カーテンを開けているという声もありました。
――お気に入りの点は。
2段で大きいはずなのに圧迫感がなく室内に溶け込んでいます。木目調の外観が、リラックス感につながっているからだと思います。また、ハシゴが昇りやすく安心しました。
――今後の抱負をお願いします。
私たち看護師は、24時間体制で、さまざまなプレッシャーを感じながら毎日勤務をしています。そうした中、たとえ短時間でもいい環境の中で休憩をとり、英気を養うことができるということは、本当に大切なことだと痛感していますし、次に向かって頑張れる気力を生み出してくれていると感じています。これからも患者さん一人ひとりに寄り添いながら看護をしていきたいと思います。
――24時間体制で救急医療を担う看護師の皆さまの一助となっていることを、大変誇りに思います。本日はありがとうございました。
取材日:2026年5月
インタビュー動画