次世代の客席とともに受け継がれる、建築の傑作
インディアナ州フォートウェインに佇む「アーツ・ユナイテッド・センター(Arts United Center)」は、単なる文化施設にとどまりません。そこには、建築そのものが放つ強いメッセージがあります。伝説的建築家ルイス・カーンが完成させた劇場として、50年以上にわたりミッドセンチュリー・モダンを象徴するランドマークであり続け、さまざまな背景を持つ市民が芸術を通して出会い、交流する、地域に深く愛される拠点となってきました。
歴史的価値の保存と、機能性・アクセシビリティの高度な両立を目指す大規模プロジェクト「A Soaring Vision(高まるビジョン)」を経て、同センターは2025年10月25日に公式リニューアルオープンを迎えました。この改修の狙いは、最新の舞台設備を導入することにとどまらず、カーンが描いた本来のビジョンを尊重しながら、現代の基準に照らしてさらに昇華させることにありました。
コミュニティへの長期的な貢献を理念として
アーツ・ユナイテッドとコトブキシーティングの協働は、「人々が集い、つながり、世代を超えて繁栄できる永続的な空間を創る」という共通の信念に基づいています。先駆的な市民劇場としてのアーツ・ユナイテッド・センターが持つ意義に基づき、品質と長期的なコミュニティ貢献を重視する姿勢がプロジェクト全体の指針となりました。設計事務所や劇場コンサルタント、ゼネコンを含むすべての関係者が、「この場所を真に特別な存在にする」という目的のもとで結束しました。
人間工学に基づく性能と、普遍的な快適性
この象徴的なプロジェクトに納入されたのは、725席の
「Cadenza」TSA-71です。歴史ある劇場にふさわしい品格あるデザイン、人間工学に基づいた快適性、そしてインクルーシブな設計思想を兼ね備えている点が評価され、採用に至りました。
座席は、長時間の鑑賞でも快適さが持続するよう最適化されています。背もたれとクッションには、背骨のラインに沿う人間工学的な3D形状を採用し、身体に自然にフィットすることで疲労を大幅に軽減します。さらに、波形スプリングが体重を均等に分散し、骨盤を安定させて血流を妨げない理想的な姿勢を保ちます。独自の座自動緩起立機構により、着座・離席の際の振動や騒音を抑え、観客が作品世界に集中できる環境を実現しました。
コミュニティの誰もが利用しやすいデザインと美学
すべての来場者にとって利用しやすいユニバーサルデザインの実現は、このプロジェクトにおける最重要課題でした。客席には、車イス利用者のための鑑賞スペースを柔軟に確保できる、ADA(米国障害者法)準拠の着脱式座席を10組導入。加えて、歩行器や車イスからの移乗を安全かつ円滑に行えるよう、通路側の肘掛けが外側に開く座席を8席設置しました。視認性にも配慮し、コントラストの高い座席プレートを見やすい位置に配置するとともに、側パネルには足元灯を設け、場内の照明状況に左右されることなく安全に移動できるよう設計されています。
機能性だけでなく、劇場全体の美学を完成させるうえで、座席の仕上げも重要な要素となりました。725席すべてには、刷新された空間の建築的な色調と調和する特注のグレーの張地を採用。クッションの曲線、アクセシビリティへの配慮、張地の質感に至るまで、細部への徹底したこだわりによって、あらゆる障壁を取り除き、コミュニティの誰もが快適に過ごすことができる空間が完成しました。
インタビュー
協働を記念したショートフィルム