ホールと体育館の二つの役割を果たす、多目的ホールが新興風館に誕生
早稲田中学校・高等学校は、2020年に迎えた創立125周年を記念して、老朽化していた興風館の建て替え工事を行いました。各校舎の中間に位置する新興風館は、中学棟と高校棟などの各棟や階をつなぐ新しい中継点です。同時期に建て替えを実施した新3号館と連携して全校舎間に回遊性をもたらし、中高生同士の盛んな交流を形成しています。
柔道場や剣道場、アリーナや屋上運動場などのスポーツ施設を集約した興風館の2・3階には、約1,000人を収容できる誠ホールが新設されました。卒業式や学校説明会、PTA総会などの式典や集会がない時には、第2アリーナとして活用できる空間を目指し、展開・収納できる客席「
移動観覧席」が導入されています。
スイッチひとつで展開・収納できるフルオートの移動観覧席を採用
選ばれた移動観覧席は、すべてが電動で操作可能なフルオートタイプでした。341席の階段状の客席は、リモートスイッチの収納ボタンを押すと、イスや手すりが折り畳まれて段床が重なり、ホール後方にある専用の収納庫内に壁面とぴったり揃って収まります。設営する時は展開ボタンを押すと、重なっていた段床がスライドして階段状になり、イスと手すりが起立。短時間かつ簡単に客席をつくり上げることが可能です。
移動観覧席の前にスタッキングチェアを並べると、移動観覧席の後ろに並ぶ2階固定席と合わせて、約1,000席のホールが生まれます。
スリムなデザインで実現した、メンテナンス性と機能性
移動観覧席に搭載したイスは、薄くしなやかなスクエアシルエットが特徴のLIMSです。スリムな見た目ながらも、520mmの一人分間口を取った大きな背座が、生徒はもちろん、保護者を始めとした大人の来訪者にもゆとりある快適な座り心地を提供します。清掃やメンテナスのスムーズさを考慮し、クッションや張地のないすっきりとした合成樹脂素材を採用。汚れてもさっと簡単にふき取ることができるため、いつでも清潔感のある客席を保てます。カラーはすっきりとしたシルエットを際立たせるブラックです。移動観覧席の最後列から繋がる2階固定席のイスも、同じ上台で仕上げました。
LIMSのスリムなデザインは、着席までのスムーズな動線確保に貢献しますが、備わった「中立機構」も陰の立役者です。この機構により、跳ね上がって収納される座と背もたれの間に適度な隙間を保つことができ、座る時に手を掛けやすい状態を生み出します。座席の前を通り抜ける時だけ、座を背もたれ側に押し込むことで、通路スペースを広く確保することができるのです。2本の縦通路で挟まれたブロックの最大掛人数は11人ですが、一斉に大人数が着席・離席する集会時でも、混雑を最大限に緩和します。
施設概要
早稲田大学の附属・系属校の中で最も歴史の長い早稲田中学校・高等学校は、創立125周年の記念事業として、3号館と興風館の建て替えを行いました。これまで独立していた各校舎をつなぎ一体化することをコンセプトに掲げた、中高生の新たな交流と連携の拠点です。外壁を構成するレンガタイルは、早稲田大学の大隈講堂を想起させるデザイン。早稲田らしい景観をつくり上げ、伝統ある中高一貫校にふさわしい風格を醸し出しています。