内装改修工事をきっかけに、長年使われたイスの入れ替えが決定
福岡市では、2008年度に策定したアセットマネジメント基本方針に基づき、予防的な改修による施設の長寿命化を進めています。福岡市7区それぞれにある市民センターでも、ホールの内装などの改修工事が計画的に行われており、市の中央部に位置する福岡市立城南市民センターは、約1年に渡る利用休止を経て2025年3月にリニューアルオープンしました。
天井の改修工事の際は、作業の足場を作るため、固定された座席を一度取り外さなければなりません。1984年8月の開館以来、長年に渡って利用されていた座席は老朽化が顕著であったことから、これをきっかけに新たなイスへの入れ替えが決まりました。
座席のリニューアルで、ホール空間のイメージを一新
リニューアル前のホールを彩っていたのは、白い壁と天井、赤いカーペット、背座のクッションにオレンジ色の張地を張ったスチール製のイスでした。入れ替え後は、イスの張地に城南区のカラーであるネイビーを採用し、内装もそれに調和する落ち着いたトーンに仕上げることでイメージを一新。新築のホールをも思わせる客席空間に生まれ変わっています。
ワンフロア約500席の客席に並ぶのは、
劇場・ホールイス「Cadenza カデンツァ」TS-71シリーズです。関係者がコトブキシーティングのショール―ムを訪れて比較検討を行い、座り心地やデザイン、コストのバランスの良さから選ばれました。
従来のイスは、着席者の背中を抱き込むように横に緩やかなアールがついた背もたれでしたが、背骨に沿って縦横に三次元カーブした背もたれに変わったことで、フィット感がアップ。耐圧を均等に分散する波形スプリングを内蔵した座の形状は、膝裏にあたる先端部が薄くなった「
スペーシア」です。座席の下のスペースにゆとりが生まれるため、足を引きやすく立ち座りがスムーズに行えます。スチールだった背裏には天然木があしらわれ、座はテキスタイルをたっぷりと使った張り包みに変わりました。
座りやすく見やすく、誰にも優しい客席づくり
座席の入れ替えにあたっての市からのリクエストは、総席数を維持しながら1席分のスペースを拡張することでした。500席という規模を維持するため、大きなレイアウトの変更は叶いませんでしたが、縦通路の幅をやや狭めてイスの一人分間口を10ミリメートル広く設定し、従来よりもゆとりある座り心地を実現しました。
車イススペースの快適性の向上も、今回のリニューアルのポイントの一つです。車イスユーザーが鑑賞エリアを選択できるようスペースを3か所に分散し、2席から4席に増やしました。車イススペースの隣には、肘の片側が跳ね上がるバリアフリー仕様の移動席を備え、座席に座る場合のスムーズな移乗や、介助者が座る場合もスムーズな介助を可能にします。脚部のキャスターのロックを解除して動かすことができるため、イスの要不要に合わせて柔軟に設営が可能です。
ステージの見やすさにも配慮を行い、客席中央ブロック前方の座席は、前後で半席ずつずらした千鳥配置を採用。リニューアル前に比べて座りやすくなった、見やすくなったと好評です。
施設概要
福岡市立城南市民センターは、ホール、会議室や視聴覚室、音楽室などを備えた施設です。ホールは、主に演奏会や発表会、講演会、上映会などの会場として利用されています。リニューアルオープンを記念して、九州交響楽団による弦楽五重奏の演奏会も開催されました。