全ての市民に利用しやすい会館を目指して、初の大規模改修を実施
山形県の長井市民文化会館が、2020年9月、施設長寿命化を目指した約1年に渡る改修を終えて、再オープンしました。1974年に開館して以来、初めての大規模なリニューアルです。耐震化のほかユニバーサルデザインに基づいたエレベーターの設置や館内の段差の解消などに取り組み、市民の利用がしやすい新たな施設として生まれ変わっています。
ホールでは空調設備や舞台装置の更新が行われたほか、座席がコトブキシーティング製の劇場イスへ入れ替えられました。既存イスの破損修理をコトブキシーティングのグループ会社でありイスの点検・修理サービスを行う
KSS株式会社が対応していたことから、劇場イスの納入に繋がりました。
ゆとりを持って生まれ変わった客席に、ソファタイプの親子席も新設
リニューアル前のホールには、1,016席のイスが並んでいました。1席あたりの間口が狭く窮屈さを感じるという声と、これまで開催してきたイベントの規模を考慮した結果、800席あれば良いと判断して、ゆとりある客席づくりのため約200席の削減が決定。間口の検討にあたっては、ホール内に段床を設けて見本のイスを持ち込み、実際のホール環境に近い状態で市長自らが確認を行いました。最終的に、これまでより100ミリメートル広い最大550ミリメートルの一人分間口を確保し、リニューアル後の総席数は810席です。
ユニバーサルデザインの観点から、親子鑑賞席の新設も検討されましたが、スペースなどの問題から難しく、代わりに導入されたのが特注の12席の親子席です。ホールに出入りしやすいよう、客席前方の扉からすぐの位置に設置されました。3席分が連結された、親子が寄り添って座れるソファ仕様です。イスの座が跳ね上がらないため、体重の軽い小さな子どもも安定して座ることができます。客席に違和感なく馴染むよう、他のイスと同様のデザインで仕上げました。
座り心地が向上した新たなイスが、ホールらしい上品な客席空間を演出
導入された
劇場・ホールイス「Cadenza カデンツァ」TS-71シリーズは、着席者の背骨に沿う三次元カーブの背もたれと、体圧を均等に分散する波形スプリングを内蔵した座による、快適な座り心地が特徴です。これまでのイスは二次元カーブの背もたれだったため、フィット感が大きく向上しました。背裏には天然木があしらわれ、座裏が化粧合板だった座がテキスタイルたっぷりの張り包み仕様になったことにより、装いにもホールらしい上品さが感じられます。カラーリングも、オレンジ色の張地とナチュラルな木部の組合せから、落ち着いた深いレッドの張地とダークブラウンの塗装色に変わりました。
客席前方には移動席があり、催しに応じてイスを取り外すことで前方にスペースをつくったり、車イススペースを設けたりの柔軟な対応が可能です。後方には背倒れ席を備え、PA卓のスムーズな設置に貢献します。
施設概要
1974年に竣工した長井市民文化会館は、45年の歳月を経て老朽化していた館内の大規模改修と耐震化に着手し、2020年9月にリニューアルオープンを果たしました。外観は印象的なルーバーを継承しながら「水のまち」と「黒獅子」をイメージした紺青色に、施設のメイン居室であるワンスロープ型の客席はゆとりある810席に生まれ変わりました。市民利用の他、2024年には長井市制施行70周年と開館50周年を記念して宝塚歌劇団の元トップスターを迎えた華やかなショーが開催されるなど、市の文化芸術拠点として賑わいを見せています。