開館から30年以上が経過し、施設の長寿命化を図るリニューアルを実施
滋賀県草津市の草津アミカホールは、1992年の開館以来、「市民とともに創る文化ホール」を理念に掲げて歩んできました。近年は老朽化が目立っていたことから、施設の安心安全な利用と長寿命化を目指した改修工事が行われ、施設のメインである302席のホールでは天井・座席・照明が、そして館内ではレストルームが一新。2025年2月にリニューアルオープンを果たし、市民の文化交流拠点として、新たなスタートを切っています。
イメージを刷新した、コンサートから演劇、講演会まで多目的なイベントに対応するホール
ホールには可動式の音響反射板が備わっており、ピアノ発表会やアンサンブルコンサートなどの室内楽に適しています。反射板を開放すると、演劇やミュージカル等の舞台公演や講演会なども行える、多目的な仕様です。
これまでの客席に並んでいたのは、丸みを帯びた背板や肘当が特徴的な、淡いパープルの張地とホワイトオークの木部による穏やかな雰囲気を携えたイスでした。今回入れ替えた新たな座席は、背板や肘当、脚部をストレートな輪郭で描いた
劇場・ホールイスTS-614233です。華やかな赤い張を用いて空間のイメージを大きく変えることで、リニューアルを印象付けています。また、背裏や座裏、縦通路に面した脚にも天然木をあしらい、力強さのあるダークな塗装を施してホールらしい品格を高めました。クラシック音楽を行うホールにふさわしい、上品さを感じさせる装いです。
安心安全を目指した機能面でのリニューアルポイントは三つ
今回のリニューアルでポイントとしたのは、快適性の向上、避難経路幅の確保、そしてバリアフリーの三つでした。
これまで390ミリメートルだった座面の高さは、425ミリメートルに更新され、現代人の体格にマッチした座り心地へと進化しています。左右中央にあるブロックのうち、舞台が見づらいという意見のあった中央ブロックの最前列を取り払うという、思い切った決断にも踏み切りました。2列目以降の席数を1席ずつ増やし、前後半席ずつずらしてイスを並べる千鳥配置を採用することで、従来通りの席数を確保しながら視野の改善に成功しています。
新しいイスには、従来のイスになかった、離席時に座が自動で起立する「座自動緩起立機構」も備えました。緊急事態が発生した際でも、座が自動的に正しく収納されるため、避難のための通路スペースをしっかりと確保できます。起立動作も穏やかで、背のクッションとの間に僅かなアキをつくって止まるため、衝突音や振動が発生せず、公演中の離着席もスムーズ。終演後の客席も、全ての座が収納されて整然とした空間を保てます。
前方6カ所の通路側席には、肘開閉機構を採用しました。一見すると他の座席と変わりませんが、通路に面した肘掛部分をドアのように開くことができ、車イスから座席への乗り移りを容易にします。車イススペースも2か所あり、来場者の好みに応じて座席を選ぶことができます。
施設概要
1992年に開館した草津市立草津アミカホールは、クラシックコンサートから演劇、講演会などを多目的開催できる302席(車イス用スペース2か所あり)のホールと、リハーサル室、研修室、文化教室などを備えた、滋賀県草津市の文化交流施設です。同じく市内にある草津クレアホールとの2館1括体制による運営を行いながら、市の魅力を舞台芸術創造事業を通してプロデュース、展開してきました。2025年2月に施設の長寿命化を目的とした初のリニューアルを終え、ホールがイメージを一新して生まれ変わりました。従来からある客席後方の親子室に加え、バリアフリーを重視したイスを客席前方へ新たに備えるなど、すべての市民に優しいホールをかたちにしています。