自然豊かな世界遺産のまちに誕生した「丹鶴ホール」
新宮市文化複合施設「丹鶴ホール」は、東に新宮城跡、北に世界遺産の熊野川をのぞむ新宮市の新たな顔として、2021年10月にオープンしました。ホールや図書館、地域学に関する研究室など、複数の機能が一体となった複合施設です。
施設のメインとなるのは、プロセニアム形式の文化ホール。三層のバルコニー席が設けられたシューボックス型のホールは、客席と舞台との距離が近く、一体感があるつくりです。
多種多様な催しが行われる複合施設ならではのホールとして求められたのは、多機能な空間であること。それを叶えるのが、催しのレイアウトを自由に変えられる、ステージを含めた全面フラットなフロアと「せり」、そして
移動観覧席をはじめとした可動席です。
多機能なホールを実現する3種類の可動席
1階の客席は、移動観覧席・ワゴン席・スタッキングチェアの3種類の可動席で構成されます。
ホールの奥から、移動観覧席、スタッキングチェア、ワゴン席、の順に並べると、ホール最大の1,142席(立ち見席含む)の客席が完成します。その際、ワゴン席は昇降式のせりの上に位置し、フロアよりも低く設定します。そうすることでスタッキングチェア席との段差ができ、後方からでも見やすいサイトラインが確保できます。ワゴン席を載せずにフロアより高く設定すると、せりはステージに早変わり。プロセニアムアーチの位置に幕を下ろすと、ひと回りコンパクトな会場になります。
階段状の客席を簡単に展開・収納できる移動観覧席は、多機能なホールを実現するために「前方移動式」が選ばれました。設置位置を前後に動かすことのできる前方移動式は、規模の小さな催しでも見やすい客席を創り出すことができます。最大席数のレイアウトからスタッキングチェアを省き、空いたスペースに移動観覧席を移動させると973席(立見席含む)に。これが、文化ホールの通常レイアウトです。
移動観覧席をホール中央まで移動させると、移動観覧席が間仕切の役割を果たし、ホールを2分割することができます。同じホール内で異なる催しを同時に行えることに加え、ホール後方のスライディングウォールを開くと、ホワイエとホールがひとつづきに。開放感のあるスペースとなり、オープンな展示会などのイベントに最適な空間に変わります。
3種類の可動席を組み合わせることで、催しに応じた最適空間を創出しています。
高級感溢れる、豊かな座り心地のイス
ホール内には移動観覧席、スタッキングチェア、ワゴンと上階に設置した固定席と、3タイプのイスがありますが、デザインをすべて統一することで客席の一体感を図りました。移動観覧席は
タイプL、スタッキングチェアは
TS-1212、固定席はTS-8282Lです。
イスは、背と肘に無垢材をふんだんにあしらった、高級感のあるデザイン。明るく柔らかな白木が、ホール内装にあしらわれた木の支柱と美しく調和します。
緩やかなカーブにトリミングされた背板の形状は、丹鶴ホールのためのオリジナルデザイン。ブラックのなかにところどころグレーが散りばめられた張地と相まって、落ち着いた客席空間のアクセントとなっています。背板よりもひと回り小さくしたクッションは、正面から見ると座席を一席ずつ縁取るように木部が見え、高級感を演出します。歩行時に手を掛けて張地が汚れる心配もありません。身体のラインに沿った三次元形状の背とたっぷりと厚みのある背座のクッションで、長時間の着座による疲れを和らげ豊かな座り心地を提供します。
移動観覧席を中心とした可動席の組み合わせにより、多機能な空間を実現した文化ホール。多彩な催しを、快適に楽しむための場として利用されています。
施設概要
地上4階建ての「丹鶴ホール」は、1~3階に文化ホール、2階に熊野の自然や歴史を学べる熊野学エリア、4階に図書館を有する新宮市の文化交流拠点です。図書館に設けられたデッキからは、世界遺産の熊野速玉大社や権現山・神倉神社、新宮城跡や熊野川など、新宮市ならではの魅力的な情景をのぞむことができます。文化ホール以外にも、大階段や回廊型の展示スペースなど、イベントを開催できる場所が随所に設けられており、それらを併せて利用することにより、施設の一体的なイベント利用も可能です。
一人ひとりがまちづくりの担い手として、「人が中心となる」ことを施設の理念とし、市民に愛され親しまれる施設として活用されています。