人と自然が調和した、すべての人にやさしい庁舎
山々に囲まれた自然豊かな村、山梨県道志村。村の中央に流れる道志川では川遊びや魚釣りを楽しむことができ、日本で一番キャンプ場の多い村としても知られています。
道志村の旧庁舎は昭和41年の竣工以来50年以上が経過しており、老朽化やバリアフリー対応への不足といった問題を抱えていました。また、庁舎の事務機能が分散していることが村民サービスや行政効率の低下を招く一因となっていました。
これらの課題を解決するため、村は庁舎の建替えを実施。2024年4月、待望の新庁舎が開庁しました。新しい庁舎は、住民サービスの向上やバリアフリーへの対応のほか、防災拠点としての機能も備えられました。災害が起きた際には、被災状況を的確に把握し、対策の方針等を実施する災害対策本部が庁舎内に設置されます。そのスペースを確保するため、適切な規模の会議室が必要でした。
災害対策本部としての活用も期待される議場
庁舎の2階に位置する議場・大会議室は、通常の議会や定例会のほかにもさまざまな村民活動に利用されています。議長席側の壁面パネルには、1階の受付カウンターと同じ山梨県産のヒノキ材が使用されました。天然木の質感が、空間に温もりを添えています。
またバリアフリーにも配慮した設計で、フロア全体がフラットになっています。レイアウト変更がすばやく行えるよう、議長席含むすべての家具が可動式になりました。
議長席が設置された雛壇は、専用ハンドルを使って本体を上げるとキャスターが出現し、本体ごと移動ができる油圧式上下機構を備えています。2名程度の少人数で動かせるため、大がかりな設営作業や人員が要りません。同様の機構は、中央に置かれた執行部席側の発言台にも搭載されています。
議員席側の発言台は、書見台の高さが自由に調整できる特注仕様。台の右下にあるレバースイッチで感覚的に操作ができます。また、書見台は手動で180°回転するため、どちらの向きからも発言することができ、1台で二役の使い方が可能です。当初、スペースの都合上発言台が複数置けない可能性があったことから、こちらの議場のために設えられた仕様です。
執行部席と議員席の机は、天板奥のレバーを降ろすと、本体が上がりキャスターが出現する仕組みです。レバーを戻せば脚部が床に設置するため、安定感と高い安全性を確保しています。
議長席と執行部席、議員席は同じタイプのイスですが、議長席以外はキャスターが付いており、こちらもスムーズに動かすことができます。イスにはコンパクトながらゆったりとした座り心地が特徴のAC-4000が選ばれました。
後方に並ぶ傍聴席には、スタッキングチェア
TS-1212が採用されました。議長席や議員用のイスと同じビニールレザーの張地と、天然木の肘当てが、格調ある空間に馴染んでいます。イスの特徴でもあるボリュームのあるクッションが身体を支え、長時間の傍聴でも快適に過ごすことができます。
村民の安全を守る、防災に強い庁舎
これら可動式家具の機能により、レイアウト変更がスムーズに行えるようになった大会議室。災害時には、家具を会議用のレイアウトに変え、災害対策本部室として機能します。
また、議員や職員だけでなく、村民を対象とした多目的な利用も検討されています。2024年4月のオープン以来、大会議室では学生向けの説明会や、職員の採用試験が行われてきました。人々が集う親しみやすい庁舎が、村民の生活にやさしく寄り添っています。
施設概要
2024年4月に開庁した道志村役場の新しい庁舎。年齢や障がいの有無に関わらずすべての人が利用しやすいよう、フロア全体の段差を無くし、エレベーターやバリアフリートイレを設置するなどのユニバーサルデザインが取り入れられました。また、耐震性・防災性能や災害時におけるシステムのバックアップ機能を確保することで、防災拠点としても機能する「防災に強い庁舎」になっています。