町の新しいランドマークとなる庁舎
山梨県の南東部に位置する西桂町は、美しい景観と自然に恵まれた町です。町内には富士山の伏流水が数ヶ所で湧出しており、また富士の麓で古くから伝わる織物を産業としていることから「水と織物の里」としても知られています。
西桂町の旧庁舎は建設から50年以上が経過しており、老朽化や耐震性に課題があったため、隣接する敷地に新しい庁舎の建設が進められていました。そして2024年5月、待望の新庁舎が完成しました。
隈研吾氏が設計を手掛けた新しい庁舎は鉄骨2階建てで、天井や階段などには西桂町産のスギやアカマツなどの木材が使われています。また、町長室や会議室などの壁には、特産の「郡内織」が取り入れられました。2階に位置する大会議室にも、郡内織の繊細な模様が華を添えています。
可動式の議場家具で、大会議室のフレキシブルな利用を実現
新しい町役場では施設をより有効的に使えるよう、議場という専用の部屋を設けず、さまざまな用途に使える「大会議室」を議場として利用しています。大会議室には、フレキシブルな利用に適した可動式の机とイス、ステージが導入されました。
執行部席と議員席の机は、安定感と移動のしやすさを両立するSD-610の構造を用いてつくられました。シンプルな操作性と動かしやすさで、多くの施設に実績のある機構です。天板下のレバーを握ることにより折りたたみができ、キャスターが出現。スムーズな移動が可能となります。設置時はキャスターが収納され、脚がしっかりと床に接するため、抜群の安定感を誇ります。これらの機能により、議会使用時の安定性と、フレキシブルに利用する際の使いやすさを実現しました。
机には取り外しができる側幕板が付いており、議会利用の際に設置します。キャスターや金物が露出しないよう配慮された意匠で、議場家具としての重厚感を演出します。
優しい色合いが印象的なイスはAC-4300シリーズです。背と座は張り包みとなっており、たっぷりとしたウレタンクッションが身体を支えます。リクライニング機能搭載で、長時間の着座でも安定した座り心地をサポート。議長席は背もたれが高いハイバックタイプ、議員席と理事者席はローバックタイプです。すべてのイスにキャスターが付いており、移動がスムーズです。
議長席の机は、油圧式上下機構を装備しました。専用ハンドルを使って本体を上げるとキャスターが出現するため、手軽に動かすことができます。同様の機構を、発言台にも備えました。
議長席と事務局長席は、部屋全体を見まわせるよう一段高い位置にあります。それぞれの席が設置されたステージは、折りたたんで移動ができる
FS-050です。移動時は操作ペダルを踏むとキャスターが下りてくるため、少ない人数で移動や設営が可能です。ステージを展開する際は油圧ロック付ガススプリングにより、操作が軽く安全に行えます。
議会だけでなく、さまざまなイベントに利用される会議室
これら可動式家具の機能により、レイアウト変更がスムーズに行える大会議室は、議会以外にもさまざまな用途に使用することができます。
すべての家具を収納すると、開放的な平土間空間が出現。スタッキングチェアを並べれば、議場が多目的ホールへと変わります。
新庁舎の竣工式典では、大会議室で記念イベントが開催されました。感謝状の授与式や来賓による祝辞が行われたほか、生のジャズバンドによるミニコンサートも開催されるなど、フラットな床ならではの幅広い活用がされています。
議会だけでなく、町民活動にも利用されている大会議室。町の人々をつなぐ場所として、なくてはならない空間となっています。
施設概要
2024年5月に開庁した西桂町の新しい庁舎。富士麓の豊かな自然に囲まれた西桂町の魅力を生かし、住みやすいまちづくり実現のためコミュニティの核となる「木とひろばの庁舎」をコンセプトにつくられました。天井や階段には西桂町産のスギやアカマツなどの木材が使われているほか、町長室や会議室などの壁には、特産の織物が使用されています。1階には税務住民課など五つの課の窓口が設けられ、2階はイベントなどで使われる多目的スペースや大会議室があり、一般利用者への貸し出しも行っています。また、土日も来庁者に解放される「コミュニティースペース」が1階と2階に設けられ、町民の交流の場として親しまれています。新庁舎は町の指定緊急避難場所にも指定されており、防災拠点としての役割も担っています。