世田谷区民会館
ホール

2025.01.16
劇場・コンサートホール

施設説明

前川國男氏が設計した旧世田谷区民会館を継ぐリニューアル

新たな世田谷区民会館の建設は、区を代表する建築として60年以上に渡り区民に親しまれた前川國男氏設計の旧施設に敬意を表し、空間特質の継承が重要視されました。旧会館の躯体を改修し2024年9月にリニューアルオープンしたホールは、耐震性を高めて屋根や内装の全面を新しくしたほか、エントランスホールや楽屋を新築。内装には旧会館の外観として印象的だった、角度のついたコンクリートの板の組み合わせによる折板構造が保存されています。

高齢者、車イス利用者、小さな子どもを意識した、ユニバーサルデザインの客席づくり

最前列から最後列まで一続きになった客席と、その両サイドに並ぶバルコニー席は、旧ホールから受け継いだレイアウトです。中央の横通路を境にした後部の席には、通路側のイスの背もたれに手掛けが設置されており、高齢の観客を中心に、階段の昇降を助けます。
客席数933席、最前列から2列分の移動席を動かして可動式の前舞台を使用した場合は902席です。3列目から5列目の移動席を動かすと、最大11席分の車イススペースもつくることができます。車イススペースは、最後列両サイドのブロックにも2席ずつ設けることができ、スムーズに席まで辿り着けます。
客席後部には2か所の親子室が新設されており、周囲に気兼ねすることなく親子で演目を楽しむことができます。

初代のイメージを継承し、空間に調和を生む新たなイス

旧会館ホールの客席は、65年の歴史の中でリニューアルが行われ、初代とは異なる色のイスが並んでいました。今回の改修では、旧会館ホールの初代客席のイメージを復刻しようと竣工当時を再現する赤い張地が選ばれ、新たなホールを華やかに明るく彩っています。張地のデザインは、世田谷区庁舎のシンボルであるケヤキ並木をモチーフに、コトブキシーティングのグループ会社であるFABRIKOが手掛けました。親子席のソファにも、同じテキスタイルが張られています。
イスは1席あたりの間口が70ミリメートル、前後ピッチが50ミリメートル大きくなり、ゆったりと座れるようになりました。ホールの内壁に呼応するよう、背もたれの上部をすぼませた意匠が特徴的です。すっきりとした後ろ姿を創り上げる真っ直ぐな背板に立体的なクッションを備え、長時間の鑑賞でも着席者の身体を快適に支えます。山型の肘掛けは、隣り合った着席者が腕を置く位置をさりげなく譲り合える、優しいデザイン。脚部も含め輪郭に直線を多く用いることによって内装と調和が取れ、ホール空間に一体感を生み出しています。
座には、着席者の膝裏にあたる先端部を薄くした「スペーシア」が採用されました。従来の形に比べて足元のスペースにゆとりが生まれるため足が引きやすく、スムーズな立ち座りが可能です。薄いながらも内部には体圧を分散する波形スプリングと型崩れに強いモールドウレタンが内蔵されており、豊かな座り心地が得られます。脚部に埋め込んだ足下灯や、通路側の席の背板に貼られた真鍮色の円形の列番プレートなど、さりげないこだわりの仕様は、クラシカルなアクセントとしてホールの魅力を引き立たせます。

施設概要

日本を代表する建築家・前川國男氏が設計を手掛けた世田谷区民会館は、1959年春、世田谷区役所と共にオープンを果たしました。ピロティと広場を中心にコンクリート打ち放しの複数の建物で構成される印象深い建築でしたが、老朽化を背景に建て替えが決定。2021年から3工期に分けて建て替えが進められ、2024年春、1期棟と区民会館が完成しました。区民会館は同年9月にリニューアルオープンし、杮落し公演を封切りに、様々なジャンルのイベントや公演が計画されています。

居室データ

所在地
154-8504 東京都世田谷区世田谷4-21-27 地図
施主
世田谷区
設計
株式会社佐藤総合計画
リニューアルオープン
2024年9月
席数
933
関連リンク
世田谷区民会館 WEBサイト
世田谷区民会館 | 株式会社FABRIKO WEBサイト