嘉麻市庁舎
議場

2024.11.14
議場

施設説明

地域産材がふんだんに使われた、嘉麻市の新庁舎議場

2006年に福岡県の旧山田市、旧稲築町、旧碓井町、旧嘉穂町が合併し、嘉麻市が誕生しました。以来、各市町の旧庁舎が分庁方式で運用されていましたが、市民サービスの向上や職員の業務効率の向上、防災拠点としての機能確保を目指し、新庁舎の建設計画がスタート。2020年3月に開庁を果たしました。
市庁舎の5階中央に位置する議場は、1階の市民ロビーから4階まで続く吹き抜けの真上にあり、他フロアから見ると浮遊しているような印象を与えます。議場は嘉麻市産の杉材で包まれており、「木のボリューム」として可視化させることによって、「地域のシンボル」として旧自治体間の絆を強めるデザインです。議場の内装や床にも、市産材の杉がふんだんに使用されています。

シンプルな中に温かみも感じられる議会用イス

議場では、議会を行うほか市民説明会の開催など多目的な活用を目的に、議長・執行部席と議員席が対面で並ぶ床はフラットにつくられ、キャスター付きの議会用机イスが採用されました。この仕様はバリアフリーであることに加えて、席数の変更や多様なレイアウト配置を可能にし、スペースに限りのある建物内でホールを別に設けることなく平土間空間の創出に寄与しています。災害などの際には簡単に家具を移動させ、倉庫へ収納することが可能です。
議会用イスAC-3700シリーズは、背座ともに真っ直ぐな輪郭を描く中で、アールのついた天然木の肘掛けがアクセントになったデザインです。背座のクッションであるウレタンフォームを、チャコールグレーの平織張地で張り包むことによって、シンプルな意匠から温かみを感じさせます。一般的な議場では、議員執行部席と執行部席のイスの仕様は同じ場合が多いですが、嘉麻市の議場では議員執行部用の座席の横幅が広く、ゆったりと座れる配慮が行われています。また、執行部席とは背もたれの形状や肘掛けのデザインがやや異なります。
議長席は議場全体を見渡せるよう一段高くなっており、イスと机はこの段に固定されています。他の議会用イスと違ってイスそのものを動かすことはできませんが、着席時にイスが自動的に机のある前方へ動くスライドフォー機構と、離席時に自動的に正面を向くオートリターン機構が備わっており、いつでも整然とした佇まいを保てます。

美しい装いと機能性を両立した議会用机や台

各机や台はイスの肘掛けと同素材同色で製作し、意匠の統一を図りました。議場にふさわしい品格ある美しい装いを保つため、キャスターや各機能は、露出しないよう設計されています。
議員机と執行部机のキャスターは、前から見た時には隠れていますが、着席者側からロックを簡単に解除して動かすことができます。
議長机はイスが設置された段と繋がっており、机と段の側面にあるストッパー操作用扉を開け、中にあるキャスターのロックを外すと、イスごと一緒に動かすことが可能です。
答弁台は、天板の下にある昇降レバーを下ろすと机本体がリフトアップし、下部からキャスターが出現します。
操作卓は、幕板の一部取り外しが可能な仕様です。電気配線のメンテナンス時も、特注のラック内に収納された機器を取り出すことなく、簡単に行うことができます。

施設概要

1市3町の合併により誕生した福岡県嘉麻市は、2020年3月に新庁舎をオープンしました。まちの防災拠点と交流拠点を担う、シンプル・コンパクト・フレキシブルを目指した建物です。外観はコンパクトなコンクリートの矩形で、嘉麻市に流れる北部九州最大の川である遠賀川の畔に彫刻的に佇んでいます。2020年度グッドデザイン賞も受賞しました。

居室データ

所在地
820-0292 福岡県嘉麻市岩崎1180-1 地図
施主
嘉麻市
設計
株式会社久米設計
オープン
2020年3月
席数
58
関連リンク
嘉麻市 WEBサイト