土地区画整理事業を記念した、大阪市港区の新たな交流拠点
大阪市港区は、区域のおよそ9割を約2メートル盛土する世界でも類を見ない大規模な土地区画整理事業により、長年にわたり悩まされてきた高潮被害を克服し、災害に強いまちへと生まれ変わりました。2024年4月、この事業を記念した港区土地区画整理記念・交流会館がオープン。「まちづくりのあゆみを伝える拠点」「出会いと交流が生まれる起点」「災害時の防災拠点」を目指し、港区民ホール(港区画整理記念ホール)をはじめとした、世代を超えて人々が集い、交流・活動できるスペースが設けられています。
7・8階に位置するのは、約400人収容可能な多目的型の港区民ホールです。誰もが気軽に利用できるホールを目指し、コンサートや発表会、講演会など幅広い催しへの対応力を高めるため、市内の他の区民センターで評価と実績を得ていた移動観覧席が導入されました。全国的に市民センターや市民会館などの老朽化による移転新築に伴い、複合化施設の建設が増える中、移動観覧席の検討をする地方自治体も多く、本施設は大きな注目を集めています。
また、288席の移動観覧席と111席のスタッキングチェアの組み合わせで、客席レイアウトの幅を広げています。客席の後方下手側には、防音ガラスの窓で仕切られた親子室もあり、ソファタイプの親子席が並んでいます。
スイッチ一つで客席を展開・収納できる移動観覧席
移動観覧席は、階段状に並んだ座席を展開・収納できる可動式の客席です。港区民ホールに選ばれたフルオート壁面収納式は、リモートスイッチ一つでイスがホールの後方の壁に収納され、再びスイッチを押すと簡単に展開します。移動観覧席本体が左右の壁いっぱいまで広がっているため、見た目の印象は一般的な床固定式の客席に近く、すっきりとした美しい佇まいです。
7段目と8段目の間にある広い横通路は、客席展開時にホールの出入り口扉の上部と被りますが、落下防止用に手動式の手すりを設け安全を確保しました。
最後列からは縦通路で上階と繋がっているため、ステージ前を横切ることなく上演中の入退場が可能で、他の観客の視線を妨げることがありません。
統一感のある2種類のイスで多彩なレイアウトを実現
移動観覧席に搭載した
タイプSのイスは、ウレタンクッションの詰まったシンプルなデザイン。空席時は座が背もたれにぴったりと寄り添うように収納されるため、快適性と広い通路スペースを両立します。その前に並ぶスタッキングチェアは、
「Axis アクシス」FC-310です。ウレタンフォームと樹脂繊維コアの二層構造の座で、適度な反発のある座り心地を提供します。
デザインの異なるイスでありながらどちらも背と座を張り包んだ仕様のため、同色のブルーの張地を使うことによって、客席全体の雰囲気が統一されました。
移動観覧席とスタッキングチェアを全席展開することはもちろん、どちらか一方だけ使用したり、スタッキングチェアを円形や向かい合わせに配置したりすることによって、多彩な客席レイアウトをつくりあげることができます。
スタッキングチェアをステージ下に収納できる専用台車も完備し、省スペース化に貢献。ステージに上がるための専用ステップも、バリアフリー仕様の手すりを備えて納入しました。
施設概要
大阪市港区の「港地区復興土地区画整理事業」は、1948年から1992年にかけて実施されました。この世界でも類を見ない大規模な土地区画整理事業を記念し、2024年4月にオープンを果たしたのが、港区土地区画整理記念・交流会館です。この施設には、港区民センター、港区老人福祉センター、港区子ども・子育てプラザ、港図書館が移転しており、3階の連絡通路からは大阪メトロ弁天町駅や大阪みなと中央病院にアクセスできるなど充実した利便性の高い交流拠点として、世代を超え地域の輪が広がっていくことが期待されています。