“みる”ことの素晴らしさを感じられるシアター
2023年4月、メニコン シアターAoiが誕生しました。背景にあるのは「視覚をはじめとした五感すべてで“みる”ことの素晴らしさを、多くの人と共感したい」という、コンタクトレンズメーカーの株式会社メニコン代表取締役会長の田中英成氏の想いです。長年にわたって文化・教育の振興をサポートしてきた同社が2021年に設立したメニコン芸術文化記念財団は、シアターAoiの誕生と同じ2023年4月に公益財団法人化。田中氏はその代表理事も務めており、ホールを活用した文化・芸術振興への貢献を進めています。
シアターは演劇の上演をメインに計画されましたが、残響や音響をコントロールするシステムやグランドピアノなど、本格的な音楽公演もできる設備を常備。階段状に急勾配で並ぶ301席の客席は舞台との距離が近く、迫力ある鑑賞体験を得られます。1段あたりの段差は242~272ミリメートルと高く設定されており、中央ブロックの千鳥配置と相まって、着席時に前列の観客の頭に視界を妨げられることなく舞台に没入することができるのです。
快適な座り心地を生むダックテールシート
コトブキシーティングのショールームで関係者が意見を出し合って決めたイスには、観客が快適に過ごせるようにと、心づかいが詰まっています。
最もこだわったのは、体重のほとんどを支える座の形状です。座面の後部がアヒルの尾のようにせり上がった「
ダックテールシート」を採用しました。着席者の腰の下部をしっかりとサポートするだけでなく、背座と身体との密着面積を増やして体圧を分散させ、長時間の着座による疲労を軽減します。着席時に足を座の下に深く引き込めるよう先端部を薄くした「
スペーシア」も取り入れ、足の可動域を広くすることで鑑賞時の体勢の自由度を高めました。肘掛などに手を突くことなく足を引いたまま立ち上がることができるため、体重移動が少ない楽な動作が可能です。たっぷりとウレタンの詰まった三次元形状の背もたれと相まって、快適な座り心地をつくり出しています。
通路に面した席の背もたれには、通路の昇降動作を助ける手掛けを備えました。背もたれの木部を利用したデザインは、客席のイメージを壊すことなく自然に寄り添いながら、機能性を高めています。
座席を印象づけるのが、クッションを包み込む、シアターらしい華やかな赤い張地です。木部と同じ色の玉縁をアクセントとして施した珍しい装いは、特別で上質な印象を与えます。
座席の工夫で広がる催しの幅
ホールで開催する催しは、演劇をはじめとしたさまざまな公演のほか、メニコン社内での式典やプレゼンテーションも想定されており、これらの多様なイベントに対応できるよう座席に工夫が施されています。
その一つが、イスの一人分間口寸法の設定です。500ミリメートルのイスが並ぶ中で、最も舞台が見やすい客席中央部の51席のみ550ミリメートルに設定しました。シーンに合わせて、上席者や招待客のための席として利用できます。
全18列から成る客席の前方6列のイスは、脚元に備えたキャスターを使って簡単に場所を動かせる移動席です。イスを移動させ、さらにその部分の昇降床を下げると、たちまち客席からオーケストラピットに早変わり。演目の幅を広げます。
客席中央にある横通路の上手側後方には、車イススペースを2席分確保しました。縦通路を挟んで同じ列に並ぶイスは移動席のため、座席を取り外してスペースを拡張することも可能です。
後方の席の一部は、背もたれがお辞儀をするように座面に向かって倒れる、背倒れ席です。イベントに応じて操作卓を置くことができます。
施設概要
メニコン シアターAoiビルは、メニコンの従業員が従事するオフィススペース、カフェ、総合芸術劇場「メニコン シアターAoi」を備えた複合施設です。地域コミュニティの醸成や文化発展に貢献する場として、2023年4月に誕生しました。施設のメインとなるシアターでは、文化の創造・発信を行う拠点として、質の高い芸術作品を上演。舞台の創造・製作に関わる人材の機会創出を行うほか、地域住民がさまざまな他者の表現に出会い、自らも表現を行える場を目指しています。