市民が待ち望んだ「ちょうどいい」ホールが誕生
1996年に開館したオーバード・ホール(富山市芸術文化ホール)/大ホールは、大掛りな舞台演出を可能とする国内有数のホールとして利用されてきました。オペラ、ミュージカルをはじめ、多様なジャンルの演目が催され、日々賑わっています。
2023年7月1日、大ホールに隣接する土地に市民待望の「中ホール」がオープンしました。規模は最大客席数が652席で、2196席ある大ホールの1/3程。市民がより気軽に公演を観て・集える文化拠点です。
中ホールの完成により、オーバード・ホールは、市民の多様なニーズにも対応できる施設へとアップグレードしました。
アイデア次第で多彩に可変するホール
コトブキシーティングは、大ホールに続き中ホールにも座席を納入しました。
中ホールは、4層の客席から成る多層型のホールです。舞台と客席との距離が近く、演者の表情や息遣いが観客にダイレクトに伝わります。
1階の客席は、
移動観覧席シアターモア・プレミアムとワゴン席、移動席が並び、すべて可動できるイスで構成されています。
移動観覧席シアターモア・プレミアムは、本格的な劇場イスを搭載したコトブキシーティングで最もグレードの高い移動観覧席です。電動操作で、簡単に客席を展開・収納することができます。ワゴン席は、イスを床に固定したまま、ユニットごと動かすことが出来る座席です。ワゴンの向きを変えることで、センターステージのレイアウトを作ることが出来ます。移動席は床から取り外すことが出来る劇場イスで、花道を作る時や、桟敷席を設ける際に利用します。
このような機能をもった座席を組み合わせることで、6パターンもの客席レイアウトに転換が可能。さらに、後方のスライディングウォールを開放すると、エントランスからホールまでつながる大空間が生まれます。多彩な可変空間として、市民の自由な発想で利用されていくことが期待されます。
デザインも、機能性にもこだわった劇場イス
客席には、設計者のこだわりが詰まったオリジナルデザインのイスが並びます。
何より目を引くのが肘掛です。通常は肘掛を隣席の人と共有しますが、一人ひとりに専用の肘掛を設け、スペースの独立性を高めました。脚は、横から見るとシンプルな梯子形状になっていて、通路側から見たときに視線が抜ける軽やかな意匠。主に演劇での利用を想定していたため、1席ずつ小イスが並ぶ芝居小屋のイメージからデザインが生まれました。イスのカラーは、ブラウンとグレーの2種類の張地を張り分けており、上の階に向けてグラデーションに配置しました。イスの背は、正面から見たときに木の縁が見えないデザインのため、2色の張地による色味の変化を滑らかに感じることが出来ます。ダークトーンの室内の中で、内装の木ルーバーとイス張地の色がリンクし、空間に温かみを与えています。
鑑賞時の座り心地を大切に、機能とバリアフリーにも配慮しました。
全てのイスの座には「
スペーシア」を採用。スペーシアは、先端部分が薄く、横からみると三角の形状をしているのが特徴の座です。この形によって、鑑賞時に無意識に足を前後に大きく動かすことができ、同じ姿勢でいることによる血流の低下を防ぎます。また、足を身体の真下に引き込めるため、立ち座りもスムーズです。
1階席の通路側のイスの背には、「手掛け」を設定しました。背板と一体になった自然なデザインで目立ちませんが、観客の段床の上り下りをしっかりとサポートします。
劇場を訪れるあらゆる年代の観客にとって、使いやすい劇場イスです。
施設概要
1996年にオープンしたオーバード・ホール/大ホールはオペラ、ミュージカル、演劇、バレエ、オーケストラなど多様なジャンルの上演に適した2196席のホールです。主舞台、奥舞台、サイドの三面半舞台を有し、大掛かりな舞台演出が可能な国内有数の施設として利用されてきました。大ホールのオープンから27年を経てつくられた中ホールは、可動式の客席を備えることで、ジャンルを問わず多目的な用途に対応できる多機能ホールです。
施設内部は、メインロビーの天井やホールに使われた杉板など、温かみある内装が特徴。ホールの周りの諸室には、音楽やダンス、アートに使える練習室や、オーディオ機器をそろえた音楽鑑賞室が設けられ、充実した市民活動が可能です。外観や内装の一部はガラス張りになっているため、外からでも活動の様子が伝わります。
大ホールと連携した企画など、今までにないイベントの開催も期待される中ホール。
町に開かれ市民で賑わう交流空間を目指しています。