分庁方式から本庁方式へ、あま市役所が新たに開庁
愛知県あま市は、海部郡七宝町・美和町・甚目寺町の3町合併によって2010年に誕生しました。合併以来、各町の庁舎が分庁方式で利用されていましたが、老朽化や維持管理費、バリアフリー対応などの課題を解決するため、2023年5月に開庁したのが、地上5階建のあま市役所です。
4階の議場には、机イスを片付けて居室を多目的に利用できるよう、段差のないフラットな床面が採用されました。理事者席と議員席・傍聴席が向かい合った最もスタンダードなレイアウトで、移動式の机イスが並んでいます。コトブキシーティングは、これらの議場内の家具一式を手掛けました。
キャスターで移動ができる議場家具
議員および理事者のイスは、
AC-3500シリーズをベースにしたカスタマイズ品です。全てキャスター付の移動式で、体格に合わせて座面の高さを調整できるガス上下機構が備わっています。
ハイバックタイプの議長席の背板は緩やかなカーブを、ローバックタイプの議員・理事者席の背板は「く」の字をそれぞれ描き、意匠のアクセントに。一方肘当は平たく真っ直ぐな形状にすることで、デザインにコントラストをつけました。木部は内装に合わせてナチュラルカラーに仕上げ、背座のクッションにはエンジ色での張地が採用されました。2種類のウレタンによる適度な固さの感じられる座り心地で、着席者の体をしっかりとサポートします。
各席の机や台も、イスの木部と同色で製作しました。議員用机は全て1人掛、理事者用机は2人掛または3人掛です。議員用机は内部のレバーを下げると、机の下部からキャスターが露出し、本体がリフトアップして移動できます。議長席・事務局長席の机は、ひな壇内部にあるキャスターのロック解除により、壇ごと動かすことが可能です。理事者用机や質問席・答弁席の台も、パネル内部の足元のキャスターロックを外して移動させます。各机には電源コンセントを備えました。
書見台は嵩上げ台を利用することによって高さの調節ができます。背の高さや車イスユーザーかどうかを問うことのない、誰でも利用しやすいバリアフリー仕様です。
議会への市民参加を促す傍聴席と記者席
傍聴席と記者席のイスは、1本脚が床に固定された
LT-0936です。1席ずつが独立しているため、隣席から振動などの干渉を受けることがなく、落ち着いて議会を傍聴することができます。木部と張地は議場家具と合わせ、空間全体の統一感を図りました。記者席には筆記のためのメモ台を備えています。
傍聴席での議会参加だけでなく、議場の外にあるラウンジのモニターで議会中継を視聴することもでき、市民に開かれた議会を体現しています。
施設概要
2023年5月、愛知県あま市役所が開庁しました。2010年の3町合併以降も引き続き使用されていた各庁舎から窓口機能を集約し、基礎免震構造による高い耐震性能、浸水対策、水や電力・通信等のバックアップ機能を備えました。市民の安全と安心を守るため、あらゆる災害に対応する、市の中枢防災拠点です。議場の壁面の一部やフロア案内サインには、濃尾平野の田園風景をモチーフにした緑色の陶板レリーフが用いられるなど、随所にあま市らしさも感じられます。