常滑市役所
議場

移転建て替えオープンした、災害に強く市民に優しい常滑市の新庁舎

愛知県常滑市の新庁舎は、1969年に建設された旧庁舎が老築化していたこと、津波のおそれのある海辺にあったことから、高台に位置する市民病院のある敷地へ、2022年1月に移転新築しました。災害対策拠点の充実と市民サービス向上を目指しています。市民の誰もが利用しやすいよう、車イスやベビーカーでも通りやすい通路幅やスロープ、多機能トイレ、白杖を検知する自動音声案内システムなど、ユニバーサルデザインも導入しています。
新庁舎は、新しい住宅地の中心に位置するため、周辺の住宅環境と病院の療養環境を守れるよう3階建ての低層庁舎です。防災関連部門や市長室など庁舎を司る部屋と同じ3階に議場を設け、有事の際に災害対策本部として機能しやすいフロア構成としました。議場は、皆が車座になって市の未来を議論する形を目指して円形議場とし、傍聴席も車座を囲むように設定。市民も一体になれる空間です。その円形議場の形を屋上に表し、昔、常滑で焼かれた旧帝国ホテルのスクラッチタイルを議場の内外装に用いて、タイルのまちの庁舎のシンボルとしています。

全ての議場家具は、キャスターで移動が可能

議場の形は、互いの顔が見やすい円形配置です。コトブキシーティングは、この議場に並ぶ全ての机と演台を納入しました。災害・緊急時には防災拠点として机イスが自由に配置転換できる必要があったこと、議会運営に支障がない範囲での議場の多目的な利用が想定されたことから、キャスターが付いた移動式が選ばれました。イスと合わせて議場隣の倉庫と委員会室へ収納すれば、議場空間を広い平土間として使用することができます。
演台・机の素材にはナチュラルカラーで仕上げた天然木を用い、意匠の統一を図りました。ペーパーレスも進む時代の波に合わせて、議会の途中でもパソコンやスマートフォンなどの電子機器が充電できるよう、コンセントも備わっています。キャスターは、議場にふさわしい品格ある美しい装いを保つため、露出しないよう設置されています。
中央の議長席と左右の事務局長席の3席分が繋がった机は、議場の円形配置に合わせて縁が弧を描いた特注品です。議員席よりも席の位置が高くなるよう段がついており、段の側面にある蓋を開けば、隠されていたキャスターが姿を現します。このロックを外せば、机を段ごと移動させることができます。
議員用机は1席1席が独立した一人掛です。通常時は机のキャスターが収納されており、天板の下にある昇降レバーを下ろすと机本体がリフトアップし、下部に現れたキャスターで自由に動かすことが可能になります。昇降レバーの上には左右に動く角度可変レバーも備わっており、レイアウトに応じて、両サイドの側パネルの角度を0度・5度・10度・15度に変更して机を並べることもできます。
演台にもキャスターが備わっており、移動時はロックを外します。天板下に電動昇降レバーがあり、200mmの範囲内で発言者の体格に合わせた高さに設定できます。車イスに座ったままでも利用できる、バリアフリー仕様です。
傍聴席エリアは、議長席・事務局長席に向かい合うよう設けられました。腰壁で区切られエリアは明確ですが、床の高さは議員席とほぼ等しく、空間全体に一体感をもたらします。

施設概要

愛知県常滑市の新庁舎は、耐震強度不足など様々な課題を抱えていた旧庁舎から移転建て替えを行い、2022年1月、市民病院のある敷地内に開館しました。
既存の病院玄関が、敷地入口からロータリーで1層上がったレベルにあり、庁舎の2階をそのレベルに合わせ、病院玄関やバス停、立体駐車場2階市民用駐車場を連絡通路で結び、バリアフリーに配慮・フラットに行き来できるようにして、庁舎2階に全ての市民窓口を集約しました。旧庁舎に点在していた市民窓口は明るい回廊状に設け、その中に執務室をまとめることで、市民に分かりやすく案内しやすい窓口を目指しています。1階には休日・時間外も市民が利用できるこども図書室やギャラリー、会議室を設置。市民の誰もが利用しやすいように、車イスやベビーカーでも通りやすい広い通路やスロープ、4言語の多言語音声案内装置など多機能で誰でも利用しやすいトイレ、白杖を検知する自動音声案内システムなど、ユニバーサルデザインにも配慮した、人とまちに寄り添う優しい施設です。
円形議場の外壁をはじめとした各所には、「やきものの町・常滑」にふさわしく、焼き物を使った装飾を施しました。3階に位置する議場では、議長席の後ろの壁にも常滑のタイルが使用されています。常滑焼で生産量日本一を誇る招き猫も、議場内に置かれています。