帝国劇場(リニューアル)

2018.11.19
劇場・コンサートホール

施設説明

日本初の西洋式演劇劇場として誕生した帝国劇場

「帝劇」の通称で知られる帝国劇場の誕生は、1911年3月に遡ります。日本初の西洋式演劇劇場として、開館以来、オペラやミュージカル、歌舞伎など、さまざまな舞台芸術が上演され幅広い年代の観客に親しまれてきました。

過去には、関東大震災などを機に2度建て替えが行われており、現在の建物は1966年に竣工しました。豪華な客席の天井に映える紫色のイス、ロビーの「これぞ劇場」という1階と2階を繋ぐ大階段や星座の並びをなぞった天井照明など、風格と気品を感じる施設です。

竣工から約半世紀が経過した2018年、ホスピタリティを高めるべく、大規模なリニューアルの実施が決定。場内のトイレやカーペットなどの更新に加え、客席が一新されました。

半世紀の歴史を継承した客席のリニューアル

客席のリニューアルにおいて最も大切なテーマとなったのは、これまで帝国劇場が培ってきた空間の印象を継承すること。帝国劇場を象徴する気品のある紫色や収容人数は、リニューアル後の客席にも引き継がれています。

客席は1階席と2階席で構成されており、オーケストラピットを使用しない時の最大席数は1,826席。1階席には約1,200席と多くのイスが並んでいますが、扇形に配置しているため、最後列からも舞台との距離を近く感じることができます。1席ずつのゆとりを持ちながらも、空間全体がコンパクトに集約されており、舞台の見やすさと客席全体の一体感へのこだわりが詰まっています。

「帝国劇場らしさ」を追求した細やかなポイント

劇場のイスの背や肘当の素材には木が採用されるケースが一般的ですが、帝国劇場のイスは、背もたれから脚部・肘当の先端までテキスタイルで張り包んだ仕様です。従来のイスを踏襲したこのデザインは、欧州の劇場ではメジャーなスタイル。張り包まれた背もたれはしっかりとした厚みを携えており、客席全体の高級感を高めているポイントの一つです。

テキスタイルは、既存イスと同じ素材の手配はできなかったものの、客席のイメージが変わらないよう、色の再現を試みました。これまでと同じモケット調のテキスタイルを用い、座った時の肌触りも受け継いでいます。

今回のリニューアルでは、真鍮製のナンバープレートの文字色にも、張地の紫色を用いました。席番号を記した文字は、ロビーや扉に使用されているフォントに倣って、西洋劇場らしさの観点から選び抜きました。既存のフォントよりも視認性を向上しつつ、内装との調和を図っています。

足元用のライトは、これまでは器具がむき出しになっていましたが、イスの肘枠に埋め込む形に変更。足元の光源によって観劇中に気が散ることがないよう、開口幅も細かに検証・微調整したリニューアルです。通路だけを照らせるようになり、見栄えが良くなりました。イスの肘掛後部には、傘立て用の輪も設けました。この輪に雨傘を通し立てることによって、客席でスマートに収納ができます。

帝国劇場は、日本を代表する劇場の一つとして、これからも多くの作品を上演し、観客を魅了していくことでしょう。

居室データ

所在地
100-0005 東京都千代田区丸の内3-1-1 地図
施主
東宝株式会社
リニューアル
2018年7月
席数
1,826
※オーケストラピット部分を除く
関連リンク
帝国劇場 WEBサイト
テキスタイルデザイン:帝国劇場  | 株式会社FABRIKO WEBサイト

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