サントリーホール
大ホール(2017年リニューアル)

2018.05.24
劇場・コンサートホール

施設説明

「世界一美しい響き」を目指し、1986年に誕生したサントリーホール

サントリーホールのはじまりは、1986年に遡ります。「世界一美しい響き」を基本コンセプトに掲げ、国内外の指揮者や演奏家、音楽を愛する各界の人々の意見を幅広く取り入れて設計され、日本を代表するクラシック・コンサートホールとして、大きな注目を浴びながら誕生しました。

ホールは、当時国内初となった「ヴィンヤード形式」。客席がぶどうのだんだん畑状に連なりステージを取り囲むこの形式は、直方体の箱型をした「シューボックス形式」よりも客席とステージの距離が近く、音響的にも視覚的にも演奏者と観客とが一体感を抱けるスタイルを実現しています。その美しい響きは世界中の音楽家に広く愛され、開館以来、日本のクラシック音楽界を牽引し続けています。

30周年を節目に行われた大改修、コンセプトは「伝統の継承と革新」

2016年に迎えた開館30周年を機に、サントリーホールでは3度目となる、大規模なリニューアル工事が決定。開館時に掲げた「世界一美しい響き」を保つために定められたコンセプトは、「伝統の継承と革新」です。そしてコンセプトに沿って立てられた三つのテーマ「伝統の継承 ― 響と意匠」「ダイバーシティデザイン ―すべてのお客様のために」「設備のさらなる充実 ― 次世代音楽空間創造へ」に基づいて、客席・舞台・照明やエントランスなど、全館に渡った改修が施されました。

2,006席の客席が直面したテーマは「伝統の継承 ― 響と意匠」です。竣工時と変わらぬ素材と見た目を維持しながら、繊細なリニューアルが求められました。

開館時から変わらぬイスを、音響に配慮しながらリニューアル

客席のイスで最も目を惹く印象的な特徴は、ヴィンヤード形式にちなんだ、ワインレッドのぶどう柄のオリジナルデザインです。固定席だけでなく、演奏者用のオーケストラチェアと同タイプの補助席にも、同じ張地が使われており、サントリーホールをイメージ付ける大切な要素のひとつです。リニューアルに際して、この張地も新しく製作し直し、張り替えが行われました。

イスの背・肘・脚に使用されている木は、太く、重厚で、しなやか。また、席と席を仕切る滑らかなカーブの中間肘にも、天然木がたっぷりと使われています。肘掛の下に入った1本のラインや浅く柔らかな切り欠きなど細かな意匠が、1席1席から放たれる存在感の源です。

今回は、これらのひとつひとつのパーツの細かな傷を補修し、再塗装して磨き上げました。真っ直ぐに伸びた背もたれに張ったクッションも、中のウレタンが入れ替えられたことで、オープン当時と変わらないボリュームが復活しました。着席者の背に沿う豊かな膨らみが、張り替えられたテキスタイルと調和し、新品のイスに入れ替えたかのような輝きを見せています。

イスに少しの変化が生じれば、吸音や反響の度合いが変わり、ホール全体の音の響きに大きな影響を与える可能性があるため、細心の注意が払われた客席のリニューアル。変わらぬ「世界一美しい響き」が、今日もホール全体に響き渡っています。

撮影協力:サントリーホール、NHK交響楽団

居室データ

所在地
107-8403 東京都港区赤坂1-13-1 地図
施主
サントリーホールディングス株式会社
設計
株式会社安井建築設計事務所
リニューアル
2017年9月
席数
2,006
関連リンク
  • サントリーホール webサイト