岡山大学 鹿田キャンパス 医学部 鹿田会館(旧生化学棟)
講堂

2022.09.12
講堂・多目的ホール

施設説明

歴史と伝統を継承しながらアップグレード

 岡山大学医学部の鹿田会館は1932年に竣工して以来、大切に使われ続けてきた歴史的建造物です。老朽化にともない耐震化などの必要性から改修工事が行われ、2階にある講堂の座席が一新されました。岡山大学では伝統的な建築物を整備して保存する一方で、アップグレードを加えながらその有効活用も推進しています。
講堂には、159席の座席が緩やかな弧を描いて10列に設置されました。どの席からも前方への視線が通りやすい、座席が黒板を囲む配置になっており、歴史が詰まった黒板は従来のまま生かされています。また、空調機器で塞がれていた上方のバルコニーを復活させ、その中央には1列に14席、両側袖に1人掛けのイスが3席ずつ雁行状に配置されました。吹き抜けになった天井には岡山大学の学章を模したLED照明が取り付けられ、講堂のシンボルとして室内を明るく照らしています。

新しい学修スタイル

これまで鹿田会館の講堂では、建物の竣工時に設置された講義机イスが使用されてきました。使い込まれた天然木の机天板やイスの背・座板、鋳物の脚によるクラシカルで風格のある机イスでしたが、講堂の改修を機に家具タイプを変更。複数席が連結された床固定式の講義机イスに代わり、聴講や筆記だけではなく対話型のコミュニケーションにも重きを置いた、肘にメモ台が付いたホール用の固定イスが選ばれました。選定にあたり、コトブキシーティング本社にあるショールームでさまざまなイスを体感されたうえで採用されたモデルです。
回転収納式のメモ台はイスの右側脚に付いており、メモ台を出し入れする動きはとてもスムーズです。使う時は回転させながら引き上げ、収納する時は定位置まで上げると自動で元の位置に戻ります。緊急時でもメモ台が避難を妨げる心配がない、安全性に配慮した収納機構が搭載されています。
イスの背もたれには身体が馴染む豊かなクッションが付いており、座は機能性と意匠性が融合したタイプ(座:スペーシア)が採用されました。この座は先端に向かってシェイプされた形状が特長で、厚みのある座に比べ足周りの自由度が高くなっています。足を前後に動かせる範囲が広がり、「立ち上がりやすさ」に加え、長時間座り続けることで起こりやすい血流速度の低下を改善するという効果が得られます。これは医学的な研究により実証されたこの座の長所で、より一層快適な座席環境を実現しました。

岡山大学医学部のランドマーク

オリジナルの照明が輝く講堂内は明るい木質を基調にしており、真っ白なバルコニーとそれを支える2本の柱が、パープルワインのイス張地とともに空間のアクセントになっています。この空間でイスは、美しい背板のカーブ、クッションの曲面、脚部の曲線が融合し、優美な雰囲気を生むとともに、イスの木部は深みのあるダークブラウン塗装で丁寧に仕上げられており、天然木の風合いが講堂にふさわしい落ち着きと風格を醸し出しています。
鹿田会館講堂の改修は学内外の多くの方の支援により実施されました。イスの背面には寄贈者の名前が刻まれた銘板が取り付けられており、趣のあるシンチュウ色の銘板にゆっくりと目を通すのもまた、この講堂ならではの味わいです。
講堂は歴史と伝統に最新の設備が加わり、永年の愛着を残したまま新しい学びで未来をひらく最新の施設になりました。学会や講演会をはじめとした医学部関係者の利用ばかりではなく、地域の方々を含めた幅広い人びとに、情報発信の拠点として広く活用されることが期待されています。

施設概要

鹿田会館のある岡山大学医学部はJR岡山駅が最寄りの鹿田キャンパスにあります。周辺は岡山県のなかでも県庁や市役所などの行政機関や大きな商業施設のある政治や経済の中心地です。鹿田会館は生化学教室として使用されていた木造建物(旧生化学棟)が火事で消失したことにより1932年にコンクリート造で再建された建物で、日本の医学・医療の発展とともに長い歴史を刻んできた重要な場所です。1830年(明治3年)に創立された岡山藩医学館にはじまる医学部では2014年から創立150周年記念事業が開始され、その一環として鹿田会館(旧生化学棟)・講堂の改修も行われました。鹿田会館は3階建てで、講堂のほかにコミュニケーション・スペースや、ゲストルーム、ラウンジ、ラボなどが整備されており、さまざまな交流により新しい学びやイノベーションが生まれる集いの場として親しまれています。

居室データ

所在地
700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2丁目5−1 地図
施主
国立大学法人 岡山大学
設計
株式会社 小笠原設計(改修設計)
竣工
2020年3月
席数
179
関連リンク
岡山大学 医学部 Webサイト

一覧へ