紀伊國屋ホール

2022.07.27
劇場・コンサートホール

施設説明

紀伊國屋ホールの歴史を大切にしたリニューアルプロジェクト

紀伊國屋ホールがある紀伊國屋書店新宿本店ビルディングでは、2019年から耐震補強工事がスタートしました。その一環として、ホールの客席・床、ホワイエの壁・天井も全面的に刷新され、2021年6月、ホールはリニューアルオープンを果たしました。
コトブキシーティングが客席のリニューアルにおいて大切にしたのは、半世紀を超える年月の中で培われたホールの印象を継承すること。竣工時に設計した前川國男氏のデザインを踏襲しながら、現代人の体格にあった機能性を加えています。

パーツを再利用し創り上げた、機能性に富んだ新しい座席

イスの背を構成するのは、人間の背中に沿ったカーブを描く三次元曲面のクッションです。ゆったりとした座り心地を楽しめる背もたれは、高さを3種類に分け、客席の勾配に合わせて配置をしました。特にステージ前の席は、客席と舞台の一体感を壊さないよう、ステージよりも低く慎重に設計されました。
観客が着席時や通行時に背もたれに手を掛けるため、リニューアル前のイスでは張地の汚れや劣化が目立っていましたが、今回は木部でクッションを縁取ることによって張地を保護。美しさの長持ちを目指します。木がしっかりと見えるデザインは、ボルドーを基調にした張地と調和し、イスに高級感と品格をも与えています。
肘掛けと脚部は、既存イスの部品を美しく磨き上げ再塗装しました。着席者の肘から手のひらに寄り添うカーブの形状も、これまで通り。紀伊國屋ホールで楽しんだ観劇の思い出や興奮を、触覚から呼び覚まします。
座の形状は、着席者の膝裏にあたる先端部分を薄くした「スペーシア」です。通常の座の形状に比べ足元にゆとりが生まれるこの形は、コトブキシーティングのショールームに来場した劇場スタッフから評価を得て、採用に至りました。着席したまま脚を引きやすく立ち座りをスムーズに行えるだけでなく、着席したまま座席の下へ足を引けば、通路を行く他の観客を通すことも容易です。

向上したのは、座り心地と見やすさ、そして客席数

リニューアル前の客席中央ブロックには、イスが縦1列に真っ直ぐに並んでおり、観客は前に座る人の頭越しに舞台を見なければなりませんでした。改修にあたっては、見やすさの向上を目指し、1列ごとに座席を半席分ずらした千鳥配置を採用。前の人の肩越しに舞台を楽しむことができるようになりました。また、背もたれの角度をやや立たせた設計に変更し、観劇への集中度を高める座り心地を提供しています。
「スペーシア」を含めたこれらの微妙な設計の変化は、快適な座席の進化に一役買いながらも、1席あたりの前後ピッチをコンパクトにしました。結果として、客席前方ブロックに余裕を生み出し、新たに1列分の座席の追加を実現。座り心地の満足度と観劇時の見やすさを高めながら、リニューアル前より9席多い427席へと、客席のキャパシティを増やしました。

施設概要

紀伊國屋ホールは、紀伊國屋書店新宿本店ビルディングが竣工した1964年に、4階フロアで開館しました。以来、文学座・劇団民藝・劇団俳優座・劇団青年座・こまつ座など、日本を代表する劇団が公演を行い、開館から60年以上が経った今でも、若手劇団の登竜門としても名を馳せる劇場です。

居室データ

所在地
160-0022 東京都新宿区新宿3-17-7 紀伊國屋書店新宿本店4F 地図
施主
株式会社紀伊國屋書店
設計
株式会社前川建築設計事務所
席数
427
竣工
1964年3月
リニューアルオープン
2021年5月
関連リンク
紀伊國屋ホール Webサイト

一覧へ