津山市のシンボル「津山文化センター」がリニューアルオープン
地上から45mに及ぶ立派な石垣が当時の面影を残す津山城跡地に建つ津山文化センターは、市民のコミュニケーション・憩いの場である「現代の城」として、1966年にオープンしました。『さくらの名所百選』にも選ばれた西日本有数の桜の名所としても知られ、津山市のシンボル的存在のホールです。
2020年4月、ホールの長寿命化のための耐震補強やバリアフリー化を図る大規模改修を実施し、リニューアルオープンしました。
客席のイスも、改修前の印象を踏襲しながら「津山市らしさ」を感じられる、新たなイスに生まれ変わりました。
「津山城をイメージしたデザイン」の新たな客席イス
客席のリニューアルにあたっては、永い間、津山市民に親しまれてきたホールの印象を継承することも含めた、三つのポイントを掲げました。
一つ目は、リニューアルコンセプトにもなった「津山城をイメージしたデザイン」であること。そのポイントは市の花「桜」で、コトブキシーティングのテキスタイルデザインを手掛ける
株式会社FABRIKOにより、イス張地の柄に取り入れられました。緻密で大柄の模様を表現できるジャガード織りを採用し、津山市のロゴにも使われている「桜」をモチーフに、水面に揺らぐ花筏を表現しています。見る角度によって花びらが煌き見え隠れして、桜の華やかさを感じられるデザインです。
二つ目は、改修前のホールの「イメージを受け継ぐこと」です。木部・張地のすべてが赤色で統一されていた改修前のイスは赤い色の印象が強く、リニューアル後もその印象を踏襲しました。新たなイスでは、最も面積の広い張地に赤色を取り入れ、背や肘の木部をダークブラウンにすることによって、改修前の華やかな印象に木の温かみが加わり、上品な印象に仕上がっています。
そして三つ目が、時代を経て変化した市民の体格に合わせた「座り心地の向上」です。竣工当時の既存のイスは、サイズや形状が現在の標準よりもコンパクトなデザインだったため、改良が求められました。新たなイスは、座り心地と機能性を兼ね備えた
TS-19シリーズ。一人分の間口寸法や座面・肘掛け・背の高さを現在の標準寸法に設定したことで、長時間の鑑賞時も疲れにくく快適な環境になりました。
座は、真横から見た時に三角形の形状をしている「
スペーシア」です。着席者の膝裏にあたる部分が薄いため、着席している時の足元のスペースに余裕を生みだすとともに、足を引きこむことで立ち上がりやすさにも配慮しています。また、肘掛けは、山のような傾斜をつけることで隣の人と同時に使えるようなデザインにして機能性を高めました。
その他にも、1階席の中央ブロックの千鳥配置への変更や、車イス席や親子席の増設などにより、バリアフリーを取り入れた客席全体のグレードアップを図りました。
伝統を継承しつつ新しく生まれ変わった津山文化センター。これからも津山市のシンボルとして市民に親しまれていくことが期待されています。
施設概要
1965年に竣工された津山文化センターは、川島甲士氏による設計のモダニズム建築です。古来の社寺建築にみられる三層を支える斗栱(ときょう)構造が特徴の建築は、第8回BCS賞受賞、また「DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築の2005年度選定建築物」にも指定されました。
2018年からは、老朽化した部材や設備の更新・バリアフリー化・環境負荷を低減するための設備の改良など、意匠を継承しつつ、建物の構造的な寿命を延ばすとともに機能を高める「長寿命化改修」を実施。1年間の工事を経て、2020年4月にリニューアルオープンを果たしました。