インタラクティブな学習スタイルの促進は、空間づくりから! レクチャーシアターが生む自然な双方向コミュニケーション

2019.04.20
事例特集

アクティブラーニングをはじめとした、双方向のコミュニケーションが基本となるインタラクティブな学習方法は、近年、学校教育現場で存在感を高めています。しかし、盛んに提唱されている一方、これまで教室・講義室で主流とされた、生徒・学生の席が教壇に正対する配置は生徒同士が顔を合わせることが難しく、従来の環境のままで、学習スタイルをインタラクティブな形に変えていくことは容易ではありません。いま求められているのは、インタラクティブなコミュニケーションを自然と促すような学びの空間。そこで注目されているスタイルが「レクチャーシアター」です。レクチャーシアターは、教壇を席で囲んだり、席を階段状に配置したりして、教壇から、また学生同士も互いの顔を見やすくし、双方向コミュニケーションが自然と生まれるような学びの空間です。新しい時代の学習方法に対応するため、全国の学校で既に多くのレクチャーシアターづくりが始まっています。今回は、中学校・高校・大学で新しく誕生したレクチャーシアターをご紹介します。

01プレゼンテーションの機会が多いからこそ、より発表しやすい客席に

高槻中学校・高槻高等学校
コナコピアホール

高槻中学校・高槻高等学校 コナコピアホール
高槻中学校・高槻高等学校 コナコピアホール
高槻中学校・高槻高等学校 コナコピアホール
高槻中学校・高槻高等学校 コナコピアホール
高槻中学校・高槻高等学校 コナコピアホール

高槻中学校・高槻高等学校では、生徒がプレゼンテーションする機会を積極的に設けています。中学校では英語スピーチコンテストや文化祭等での学習発表、高校では個人や班での課題研究の成果発表など、日常の学習のなかで「大勢の前で発表する」ことを多く取り入れた学習スタイルを展開しています。そのような発表の場を担う空間として、2018年7月、コナコピアホール(講堂)が竣工しました。講堂のほかにも校舎の整備を進めており、その改築コンセプトは「グローバルリーダーの育成〜志を育む空間〜」。スクールミッションに掲げた”Global Mindset”と、これからの社会で求められる力、その原動力となる志を育てる新しい学び舎として期待が集まっています。

講堂に冠された「豊饒の角」を意味する「コナコピア」は、米国のThanksgiving Dayに秋の収穫物でいっぱいに満たされる角の形を模した円錐形の容器の名としても使われています。このホールが生徒たちの学習成果でいっぱいに満たされるよう、願いを込めて名付けられました。プレゼンテーションでは、発表する生徒と聴く生徒との質疑応答も行われるため、よりインタラクティブなコミュニケーションの促進を狙って、居室の形を円形に、客席はステージを囲むように階段状に配置しました。弧を描いて席が並ぶことにより、発表者から客席最後部までが近く、どの席に座っても発表者を正面に捉えることができます。発表者からも聴講者からも互いの顔がよく見えるように、前後の席を半席ずつ横にずらした千鳥配置も採用しました。

イスは、脚が1本ずつ独立しているため、前後左右の席の振動が伝わることなく集中力を保てるPALLE・COMPOシリーズ。座席の前方4列は、同じデザインの可動式タイプです。教壇代わりとなるのは、台車移動式のステージ。必要に応じて収納するだけでなく、高さが5段階の調節式のため、イベントに応じた発表スペースを創り上げることができます。

 

02距離の近さとフラットな関係性を大切にした、インタラクティブな空間

慶應義塾高等学校 日吉協育棟
日吉協育ホール

慶應義塾高等学校 日吉協育棟 日吉協育ホール
慶應義塾高等学校 日吉協育棟 日吉協育ホール
慶應義塾高等学校 日吉協育棟 日吉協育ホール
慶應義塾高等学校 日吉協育棟 日吉協育ホール
慶應義塾高等学校 日吉協育棟 日吉協育ホール

慶應義塾高等学校は、開設70年を機に、伝統を守りつつ社会の変化に対応する、より進化した教育の実践を目指し、「正統と異端(イノベーション)の協育」の理念を掲げました。その理念を実践し具現化する施設として、2018年8月に竣工したのが、日吉協育棟です。木々が生い茂る日吉の森を臨める、蝮谷と呼ばれる地形の上部に佇んでいます。12万冊の蔵書を誇る図書室を中心として設けられたのは、ラウンジ、アーカイブスペース、ホールなどの機能の異なる様々な居室。これらの居室が複合的に重なり合い、相乗効果を生み出していくことが意図されています。

4階の日吉協育ホールは、ステージを囲むように弧を描いて客席を配置。後列に従って高さが出るよう階段状に連なっており、どの席からでもステージ上の登壇者が見やすく、登壇者からも生徒一人一人の顔がしっかりと見えるつくりです。互いの顔がよく見えるこの空間では、登壇者と生徒、または生徒同士のコミュニケーションや交流が自然に促されます。登壇者と着席者との距離を心情的にも物理的にも近く設定し、フラットな関係性を築くことを目的に、客席の1段目はステージと同じ高さに設定しました。

空間の設計はもちろん、イスにもこだわりが詰まっています。講演中の座り疲れで集中力が妨げられることがないよう、市民会館やホールなどで使われる劇場イスタイプを選定。座には、ウレタンフォームに適度なクッション性を均等に分散するスプリングを内蔵しており、長時間の着座でもストレスなく座れます。脚部には、座面より上の高さに欠きこみをつくり、座ったまま足を欠きこみ部分にスライドさせて、席の前を人が通りやすい便利なデザインに仕上げました。講演中にメモが取れるよう、収納式のメモ台も備えています。広いステージエリアにはスタッキングチェアを並べて、席数を多く確保することもできます。

 

03空間設計のコンセプトは「魅せられる講義」「臨場感のある演出」

東京工業大学 大岡山キャンパス
東工大レクチャーシアター(リニューアル)

東京工業大学 大岡山キャンパス 東工大レクチャーシアター(リニューアル)
東京工業大学 大岡山キャンパス 東工大レクチャーシアター(リニューアル)
東京工業大学 大岡山キャンパス 東工大レクチャーシアター(リニューアル)
東京工業大学 大岡山キャンパス 東工大レクチャーシアター(リニューアル)
東京工業大学 大岡山キャンパス 東工大レクチャーシアター(リニューアル)

東京工業大学は、科学技術の力でグローバル社会に寄与できる人材育成を掲げ、教育システムの抜本的な改革を2016年4月からスタートさせました。この教育改革を視野に入れて、2015年4月に先駆けとしてオープンした施設が東工大レクチャーシアターです。既存の教室を大幅に改修・整備し、完成させました。

空間設計のコンセプトは、「魅せられる講義」そして「臨場感のある演出」です。講師が講義・実験を行う演台スペースに、段差の無いフラットな床面を広く取り、多様なプレゼンテーションへの対応を企画。そしてどの席でもこの演台スペースの臨場感が味わえるよう、演台を取り囲むような、急勾配の階段状の客席を創り上げました。そしてイスは通常の教室・講義室よりもグレードアップを図ることにより、レクチャーシアターの名に相応しい、劇場風な学びの空間を生み出しています。

劇場のイスは、通常、パーソナルスペースを確保できるよう、隣り合う座と座の間には一定の間隔がありますが、東工大レクチャーシアターのイスは、ベンチのように座面が一続きになるよう座の横幅が広く設計されています。聴講人数が多いイベントの際には1席1席の境がない方が詰めて座ることができ、席数に余裕がある時には2席分を一人分のスペースとして使うなど、座席の調整の幅が広がります。イスの背もたれの裏側には収納式のテーブルがあり、筆記はもちろん、パソコンを置くにも便利です。さらに席数を増やしたい時のために、演台スペースに置けるメモ台付きのスタッキングチェアも導入しています。

 

※この記事は、過去に掲載した納入事例記事をテーマごとにご紹介しています。

講義机イス レクチャーシアター

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