釜石市民ホール TETTO
ホールA

2018.04.10
劇場・コンサートホール多目的ホール(可動席)

施設説明

東日本大地震で被災した市民ホールの再建

近代製鉄業発祥の地、岩手県釜石市。東日本大震災による津波の被害を大きく受たこの町のかつてのにぎわいを取り戻すべく、2012年より「かまいし未来のまちプロジェクト」が計画されました。

みんなが戻りたくなる、訪れたくなるような活力に満ちた復興を行うために進められたのが、災害復興公営住宅や学校の建設です。そして、プロジェクトの第6号事業として、被災した市民ホールの再建が実現しました。

新たな町の賑わいを生む「釜石市民ホールTETTO」の誕生

旧釜石市民文化会館は「釜石第九を歌う会」の第一回目の演奏によって、1978年、歴史をスタートさせました。以来、33年に渡り多くの市民に親しまれてきましたが、2011年3月11日、東日本大震災による津波の被害を受け、解体を余儀なくされました。

新たにつくられた釜石市民ホール TETTOは、市民の福祉の増進と文化の向上を図るため、にぎわい創出と文化芸術に関する活動を行う市民文化の総合支援拠点です。愛称はTETTO(テット)。釜石と鉄の深いつながりを表す「鉄都」と、イタリア語で「屋根」を意味する「tetto」から名付けられました。

ホールと同じ敷地内には、会議室や市民スタジオ、打合せや勉強にも使えるフリースペース等を設けた釜石情報交流センターがあり、市民が気軽に利用することができます。ホールと釜石情報交流センターとの間につくられた広場には、大きなガラス屋根がかけられました。隣接する大規模商業施設や商店街を利用する人の通り道としてだけでなく、日常の憩いの場として賑わいを生み出します。

多目的と本格的を両立する移動観覧席の導入

釜石市民ホールには、広さの異なる二つのホールAとBがあります。

劇場仕様のホールAに採用されたのは、シンプルなデザインながらも快適な座り心地をつくりだすための工夫が詰まったイスです。身体に合わせた3次元曲面の背もたれは、背中全体をしっかりと支えます。座は、座った時や座り続けた時の感触を考慮し、ウレタンフォームの硬度を調整。更に、体圧が分散されるように計算した特殊な形状のバネを内蔵し、長時間の着座でも快適性を保ちます。肘当ては誰もが使いやすい平らですっきりとした形状です。

また、どの席からもステージが見やすいことも、このホールの特徴です。座席の前後間隔は900ミリメートルとコンパクトな設定で、客席の半分以上に大きな勾配がついているため、後方の席からもステージが近く感じられる設計です。ステージに近い位置にありながらもイスが横向きに配置されることの多いバルコニー席は、身体をひねった姿勢での鑑賞を強いられがちですが、釜石市民ホールでは、個席にして着座時にステージを正面にとらえるように配置。鑑賞時も自然な姿勢を保ったまま見ることができます。

イスは、黒からグレーの6種類の張地で、ストライプ状に張り分けました。木を基調とした内装に、華やかながらも落ち着きが感じられるホール空間です。

実は、このホールの1階席部分は、可動式の仕様。劇場イスを搭載したタイプの移動観覧席やワゴン席で構成されています。そのため、本格的なホールでありながら、平土間でも使用することのできる空間が生まれました。

移動観覧席とワゴン席をホール前方へ収納すると、フラットなフロアが生まれます。その状態でホール後方のスライディングウォールを開けると、ホワイエとホールAが一続きになるのです。さらに、ホワイエとその奥のホールBを仕切るスライディングウォール、その奥の広場との間のスライディングウォールを開けると、ホールAからホワイエ、ホールB、広場までが一体となる広々とした空間が生まれます。客席状態でのコンサートから平土間でのイベントまで、地域の多様なイベントに役立つ多目的ホールを備えた釜石市民ホールです。

震災から6年9ヶ月が経った2017年12月、震災後も絶やさずに続けてきた「釜石の第九」が響き渡り、釜石市民ホールの新たな歴史が華々しくスタートしました。

居室データ

所在地
026-0024 岩手県釜石市大町1-1-9 地図
施主
釜石市
設計
aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所
オープン
2018年4月
※プレオープン 2017年12月
席数
838
関連リンク
  • 釜石市民ホール TETTO webサイト