「三商」の愛称で親しまれる東京都立第三商業高等学校は、1928年開校と古い歴史を持ち、東京下町の名門商業高校として名前を知られています。2014年1月、約1年半の工期を経て、新実習棟が竣工しました。1学年全員が集合できる居室として新たに設けられたのが、110席のイスが並ぶ視聴覚室です。
授業だけでなく、学校説明会や同窓会など、校外からの来客を案内する会場の役割も果たす視聴覚室には、一般的な教室家具よりも高級感のある、劇場仕様のイスが選ばれました。
教科書やプリント資料を置くためには机が必要でしたが、限られたスペースで1学年全員分の席数を確保するため、収納式のテーブルの導入が決定。必要な時だけ引き出して使えるため、固定式の机を置くよりも、教室の席数を多く確保することができます。また、テーブルを納める収納ボックスは設けず、テーブルをイスの背裏に直付けしました。これによって前の席との間隔も広くなり、通り抜けがしやすくなっています。
この居室で印象的なのは、1席ずつやや斜めになった、「雁行配置」と呼ばれるレイアウトです。当初、弧を描くよう曲線状の平行配置が検討されていましたが、端の席と壁側の通路幅が狭くなってしまうため、設計事務所を主体に再考。その結果、各席を斜めにずらして設置することで通路部分と壁側を平行にし、通路幅を保って最大限の席数を確保するという、雁行配置が採用となりました。機能性はもちろん、空間全体をすっきりと軽快な印象に仕上げています。