2017年9月、文化芸術活動とまちづくりの拠点を目指して、安来市総合文化ホール「アルテピア」が誕生しました。島根県安来市は、鳥取県米子市に面しており、これまで大型の演目がこの地域で上演される時には、1,120席の米子市公会堂選ばれるケースが多く、安来市民は県を跨いで鑑賞に出掛けていました。アルテピアの誕生によって、安来市での公演が増え、街の活性化にも大きく寄与すると期待が寄せられています。
大ホールは1,008席、小ホールは最大300席。規模の違うこの二つのホールに共通しているのは、建設に携わった市の担当者の「座るひとりひとりが快適に過ごせるように」という思いが具現化した、イスです。
大ホールのイスの座席の幅は530ミリ、席と席の前後の距離は約1メートルと、1席あたりの空間に大きなゆとりがあります。空間を詰めて席数を多く確保することではなく、鑑賞する時間の心地よさを最優先に設計しました。ゆとりと合わせて大切なポイントとして掲げられたのが、バリアフリー。立ったり座ったりする時に欠かせない「足を引く」動作をスムーズにするため、着席した時に膝裏にあたる座の先端部分を細く設定。また、1階席後方と2階席の通路側の席には、階段の昇降を手助けする「手掛け棒」も付けました。
小ホールの客席は、電動で収納・展開ができる移動観覧席と、スタッキングチェアが並んでいます。移動観覧席に搭載されたイスは、幅520ミリメートルと、ロールバックチェアースタンドの中でも最大級のゆとりがあるサイズ。ボリュームのある背と座のクッションと、人間工学に基づいて設計された三次元形状の背もたれが、座り心地のフィット感を高めています。「収納式の客席だからこそ、仮設イスのような印象は出したくない」という、スタッフの強い思いが体現されました。全ての席を収納すれば、フラットな平土間スペースが出現。選挙の開票場や市主催の婚活パーティーの会場など、オープン後から多彩なイベントが開催されています。
いずれのホールでもゆったりと演目を楽しめる、観る人に優しい文化ホールです。