受け継がれるスピリット スーパー歌舞伎II(セカンド)が新橋演舞場で誕生!(1)

2014.06.12
レポート

スーパー歌舞伎II『空ヲ刻ム者―若き仏師の物語―』の新橋演舞場レポート。歌舞伎を観ようと思い立っても、どの席を選べばいいかわからない、そんなことはありませんか? 劇場イス専門メーカーのスタッフが、席の選び方の参考になる情報を、写真と共にご紹介します。

三代目 市川猿之助が生み出したスーパー歌舞伎の精神を継承した、四代目 市川猿之助によるスーパー歌舞伎II(セカンド)『空ヲ刻ム者―若き仏師の物語―』が新橋演舞場で幕を開けました。

取材に伺った日は、開幕して初めての「1日2回公演」日。3月6日(木)の夜の部でした。

この作品の上演時間は、休憩も含めて約4時間半。昼の部と夜の部は、ほとんど間をおかないで上演されることになります。開場直前に劇場前に到着すると、昼の部の観劇を終えた方々、そして夜の部の入場を待つ方々で溢れていました。ツアーバスも並んでいて、とても賑やかです。

開場すると、ロビーはあっという間に混雑し始めました。特に、パンフレットを売る「筋書売場」は、ひっきりなしに人が押し寄せています。

この日は約1,400席が満員御礼の状態。スーパー歌舞伎II(セカンド)の記念すべき第1作目とあって、歌舞伎ファンの注目度も高い公演です。舞台のみならず、テレビやドラマで活躍する、佐々木蔵之介さん、浅野和之さん、福士誠治さんが歌舞伎俳優と共にキャストに名を連ねることも、大きな話題となっています。

従来のスーパー歌舞伎も、通常の古典歌舞伎に比べると客層が広がる特徴があるそうですが、今回のスーパー歌舞伎II(セカンド)では、女性の来場率も増加したそうです。

こちらは客席内の様子。歌舞伎を観ようと思い立っても、どの席を選べばいいかわからない、そんなことはありませんか? 実は、私もそうでした。そこで今回は、席の選び方の参考になる情報を、写真と共にご紹介します。

歌舞伎の劇場の客席は、舞台に向かってコの字型をとっています。

舞台の下手(左側)から、客席を貫くようにまっすぐ伸びている通路は「花道」。劇中で、俳優の登場や退場に使用されます。

この場内のつくりを把握しておけば、席選びの際に役に立つでしょう。

歌舞伎における良席は、「いろはにほへとちりぬるを…」と数えて「とちり」にあたる7〜9列目の中央ブロックと言われています。

舞台から遠すぎず、全体を見渡しやすい席です。 同じ理由で、2階席の最前列も人気があります。

「かぶりつき」と呼ばれる1階最前列は、舞台との距離が近いため、俳優の足元など一部見えない箇所があるものの、臨場感がたっぷり味わえる席です。

そして、新橋演舞場 宣伝部の方もオススメされていたのは、一般席よりやや高さのある、1階左右に位置する桟敷席。座席後方にある扉から入ると、掘りごたつ式の机と座布団が用意されています。お茶のサービスもあり、さぞお高い席なのだろうと思いがちですが、料金は1等席より1,000円程高いだけ!

舞台に向かって左側の桟敷席は花道に近く迫力が堪能できる席。右側の桟敷席は、花道で俳優が見得をしたとき、正面で見ることができる席。どちらも甲乙つけ難いですね。

スーパー歌舞伎II(セカンド) 『空ヲ刻ム者 ―若き仏師の物語―』四代目 市川猿之助演じる仏師・十和

物語の舞台は、いにしえの日本。 都から離れた山間の村・奥泉郷(おうせんごう)で暮らす、十和(とわ)という才能溢れる若き仏師と、その幼馴染の一馬(かずま)の2人が主人公です。

一馬は村の領主の息子でありがなら、農民と一緒に田畑を耕す心優しい少年。凶作に苦しむ百姓の暮らしを変えるため、政に関わりたいと、熱い理想を語っています。そしてある日、仏像彫りに真摯に取り組もうとしない十和に、「才能を無駄にするな」と言い残して、都に出発するのでした。

実はその頃十和は、貴族に依頼を受けて、生活のために仏像を彫ることに疑問を感じていました。そんな中、病に伏せっていた母が亡くなってしまいます。仏は母を救えなかったという苛立ちのあまり、貴族に依頼を受けて彫った仏像を壊してしまう十和。

これを知った役人は、罰として十和を慕う見習い仏師の腕を切り落としました。 激怒した十和は、役人を殺めてしまい、逃げるように村を飛び出します。仏教は誰も救うことはできない、仏とはもう縁を切ると決意して――。

スーパー歌舞伎II(セカンド) 『空ヲ刻ム者 ―若き仏師の物語―』佐々木蔵之介演じる一馬(左)/四代目 市川猿之助演じる仏師・十和(右)

台詞は全て現代語で進行するため、現代劇の感覚で物語を追うことができます。市川猿之助さんを始め、歌舞伎俳優の方々も勿論全員現代語で台詞を喋ります。しかし、それでも何故か「歌舞伎」になってしまう。これがスーパー歌舞伎IIの魅力であると、実感しました。

村を飛び出した十和と、都で政に関わるようになった一馬。ふたりの運命はどのように交錯していくのでしょう。音楽と共に進む物語、たたみ掛けるような展開、思わず拍手喝采の演出の数々。4時間半という長い上演時間でしたが、幕が下りる瞬間まで、熱い視線が舞台に寄せられていました。
歌舞伎を観たことがない方にも、是非観ていただきたい作品です!

この大作、スーパー歌舞伎II(セカンド) 『空ヲ刻ム者 ―若き仏師の物語―』の作・演出を務めたのは、現代劇の劇団「イキウメ」を旗揚げし、作・演出を手がける前川知大さん。読売演劇大賞最優秀演出家賞や紀伊國屋演劇賞も受賞した、今最も注目されている新進気鋭の劇作家であり演出家です。

今回、終演後のお忙しい中、スーパー歌舞伎に関わることになった経緯や、作品誕生までの貴重なお話を、インタビューさせていただきました!

演出家目線から見た、劇場イスについてもお話を伺っています。

レポーター:広報企画部 M.N

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