神奈川県民ホール
大ホール(リニューアル)

2018.12.18
劇場・コンサートホール

施設説明

1975年開館、横浜の街から芸術文化を発信する神奈川県民ホール

神奈川県民ホールは、1975年、全国屈指の大型文化施設として開館しました。約2,500人を収容できる大ホールと、日本の公立ホールで初めてパイプオルガンを設置した小ホール、広さの違う五つの展示室が並ぶ県内最大級のギャラリーを備えています。

各ホールで行われるイベントも、ヨーロッパのオペラ招聘公演からJポップスのライブコンサートまで、幅広い演目を開催。2011年には、主に演劇・ミュージカル・ダンス等の公演を行う、客席数最大1,200の「KAAT神奈川芸術劇場」が開館し、両館一体運営がスタートしました。

山下公園・横浜港・中華街など横浜の著名な観光スポットからも近く、神奈川県内の文化施設の中心として賑わっています。

バリアフリーの観点からリニューアルされた大ホールの客席

開館から40年以上が経った2017年7月から、神奈川県民ホールでは施設全体で大規模な改修工事がスタート。大ホールは、2018年6月にリニューアルオープンを果たしました。丁寧に時間をかけて進められた改修によって、ホールの心臓部とも言える舞台機構が一新、舞台床は全面張り直しが行われ、客席もバリアフリーというコンセプトを主軸に改善されました。

大ホールの客席は、全国の劇場・ホールの中でも最大級規模の2,433席。1階席は全部で32列のイスが並んでおり、来場者が自分の席を探して迷うことも少なくありませんでした。そこで参考にしたのが、映画館の客席です。映画館に倣い、通路の床のカーペットへ列番号を5列ごとに記載。これによって、座席の列位置が簡単に視認できるようになりました。

また、客席が暗くなると床と壁の境が分かりづらかったことを踏まえて、壁との境目にあたる床部分には白いラインを引きました。客席内の端を移動する時も、誤って壁にぶつかる不安が少なく、安心して席に辿り着くことができます。

2・3階席の階段昇降をサポートする「手掛け棒」

大ホールは、3層の客席で構成されています。どのフロアの最後列からも舞台との距離が近く見やすい特長を持つ一方、高層階は勾配が強いため、階段の上り下りの際には足元へ注意力を要します。壁側の通路には壁に手摺が設置されていますが、階段1段1段の差が大きいため、体格によっては手摺りにぶら下がるような形で足を踏み出す体勢になってしまうケースもあり、ホールスタッフも懸念を抱いていました。

そこで導入されたのが、客席の通路側のイス背もたれに設置する「手掛け棒」です。手掛け棒は、誰もが自然に手を掛けることができる、丸みを帯びた棒状の形をしており、傾斜が急な階段通路の昇降をサポートします。手摺の新設はスペースを取りますが、手掛け棒はイスに付けるため、通路を狭めることもありません。手を掛けることによって通行者は安心して足を踏み出すことができるため通行がスムーズになり、通路の混雑を解消することも期待できます。

神奈川県民ホールのスタッフは、手掛け棒が先行して設置されていたミューザ川崎シンフォニーホールを見学し、観客が自然に手掛け棒を使用していた姿を見て、採用を決定しました。

既存のイスの木部と色味を合わせ、新設された手掛け棒を、40年を経た客席へ自然に溶け込ませました。イス脚部の三角形のアキや、背板に張られたウレタンのクッション上部の緩やかな逆アーチなど、クラシカルな意匠にもぴったりとマッチしています。

築40年超ながらも、鑑賞環境のバリアフリー化へ向け一つずつ改善を重ねる老舗文化施設。これからも、神奈川の文化芸術の発展への更なる寄与が期待されています。

居室データ

所在地
231-0023 神奈川県横浜市中区山下町3-1 地図
施主
神奈川県
リニューアル
2018年6月
席数
2,433
開館
1975年1月
関連リンク
  • 神奈川県民ホール webサイト