熊本県立劇場
コンサートホール

2019.02.05
劇場・コンサートホール

施設説明

30年以上に渡って熊本県民に親しまれている劇場

JR熊本駅から5キロほど離れた場所、大学や小学校など多くの学校がある文教地区に、熊本県立劇場は建っています。

日本建築界の巨匠の一人である前川國男氏によって設計されたこの劇場は、二つの専用ホールをもつ大きな施設ですが、外壁の淡い紅色と低層なつくりによって、穏やかに周辺環境へ馴染んでいます。

劇場内部のいたるところに見られるのは、矢羽根模様のコンクリートの壁や柱です。コンクリート打ち放しの仕様は無機質な印象になりがちですが、コンクリートを固める型枠を杉の木の板でつくり、木目を斜めにした細長い板の向きを交互にし、表情をもたせています。この矢羽根模様は、ロビーなどの共用部のほか、両ホールの壁面にも施されています。

音の響きにこだわってつくられたコンサートホール

コンサートホールは、クラシック音楽の専用ホールです。音を最高の状態で聴衆に届けるために、空調などの音を発する機器を全て地下に収納して雑音を防ぐことを徹底し、2秒という長い残響時間も保持しています。ホールの内壁の角度も、デザイン性をもたせながら、音の反響を綿密に計算して設計されました。唯一無二のハーモニーを奏でるホールとして、オープンから36年が経った現在でも、一流の演奏家達から親しまれ続けています。

熊本県立劇場のためのオリジナルデザインのイス

客席のイスは、前川國男氏によるオリジナルデザインです。

背や肘当ての木部は、緻密な肌目で上品な風合いをもつカバ桜で製作されました。背板は、背のクッションを抱きかかえるような曲げ加工を施しており、木が着席する観客を包み込むようなデザインです。隣席との間の肘当ては、先端に向かって僅かに斜めに上げることで、腕や肘をかけた際の安定感をつくりだしています。さらに、指が触れる先端を下方向へ曲げて、当たりを和らげました。背板と肘当て、この二つの木の曲げ加工により、イス全体を柔らかい印象に創り上げています。

背と座のクッションを包んでいる張地も、オリジナルのデザインです。予め染め分けた糸を使用して織り上げる絣(かすり)という日本の伝統技法でつくられた、S字柄の縦縞模様。これは江戸時代の文様「吉原つなぎ」を参考にしたデザインで、イスの張地以外にも、エントランスの外からロビーやホワイエまで続く床タイルとして劇場内の随所に施され、施設全体の一体感を生み出しています。イスの一人分間口寸法は500ミリメートル。開館当時としては広いこの寸法からは、何十年間もの利用を見据えてつくられたことが伺えます。

プロの演奏家のコンサートのほかにも、地元の学校の学園祭や文化祭などでも使われることが多いコンサートホール。これからも、多くの人の心に響く素晴らしい音楽を届けていきます。

居室データ

所在地
862-0971 熊本県熊本市中央区大江2-7-1 地図
施主
熊本県
設計
株式会社前川國男建築設計事務所
オープン
1982年12月
席数
1,810
※車椅子席8席を含む
関連リンク
  • 熊本県立劇場 webサイト
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