とりぎん文化会館(鳥取県立県民文化会館)
梨花ホール

2022.12.21
劇場・コンサートホール

施設説明

梨花ホールの座席メンテナンス

とりぎん文化会館(鳥取県立県民文化会館)の「梨花ホール」は、文化の情報発信拠点として、県民がさまざまな芸術に触れられる重要な場所です。
開館から26年が経ち建物が老朽化したことから、天井の耐震化を主とした大規模改修工事が行われました。そのひとつとして「梨花ホール」の座席メンテナンスも実施。客席のイスは、永年の使用によりイス張地の汚れやクッションのへたり、肘掛けのガタつき、座面の傾きなど、快適性や安全性に影響するような変化が目立ちはじめていました。

既存品を生かす「オーバーホール」

梨花ホールで、既存のイスを愛用し続けるために採用したメンテナンス方法が、部品単位に分解し、細部の手入れを行う「オーバーホール」です。その内訳は、イス上張りの修繕とクリーニング、部分的な座面の新規交換とそれにともなう脚の新規製作、ねじ締結部の締め直し、座の回転動作を止めるストッパーゴムの交換、固定席から移動席への改造、手掛け棒の設置、バルコニー席の更新という8項目で、約4カ月かけて実施しました。
使用頻度の高い、ステージ前の9列の座は表面の張地の磨耗やクッションのヘタリが顕著に見られたため、新規にまるごと交換。新しい座に交換するにあたり、座を支える脚も交換する必要がありました。部品が時代とともに改良され形状が変わっているためです。
一方で、肘掛けと脚部側面の化粧パネルは既存の部品を生かしたり、既存のイスと同じ張地を適用したりすることで、意匠の統一性を保つことができました。また、全席のクリーニングをしたので、ペールピンクのイス張地はすっきりと美しくよみがえりました。
さらに、バリアフリー対応もこの改修のポイントのひとつです。固定席の一部を取り外し式にすることで、車イス利用にも対応できるスペースを増やしたほか、段差の大きな3階席のイスには安全な移動をサポートする手掛け棒を設置。新しい座には汚れに対応しやすいカバー式張地を取り入れるなど、時代に合わせた機能のアップグレードも行われました。
このようなメンテナンス方法で廃棄する部材を最小限にとどめたことは、コストを抑えたばかりではなく、地球環境にもやさしい対応です。SDGsを推進している鳥取県の理想に合致しており、サステナブルな施設の実現に寄与することになりました。

特別な場所の座席

2階と3階にはバルコニー席があります。ここは階下を見渡し、舞台を上から鑑賞でき、特別な視界を得られる場所です。他のエリアとはイスの意匠をがらりと変えた、全体をダークグリーンのモケット布地で張り包んだペアシートが導入されました。中間の肘掛けは跳ね上げ式で、状況に応じて使い分けができます。
イスの座は、着席した時に足まわりにゆとりが生まれるよう、座の先端がシェイプされたタイプ(座:スペーシア)にしたことで、足を動かす自由度が上がりました。舞台を見下ろす姿勢になるバルコニー席をより快適にしています。

一連のメンテナンスにより客席はエリアごとに適切なケアが施されました。木製の背板が描くカーブの連続性とおだやかな色調の布地が生む客席の表情が、建築の内装と相まって梨花ホールの個性となり、温かく来場者を迎えます。イスの快適性と機能性が高まったホールは、この先も年を経るごとに愛着が増し、県民の皆さまに大切に使われ続けることでしょう。

施設概要

梨花ホールは「とりぎん文化会館」の愛称で親しまれている鳥取県立県民文化会館の大ホールです。1階には固定席1294席(車椅子席10席)、2階に316席、さらに3階には380席が設置された、三層からなる豊かな座席構成。オーケストラをはじめ各種の音楽イベントが開催されるほか、演劇や伝統芸能など多様な文化・芸術に出会えます。とりぎん文化会館には梨花ホールの他に、 小ホール、フリースペース、会議室、リハーサル室、展示室、練習室のある充実した活動スペースが整っており、文化・教育施設や県庁などの行政機関が集まるエリアで、人々の交流の場として幅広く利用されています。

居室データ

所在地
680-0017 鳥取県鳥取市尚徳町101番地5 地図
施主
鳥取県
リニューアルオープン
2020年10月
竣工 1993年5月(開館 1993年10月)
席数
1,990
(車いす席10席を除く)
関連リンク
とりぎん文化会館(鳥取県立県民文化会館) Webサイト

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